エントリー作品紹介
ちょっとのコツでうまくいく! 躁うつの波と付き合いながら働く方法 松浦秀俊 著/高江洲義和 監修 秀和システム 2024年9月発売 |
書評
けけさま(MBA経営コンサルタント)
【書評】『ちょっとのコツでうまくいく! 躁うつの波と付き合いながら働く方法』(評者:けけ)
きょうさま(製薬会社 主任研究者)
【書評】『ちょっとのコツでうまくいく! 躁うつの波と付き合いながら働く方法』(評者:きょう)
加藤隆行さま(心理カウンセラー)
【書評】『ちょっとのコツでうまくいく! 躁うつの波と付き合いながら働く方法』(評者:加藤隆行)
著者 松浦秀俊さまよりメッセージを頂きました!
21歳でうつ病と診断され、その後27歳で双極症Ⅱ型と診断が変更されました。
遡れば、20年以上にわたり私は双極症と付き合って生きてきました。
この病気の波に翻弄される日々は決して容易なものではありませんでしたが、現職では13年間、休職することなく穏やかに働き続けることができています。
そこに至るまでに試行錯誤しながら見つけた「双極症との向き合い方」を一冊にまとめたのが本書です。
本書でお伝えする内容は、あくまで私個人の経験をもとにした一例です。
双極症の症状や向き合い方は人それぞれ異なるため、万人にとっての正解ではありません。
それでも、私がこの本を書くことを決意したのは、同じ病気や似た悩みを抱える誰かが、「こんなやり方があるのか」と歩みを進めるためのヒントを見つけてくれるかもしれないと考えたからです。
双極症を抱えながらも働くことは可能です。
本書が、読者の皆さまにとって「働きやすく、生きやすくなる」きっかけとなり、少しでもお役に立てれば嬉しく思います。
松浦秀俊
おすすめ理由を出版社さまに伺いました!
秀和システム 前川千亜理さま(編集本部 第2編集局)よりメッセージを頂きました。
ご協力ありがとうございました。
本書は、双極症(双極性障害)のある方を対象としているため、読み進めるにあたって、以下の点を工夫しました。
①各章冒頭に見開きでマンガを掲載
各章冒頭に双極症の症状や章の内容をわかりやすく説明する2ページのマンガを掲載しています。
「双極症」と「働く」というテーマにハードルが高いと感じる読者へ向けて、親しみやすさを持たせました。
②太字による重要ポイントの強調
本文中の重要なポイントには太字と横線を使用して強調しています。
すべてを精読しなくても、太字の箇所を拾い読みするだけで内容の概要を把握できます。
③著者の実体験に基づく序章
双極症の一般的な概説に入る序章では、双極症当事者である著者が症状に翻弄された「1日」または「1週間」の実体験を紹介しています。
双極症ではない方、特に家族や支援者などにもその現実が視覚的に伝わりやすいようにしました。
④読者参加型のワーク
第4章では、「自分のトリセツ」を作成するワークを取り入れ、現在の自分の状況を「見える化」し、それに応じた対処法を見つけられる内容にしました。
「双極症(双極性障害)の症状である躁うつによる気分の波に苦しみながらも、働きたいと願う方」に読んでほしいと考えています。
また、双極症のある方の家族や友人で、支えたいと思いながらも戸惑いや悩みを抱えている方、さらに医療職や支援者など、双極症のある方に関わる立場の方々にも役立つ内容となっています。
本書は、読者が自分なりの働き方や対処法を見つけることを目指し、以下の点を踏まえて制作されました。
- 工夫次第で、「躁うつの波をコントロールできる」ということを知ってもらう。
- 著者の実体験を通じて、双極症と向き合いながら働き続ける姿をロールモデルとして見ることができる。
- 双極症と付き合いながら「長く働き続けることができる」具体的な方法やヒントを得られる。
- 躁うつの波と付き合いながら働くための工夫やヒントを、随所に散りばめられた事例やアドバイスから学ぶ。
そして、双極症に限らず、持病と付き合いながら働く工夫としてもより幅広く参考にしていただける内容にしています。
本書のオリジナリティは、「双極症という病気と付き合いながらどのように働き続けることができるのか」という具体的な問いに焦点を当てている点だと思っています。
双極症とは、躁とうつなどの気分の波が長期間にわたって繰り返す病気のことです。
近年では、実業家のハヤカワ五味さんや、『はいよろこんで』で知られるこっちのけんとさんが双極症当事者であると公表するなど、双極症に関する知名度は徐々に高まりつつあります。
しかし、現在出版されている本の多くは、医師による解説や、当事者によるエピソードの紹介が中心で、「どうやって働き続けるか」という実践的な内容に踏み込んだ本はほとんどありません。
本書では、著者が今まで躁やうつに翻弄された経験を基に、躁うつの波に関する多角的で豊富な対処法を紹介しています。
また、対処法だけでなく、気分の波の前兆を察知し、早めに対応するための「自分だけの(双極症)取扱説明書」を作成するためのワークを提供し、読者自身が自分の特性を深く理解し、対処法を見つける手助けをしています。
さらに、当事者としての視点だけでなく、双極症を専門に研究されている医師が本書全体を監修しており、このような内容は、双極症に関する本の中でも類を見ないものだと考えています。
躁とうつなどの「気分の波」が長期間続くことで、支障が出るのは日常生活だけではありません。実は「働くこと」にも大きな影響を与え、さらに「働き続ける」ことにさらなる困難を感じている当事者は少なくありません。
そんな背景を踏まえ、本書では「双極症でも、自分らしく働き続けることはできる」というメッセージを届けたいと考えました。
本書の著者である松浦さんは、双極症Ⅱ型を抱える当事者でありながら、13年以上一度も休職や転職をせず一般就労で安定して働いています。
かつては何度も休職や転職を繰り返し、「もうふつうの会社で働くことはできないのではないか」と自信を失っていた松浦さん。
しかし、気分の波を受け入れ、自分なりの対処法を見つけたからこそ、現在は安定して働き続けることができています。
そのノウハウを一人でも多くの当事者に届けたいという強い思いから、この本を企画しました。
就労に悩む双極症の当事者にとって、この本は「働くことを諦めないためのバイブル」であり、「自分らしく生きる」ための勇気とヒントを得られる一冊です。
当事者、家族、支援者、そして社会全体に「双極症があっても働き続けられる未来」を示したい——そんな著者の想いを込めて、本書を制作しました。
メンタル本大賞®2025 選考観点
メンタルヘルスの啓蒙活動に対する協力姿勢については、医師監修のもと、双極症に関する正確で誤解のない情報を、わかりやすく伝えることを重視しました。
また、「しんどい・生きづらいと感じている方へのメッセージのあたたかさや優しさ」という点についても、本書には、日々の気分の波に翻弄され、「働き続けること」に困難を感じている双極症の方々の悩みに寄り添う、著者のリアリティのある描写と温かいメッセージが込められています。
しかし、双極症は、うつ病などに比べて認知度がまだまだ低いのが現状です。
本書がその現状を少しでも変え、多くの方々に双極症への理解と支援の輪を広げるきっかけとなればと願い、今回エントリーしました。
メンタルヘルスケアへの社会的関心は日ごとに高まっており、書店には多くの関連書籍が並んでおります。
しかし、今回初めて心の病を抱える当事者の方々を対象とした本に携わり、本人がより生きやすくなるための心の処方箋とその普及がより重要であると再認識いたしました。
今後も、「メンタル本大賞®」の益々の発展をお祈り申し上げます。
大変ご丁寧に作品紹介をしてくださり、心より感謝申し上げます。当事者である著者の松浦さまの経験談が多数ご紹介されている作品でご苦労が伝わってきました。一方で「双極症を抱えながらも働くことは可能」というメッセージとともに、ポジティブに未来へ向けての歩みを進める松浦さまの姿勢には読んでいて胸が熱くなりました。同じ病気で苦しんでいる方々に勇気を与えるべく、微力ではありますがこの作品を広めていきたいと思います。心のこもったメッセージをありがとうございました。