書店員キャリア20年。2023年に閉店した文信堂書店 長岡店では文芸書・ビジネス書を担当。小学館の小説ポータルサイト「小説丸」のコラムにも寄稿経験がある 實山美穂さま(元書店員) より書評をお届けします。
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自分という壁 自分の心に振り回されない29の方法 大愚元勝 著 アスコム 2023年3月発売 |

書評
著者名に、“愚”という字を持つ大愚元勝は、僧侶でありながら、事業家であり、作家、講演家、セラピスト、空手家(!?)でもあるという異色の経歴の持ち主です。
YouTubeのお悩み相談チャンネルなどで活動され、佛心宗を興した方でもあります。
著者名や経歴だけでも情報が盛りだくさんですが、本の内容にも触れてみることにします。
さて、仏教という宗教にどんなイメージがありますか?
普段の生活のなかで一番関わるのは身近な誰かが亡くなったとき?大晦日の除夜の鐘?親戚の集まるお盆?お釈迦様(ブッダ)の誕生日を祝う花祭り?
私がイメージしたのは、お寺とお坊さんと、子どもの頃にアニメで見ていた「一休さん」でした。
「朝早いんでしょう?」「修行とか大変そう」「お寺って寒そう」「お経覚えるの難しそう」と、直接の関わりがなければ敬遠しがちかもしれないですね。
でも、そういったテンプレートのイメージは表面的なものかもしれない、と思いました。
この本で仏教の考え方の一辺を知ると、私はそのシンプルさに驚きました。
著者は仏教を分かりやすく説明してくれます。
どういう風に考えれば、幸せに生きていけるのかを教えてくれました。
幸せのヒントは、自分たちの心の中にあるのだと、このタイトルが示しているのです。
驚きませんか?
仏教と「幸せ」って考えたことなかったかも、って。
私は、幸せになるってことに後ろめたさを感じていたのでしょうか。
だからこんなに驚いてしまったのかもしれません。
私がこの本で面白いなと思ったのは、相手がブッダであろうと、自分自身でさえ、疑ってかかれ、と明言されているところです。
自分自身の心の中を徹底的に見つめ、あらゆる角度から検証して、ベストだと思えるものを選び、信じていく。
それが本当を見極める力になるのだと…。
著者のことも、ブッダでさえも疑っていい、なんて言えてしまう著者に信用がおけますし、仏教に興味が湧きました。
著者のYouTubeチャンネルも見てみようと思います。
自分の「心の癖」が壁となり、自分を不幸せにさせている、と読んで驚いてください。
まずは壁を自覚し、その壁を乗りこえていくこと。
それが幸せに繋がるのですから。
評者プロフィール
實山美穂(じつやま・みほ)
大学で心理学などを専攻し、卒業後、文信堂書店に入社。文芸書・ビジネス書他担当。文芸書担当を機に本屋大賞エントリー店となり、新書担当を機に新書大賞の投票に参加し、興味の赴くまま御書印プロジェクトにも参加。基本、本を読んで猫と遊んでいれば満足。2023年4月10日をもって、文信堂書店長岡店がCoCoLo長岡より撤退。それにあわせて文信堂書店を退社し、今に至る。小説丸の、書店員さんのコラムに参加。
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