Xなどでメンタルケアや自分らしく生きる方法を心理学と生科学の視点から発信している きょうさま(製薬会社 主任研究者)より書評をお届けします。
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自分を知る練習 土谷愛 著 青春出版社 2022年12月発売 |

書評
本書は自己分析が苦手な人でもスムーズに進められるよう、厳選されたワークが紹介されています。
主に4つのステップで構成され、自分自身を深く知る方法を提供しています。
自分の「メガネ」を磨くことを通じて、自己認識を高め、自分の価値観や強みを理解することの重要性を説いていると同時に、これらの理解から個々の強みを活かせる居場所を見つける流れが展開されます。
自分を知る
自己分析を通じて、自らの価値観や強みを明確にする。
思い込みを見つける
自分の考えや行動を見つめ直し、これまでの自分を再評価する。
強みを活かす
見つけた強みをどのように活かし、生活や仕事に生かしていくのかを考える。
居場所を見つける
自分に合った環境や人間関係を築くためのアイデアを探る。
本書では、実践的なワークが数多く取り入れられており、読者は自ら書き込みながら進めることができます。
これにより、自己理解がより深まり、自信を持って自分を表現する力が養われるとされています。
総じて、『自分を知る練習』は、自分自身を理解し、人生をより良い方向へと導くための具体的な手法を提供する一冊です。
研究者としての視点から『自分を知る練習』を読むと、自己分析のプロセスが科学的思考にも通じる重要なスキルであることを再認識させられました。
本書は、単なる自己啓発書にとどまらず、研究者のキャリアや日常の意思決定にも役立つ実践的な方法論を提供しています。
製薬研究は、科学的探究とチームワークの両方が求められる分野であり、自らの強みや価値観を明確にすることは、長期的なキャリア形成において不可欠だと考えています。
本書が提案する「自分を知る」「思い込みを見つける」「強みを活かす」「居場所を見つける」という4つのステップは、研究者が自身の能力を最大限に発揮するための指針としても活用できると感じました。
例えば、自己分析を通じて自分の研究スタイルを理解することは、より効果的な実験デザインやデータ解析につながります。
また、「思い込みを見つける」プロセスは、研究者が固定観念にとらわれず、新しい視点を取り入れる上で有益です。
これは、仮説を立てる際や異分野との融合を考える際に特に重要なスキルです。
また研究者にとって、自分の強みを活かしながら適切な環境を見つけることは、長く研究を続ける上での重要な要素です。
本書の最後のステップである「居場所を見つける」は、アカデミアと企業の選択、異分野への転身、あるいはチーム内での役割確立といったキャリアの岐路において大いに参考になると思いました。
『自分を知る練習』は、単なる自己啓発にとどまらず、研究者が自身のキャリアを見つめ直し、研究の質を向上させるための手引きとしても活用できます。
科学的思考と自己理解のプロセスを結びつけることで、より創造的かつ戦略的に研究に取り組めるようになります。
本書の提案するワークを実践しながら、自身の研究スタイルやキャリアプランを深く考える時間を持つことをおすすめしたいです。
評者プロフィール
きょう
静岡県出身。大学院を卒業後、新卒で外資系製薬会社に入社し研究職として勤務。幼少期の家庭事情から心の問題にも強い関心がある。現在は、会社員として創薬研究に携わりつつSNSを用いた情報発信に取り組み、心身の健康に貢献する活動もしている。Xでは「科学的根拠に基づいたメンタルケア」を主に発信中。
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