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【書評】『「どうせ私なんて‥‥‥」がなくなる「謙遜さん」の本』(評者:河合南/書店店主)

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古本と新刊のこだわりの選書やアクセサリーなどの雑貨を取り扱う独立書店「百年の二度寝」(東京都練馬区)の店主 河合南さまより書評をお届けします。

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「どうせ私なんて‥‥‥」がなくなる「謙遜さん」の本
田中遥、加藤紘織 著
飛鳥新社
2024年8月発売

書評

何といっても、「謙遜さん」というテーマにフォーカスを当てているのが、秀逸だと思います。

「謙遜さん」のもとになっているのは、「インポスター症候群」という概念だそうなのですが、カタカナ言葉ではいまいちしっくりこない。
「謙遜さん」という日本語にすることで、この概念が身近に感じられるし、「もしかしたら私もそうかも……」と自分に引き寄せて考えることができます。

「謙遜さん」とは、「自分を低く見積もって必要以上にへりくだってしまう」タイプの人のこと。
「謙譲の美徳」というものがある日本では、好ましいととらえられることも多いキャラクターですが、自分自身を認められず、他人に対してもへりくだるばかりでは、当人の自己肯定感は高まりませんし、周囲の人間次第では「都合のいいひと」として扱われてしまう恐れもあります。

本書には、精神医学や心理学の知見をもとに、「謙遜さん」たちが自分自身を認めてラクに生きられる方法が書かれています。

ちょっと体を動かしたり、自分の気持ちを整理するために客観的な視点を導入するワークがいくつも紹介されていますが、それらのワークがとても具体的で、やろうと思えばすぐに取り組めるものばかりなのが、良いと思いました。

特に、記憶のフラッシュバックや緊張感、恐怖心を抑えるための「心のシートベルトテクニック」は、軽く手を動かすだけと手軽ですし、手の感覚に集中することで交感神経の働きを抑える、と具体的な効用も書かれていて、私自身も一度取り入れてみたいと思いました。

また、一般的な「ポジティブシンキング」とは異なり、「ネガティブな気持ち」それ自体を否定していないのも、良いと思いました。

ネガティブな気持ち自体は、自分自身の素直な気持ちなので、それを抑え込んだり、無理にポジティブな方向に振ろうとすると、自分の本心をないがしろにすることになってしまいます。
本書では、「ネガティブな気持ち」を持ってしまったこと自体は否定せず、それを『切り替える』方法を教えてくれるので、読者は自分自身の気持ちを尊重しつつ、その気持ちを楽な方向に向けていくことができます。

著者が、心療内科医と看護師ということで、書かれている内容にも一定の信頼がおけ、安心して自分の「謙遜さん」と向き合うことができる一冊です。

評者プロフィール


河合南(かわい・みなみ)
東京都練馬区の書店「百年の二度寝」の店主です。発病してから15年以上付き合ってきたうつ病の当事者でもあります。店主自身が精神疾患の当事者と言うこともあり、精神疾患の当事者さんや周囲の方が読める本にも力を入れています。

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百年の二度寝 Twitterアカウント(@mukadeyabooks)

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