【書評】『誰でもみんなうつになる私のプチうつ脱出ガイド』（評者：佐々木戸桃／文筆家・セラピスト）

セラピストとして、自分と同じHSP気質の医療・介護従事者クライアントのケアをしながら、文筆活動をされている佐々木戸桃さまより書評をお届けします。

誰でもみんなうつになる私のプチうつ脱出ガイド
ハラユキ著／星野概念監修
KADOKAWA
2023年11月発売

書評

タイトルにまず大いに頷き、拝読を開始しました。
セラピスト、という仕事をする上で日々感じるのは、『自分はうつになるわけがない』と思っているかたが未だとても多いということーかねてよりわたしは、こうした作品がより広まることを願っていた一人です。

軽度うつ、と診断されたある女性の体験記。
惜しみなく開示されるエピソードには、（今の自分に当てはまるかも）と思える部分や、（そう、それってあるのよね）と共感しつつ背中を押される気持ちにもなれるコミックエッセイスタイルに、まったく気張ることなく読み進めることができました。

精神科の敷居を高く感じますか。
うつかもしれないことを疎ましく感じますか。
今、心と体は『本来の自分らしい』と感じられていますか。
…もしも一つでも、ぼんやりとでも、“クエスチョン”がつくのならば、ぜひすぐにでも手に取ることをお勧めします。

うつの種類、治療法、病院選び、セルフケア、調子が良くない時の家族や身近な人々との関わり方etc.…著者のハラユキさんの素晴らしい好奇心がもたらす、納得のいくまで突き詰め腑に落としていくプロセスも、読みつつ晴れやかな気持ちになれるものです。

力強く訴える、心を【スープ】に例えたラストシーン。
柔和かつ静謐さを携えた、星野概念先生の医学的補足。

知識を得、やってみて違和感を覚えるのであれば別の方法に切り替える…うつ病治療は医師も患者も試行錯誤の連続と言われていますが、そうしたこともあらかじめ分かっていることの大切さがそこここで強調されていることも素敵ですし、メンタルダウンしてからも役立つ情報量と共に、あらゆる『楽』がぎっしり詰まった一冊は、あなたの味方になるでしょう。

評者プロフィール

佐々木戸桃（ささき・ともも）
東京都出身。大学時代、学内文芸誌主宰を機に、自身の詩集（既に絶版）を出版。卒業後、広告代理店に入社し、クリエイティブ部門で製薬会社、文具メーカー等の販促ツール制作に携わる。徐々に組織内での振る舞いに疲れ３年後に退職、以降ライターとして独立。実用誌・ムック・書籍の取材執筆編集業務をする内に、関わる人々から公私問わず相談を受け続けていると気づき、独自のセラピー・カウンセリングスタイルを見出して本格的に活動開始。現在は、主に自身と同じHSP気質の医療・介護従事者クライアントのケアに注力しつつ、文筆活動もゆるりと継続中。