Xなどでメンタルケアや自分らしく生きる方法を心理学と生科学の視点から発信している きょうさま(製薬会社 主任研究者)より書評をお届けします。
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大切に抱きしめたい お守りのことば 松浦弥太郎 著 リベラル社 2024年3月発売 |

書評
本書はエッセイ集で、心を豊かにする155の言葉が収められています。
この書籍では、言葉の力とその大切さを中心に、著者自身の経験や気づきを交えて語られています。
著者は、「言葉はお守りである」というテーマを掲げ、自身が成長する中で言葉がどのように役立ったかを描写しています。
特に「言葉は人を励まし、笑顔にするために存在する」とし、読者に温かいメッセージを送り続けています。
本書は、さまざまな章に分かれており、それぞれの章で異なるテーマを扱っています。
たとえば、「ていねいとは感謝のあらわれ」や「自分を信じて一歩一歩進む」といった内容は、日常の出来事に結びついた教訓やヒントを提供してくれます。
このように、シンプルながら深い内容が盛り込まれており、読む人の心に響く言葉が多く含まれています。
研究者としての視点から、言葉の持つ力が研究活動や人間関係にどのように影響を与えるかを改めて考えさせられます。
本書は、著者の経験を交えながら、言葉が人を励まし、支えるものであることを伝えています。
研究者にとっても、日々の研究やチームワークの中で、適切な言葉を選ぶことは非常に重要です。
製薬研究は、論理的思考と創造力を必要とする分野であり、成果を生み出すためには他者とのコミュニケーションが欠かせません。
本書で語られる「言葉は人を励まし、笑顔にするために存在する」という考え方は、研究者にとっても非常に共感できるものです。
研究には困難がつきものであり、実験が思うように進まないことも多々あります。
そのようなとき、同僚や指導者の言葉が支えとなることも少なくありません。
また、自身が後輩や共同研究者を励ます立場になることもあり、適切な言葉を選ぶことでチームの士気を高めることができます。
本書を読むことで、改めて言葉の選び方を意識し、より良い研究環境を築くためのヒントを得ることができました。
本書の中で「ていねいとは感謝のあらわれ」という言葉がありますが、これは研究活動にも通じる考え方です。
実験やデータ解析を行う際、細部にまで注意を払い、正確に記録を残すことが求められます。
この「ていねいさ」は、単なる作業の精密さだけでなく、研究に関わる人々への敬意や感謝の表れでもあります。
また、「自分を信じて一歩一歩進む」というテーマも、研究者にとって重要な教訓となります。
新しい技術の開発や創薬のプロセスには長い時間がかかり、時には試行錯誤を繰り返さなければなりません。
その過程で、自分の考えや研究の方向性を信じ、地道に進めることの大切さを改めて実感しました。
また、研究者としてのキャリアを歩む中で、モチベーションを維持するためにも、本書のような言葉の力を借りることが有効です。
困難な状況に直面した際に、心に響く言葉を思い出すことで、前向きな気持ちを取り戻せることもあります。
本書は、単なるエッセイ集ではなく、研究者を含む多くの人にとって、日々の活動を支えるヒントが詰まった一冊です。
研究職は孤独な時間も多く、成果が出るまで長い時間がかかることもありますが、本書が示す「言葉の力」を意識することで、より前向きに研究に取り組むことができるでしょう。
研究者としての成長だけでなく、周囲の人々との関係を良好に保つためにも、言葉を大切にしていきたいと感じました。
評者プロフィール
きょう
静岡県出身。大学院を卒業後、新卒で外資系製薬会社に入社し研究職として勤務。幼少期の家庭事情から心の問題にも強い関心がある。現在は、会社員として創薬研究に携わりつつSNSを用いた情報発信に取り組み、心身の健康に貢献する活動もしている。Xでは「科学的根拠に基づいたメンタルケア」を主に発信中。
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