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【書評】『「死にたい」「消えたい」と思ったことがあるあなたへ』(評者:菊池大幹/株式会社ブックダム・代表取締役)

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メンタル本大賞に協賛いただいている株式会社ブックダム・代表取締役 菊池大幹さま より書評をお届けします!

メンタル本大賞®2022 ノミネート作品

「死にたい」「消えたい」と思ったことがあるあなたへ
河出書房新社 編
河出書房新社
2020年11月発売

書評

心の中で第一声。

「このタイトルは私に向けたもの?」

その時点でタイトルの勝利ですよね。

「死にたい」「消えたい」と何千回、何万回思ったことか。
今でもしょっちゅう思います。

幸いにも本当に苦しかったときを乗り越えることができた経験から、すぐに立ち直れるようになりました。

いまこの瞬間にも「死にたい」「消えたい」という気持ちが心の中をかき乱し、誰かのエールも気休めにしか思えない方がいらっしゃいますよね。

そんなあなたへ。
試しにこの本を開いてみてはどうでしょう?とささやかな提案です。

人の数だけ「処方箋」がある

本書にはさまざまな分野の執筆者が登場します。

悩みを抱え希望を持てず、もう生きていたくないと苦しんでいた経験や各々の見地から、それぞれの思いを語ってくださっています。

主婦、漫画家、作家、ソーシャルワーカー、精神科医、アーティスト、YouTuber、写真家・・・
執筆者のみなさんは本当にバラエティに富んでいます。

そして、あくまで読者と同じ一人の人間として、各々のストーリーを紡ぎながら、現在に至っていることがよく分かります。

誰一人として同じ人生を歩む人はいません。
だからこそ「自分に合った」誰かの考えってきっと存在するって思えるんです。

その考えが、時としてあなたの心をふっと軽くする「処方箋」になるかもしれません。

人の数だけ「悩み」がある

「死にたいと思ってはダメ?」
「自分を好きにならなくちゃダメ?」
「現実から逃げたらダメ?」

これらの問いに対して、いとも簡単に答えられる人のほうが少ないのではないでしょうか。
私も考え込んでしまいました。

コレ!という正解がないのは当然ですが、本当に苦しんでいる人に対して、自分の答えは無責任で安易すぎる気がしてなりません。

さて、本題に戻ります。

たとえば「死にたいと思ってはダメ?」という問いに対する、漫画家・水谷緑さんの答え。

死にたくてもいい

水谷さんは親御さんが亡くなられた後、生きるのをやめたいと思うほど落ち込まれていたそうです。
このままではマズい!と思い、看護師さんに相談したところ「死にたいと思うのは自然な反応じゃないかな」と言葉をかけられました。

それ以来、死にたいと思う気持ちはふつうのことで、否定しないで持っていてもいいという答えに至ったようです。

身体にもその人の限界があるように、心にだって限界があります。

コロナ禍に入ってからは特にですが、社会の価値観や環境も変化が大きく、戸惑っている方も多いはずです。

私だってそうです。

文量にして6ページですが、水谷さんの漫画を読めただけでも、この本を開いてよかったと感じました。

生きているって、すごい

この場をお借りしてシェアしたい言葉に、たくさん巡り合えました。
手元にある本は付箋だらけです。

その中でも特に印象に残った言葉がこちら。

死にたい人はいつも戦っている

NPO法人国際ビフレンダーズ東京自殺防止センター電話相談員の村明子さんとさくらまいさんの回答にありました。

そうですよね。
死にたい気持ちと本当は生きたい気持ちと、その狭間で戦っているような感覚はよくわかります。
本当に死にたいけど、恐いという理由だけでなく何らかの事情で死ねない人だっているはずですし。

そしてこう続きます。

今生きているだけでも、すごい。
あなたの健闘をたたえる。
あなたを誇りに思う。

これ以上私が何か語る必要はなさそうです。

最後に

この本はメンタル本大賞らしい、まさに「心が楽になる」本でした。

一つでも「自分に合っているかも」と思える考え方に出逢うことができたら、それだけで充分かもしれません。

私はたくさん出逢えました。

生きてさえいればそれでいいんですよ。

さて、今夜は何を食べようかな。

評者プロフィール

菊池大幹(きくち・だいき)
1985年生まれ。大学卒業後、株式会社高橋書店に入社し、7年間営業部で書店営業に従事。その後、広告代理店の営業~新興出版社の創業参画を経て、2019年12月に株式会社ブックダムを設立。「本」と「書店」の存在に人生を救われた原体験から、その存在を通じ一人でも多くの人に必要とされる事業を行うことを基本指針に活動中。

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