Xなどでメンタルケアや自分らしく生きる方法を心理学と生科学の視点から発信している きょうさま(製薬会社 主任研究者)より書評をお届けします。
書評
本書は、心を病んだ家族を支える人々が直面する「モヤモヤ」や不安に対処する方法が描かれています。
本書は大きく二部構成になっており、第一部では心を病んだ家族をケアする方法について詳しく解説しています。
具体的には、「うつになった」と告白された際の対応や、患者との接し方、生活リズムの管理、薬の服用についての注意点などが取り上げられています。
また、入院の判断や自殺念慮への対処法など、困難な状況に直面した際の具体的なアドバイスも含まれています。
第二部では、ケアを行う自分自身のメンタルケアについて焦点を当てています。
ここでは、支える側が抱える不安やストレスに対処するための心得や、周囲に事情を話しづらいと感じる時の対処法などが紹介されています。
特に、「受け入れられないものを変える勇気」と「変えられないものを受け入れる落ち着き」を持つことが重要であると強調されています。
著者は、自身の経験に基づき、精神疾患に関する具体的な問題解決策をQ&A形式で提示しており、読者が直面する可能性のある疑問や悩みに対して実践的なアドバイスを提供しています。
例えば、「家事はさせても大丈夫か?」や「優しくできない自分にどう向き合うか?」といった具体的な問いに対しても丁寧に答えています。
この本は、心を病んだ家族を支える人々だけでなく、その家族自身にも役立つ内容となっており、精神的なサポートが必要な状況でどのように行動すべきかを学ぶための貴重な1冊です。
精神疾患を抱える家族を支える役割は、多くの人にとって突然の挑戦となると考えています。
研究者としてメンタルヘルスにも関わる課題に携わる者の立場から、本書の内容に多くの共感と学びを得ました。
特に「支える人自身のメンタルケア」は、過酷な現場にいる支援者を守るためのヒントとして感銘を受けました。
なぜなら、薬物治療や技術開発だけではカバーしきれない、患者を支えるネットワーク全体の健全さが回復への鍵であると日々痛感するからです。
「変えられないものを受け入れる落ち着き」という考え方は、完璧を追求しがちな人々に対する強力なメッセージでもあります。
総じて、本書は精神疾患治療に関する理論と、日常の具体的な課題をつなぐ架け橋のような存在だと感じました。
支える者と支えられる者双方に向けた実践的かつ温かみのある指南書であり、ケアとは単なる行動以上に「関係」を整えることなのだと理解し、その奥深さを学びました。
評者プロフィール
きょう
静岡県出身。大学院を卒業後、新卒で外資系製薬会社に入社し研究職として勤務。幼少期の家庭事情から心の問題にも強い関心がある。現在は、会社員として創薬研究に携わりつつSNSを用いた情報発信に取り組み、心身の健康に貢献する活動もしている。Xでは「科学的根拠に基づいたメンタルケア」を主に発信中。
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