Xなどでメンタルケアや自分らしく生きる方法を心理学と生科学の視点から発信している きょうさま(製薬会社 主任研究者)より書評をお届けします。
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ココロの友だちにきいてみる 細川貂々 著 笠間書院 2023年10月発売 |
書評
本書は、特に「生きづらさ」を感じている人々に向けて書かれており、心の中のネガティブな声に対抗するための「心の友だち」を作る過程を描いています。
著者は自身の内面に存在する「ネガティブ思考クイーン」と呼ばれるキャラクターと向き合いながら、新たな心の友だちを作ることを決意します。
この友だちはポジティブな言葉をかけてくれる存在であり、彼女が心の中でつぶやくことで、少しずつ自分自身を癒していく様子が描かれています。
内容は、友だち日記を書くことを通じて、自分の感情や思考を整理し、心の平穏を保つ方法について具体的に説明しています。
目次には、「友だち日記の書きかた」「考えすぎることについて」「怒ることについて」「感情について」など、多岐にわたるテーマが含まれており、それぞれがどのように心の健康に寄与するかを探求しています。
本書は子どもから大人まで幅広い読者層に向けており、「生きづらいな……」と感じているすべての人々に寄り添う内容となっています。
著者自身が経験した苦悩や成長を通じて、読者もまた自分自身と向き合う勇気を得られます。
心の友だちとの対話を通じて、自分自身を理解し、より良い生き方を見つける手助けとなる一冊です。
「生きづらさ」を感じる心の中の闇に向き合い、癒しを求める過程を描いた本書は、精神的な健康への手引きとしてだけでなく、自己理解と成長のための道筋を示す作品だと感じました。
研究者という立場から、どのように心の健康にアプローチしているかを紐解く過程に多くの示唆を得られました。
著者が提案する「心の友だち」のコンセプトは、自分自身の内なる対話を建設的にするための一つの方法論です。
これは心理学や認知療法の技術とも共鳴する部分があり、例えば認知行動療法(CBT)の自己対話やスキーマ修正のような効果を感じさせます。
このアプローチが特に魅力的なのは、「友だち」という親しみやすい形で、読者が抽象的な心理概念ではなく具体的な方法として実践しやすい点です。
研究者として、心の健康はただ治療するだけではなく、その前段階でセルフケアや予防が重要だと考えています。
本書で描かれている「友だち日記をつける」ことは、日常的な感情の記録や認知の歪みを是正するためのツールとしても活用できると感じました。
これは、心理学的知見に基づいたセルフケア技術の一環と言えるでしょう。
さらに本書の魅力のひとつは、その普遍性にあります。
幅広い年齢層を対象にしている点で、「心の友だち」という概念が個々の読者にとって身近に感じられる構造を作っています。
特に精神疾患や生きづらさを感じている人にとって、「苦しみを理解し、それにどう対処するか」という実用的なアプローチは多くの安心感を与えるでしょう。
研究開発に携わる私自身も、この手法を自身のストレス管理に応用したいと感じました。
評者プロフィール
きょう
静岡県出身。大学院を卒業後、新卒で外資系製薬会社に入社し研究職として勤務。幼少期の家庭事情から心の問題にも強い関心がある。現在は、会社員として創薬研究に携わりつつSNSを用いた情報発信に取り組み、心身の健康に貢献する活動もしている。Xでは「科学的根拠に基づいたメンタルケア」を主に発信中。
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