選考委員の川本義巳さま(公認心理師&メンタルコーチ)より、ノミネート作品の書評をお届けします!
弱いメンタルに劇的に効く アスリートの言葉 鈴木颯人 著 三五館シンシャ 2019年3月発売 |
書評
メンタル本大賞の選考委員をしております。
今回もノミネート作品の書評をお届けします。
今回は鈴木颯人さんがお書きになった
『弱いメンタルに劇的に効く アスリートの言葉』(三五館シンシャ)です。
鈴木さんはスポーツメンタルコーチとして競技・プロ・アマを問わずにアスリートのパフォーマンスを劇的に改善させるコーチングをされています。
僕自身、師匠がアスリートのメンタルコーチングをしていたり、自分も最初はアスリートのサポートを目指していたこともあり、興味深く拝読させていただきました。
まずみなさんにお伝えしたいこと
それは「スポーツに関係がない人にぜひとも読んでいただきたい!」ということです。
この本は、アスリートの言葉というのがテーマにはなっていますが、中身は違います。
自分の人生を自分の手足で進んでいきたい人のための本です。
人生はほんといろんなことが起こります。
楽しくてポジティブなことばかりではなく、当然ネガティブなこともあるし、すごく心が
押しつぶされそうになるときもあります。
そんなとき、どうするのか?
それがこの本のメインテーマなのですが、鈴木さんはご自身がアスリートと向き合ってきた経験から3つの法則を唱えてみえます(p2)。
アスリートの言動から見いだした3つの法則
- 弱気であること
- 自分流を見つけだそうとすること
- 挫折を経験していること
どうですか?
これ、僕たちみんな持っていませんか?
世界を目指すようなアスリートじゃなく、日々の仕事や生活を懸命に生きている僕たちでも鈴木さんの法則は成立するのです。
だから、あなたにぜひ読んでもらいたいんですよね。
心に響くアスリートの言葉
さてこの本の中身に目を向けると、多くのアスリートの言葉が紹介されています。
これを読むとわかるのですが、天才とか努力家と呼ばれたアスリートも、僕たちと変わらないことを考えています。
ただ、それを形に変えられるかどうか。
ここに大きな違いがあります。
この本では鈴木さんが、アスリートたちの言葉の裏付けを心理学の見地からわかりやすく書いてくださっているので、「これなら自分でもいけそうだ」と思えるでしょう。
オススメしたいのはP52からの「努力の中身」について書かれているところです。
努力は必ず報われる。もし報われない努力があるのならば、それはまだ努力と呼べない。(王貞治)
この言葉はとてもよく知られていますが、もしかすると本当の意図が伝わっていないのではないかと思っています。
報われるまでやりつづけることが本当の努力だ、と解釈されがちで、努力の「量」を重要視しているように思われます。しかし、私はこの言葉を「報われるような努力」とは、「質をともなった努力」のことを指していると解釈しています。
王さんが言っていることの本質は「量」よりも「質」に目を向けるべきだということなのではないでしょうか。
出典:『弱いメンタルに劇的に効く アスリートの言葉』上野由岐子 著、三五館シンシャ(p55)
「頑張っているけど結果が出ない」と思っている人はぜひ読んでください!
ほんとにたくさんの宝物のような言葉と鈴木さんの愛ある解説がいっぱいつまっている本です。
オススメします!
ちなみに僕が心に響いたのは、98ページ、ソフトボール上野選手の言葉です。
中学校で日本一になったとき、一人だけ泣かなかった。ここで勝つことを目指しているんじゃない、という気持ちがあった。流れない涙は、オリンピックという大きな夢のせいだった。(上野由岐子)
出典:『弱いメンタルに劇的に効く アスリートの言葉』上野由岐子 著、三五館シンシャ(p98)
出典:川本義巳さまFacebook投稿(2021年7月29日)
評者プロフィール
メンタル本大賞 選考委員
川本義巳(かわもと・よしみ)
三重県松阪市生まれ津市在住。
うつ専門メンタルコーチ/公認心理師/一般社団法人エフェクティブコーチング協会代表理事。高校卒業後、SEとして20年以上メーカーに勤務。大手IT企業への転職を機にうつ病を発症、寝たきり状態になり、1年2か月の休職を余儀なくされる。2007年コーチングに出合い、うつ病を完全克服。それを機にうつ専門のプロコーチになることを決意。コーチング、NLP、アドラー心理学、エリクソン催眠を学び、それらを応用したメソッドを開発し、2010年個人コーチングを開始。自治体や上場企業でのメンタルヘルス研修講師や精神科クリニック、児童相談所、教育委員会での相談業務等でも経験を積み、10年間で1万件以上の相談、指導を行っている。
1日3分でうつをやめる。 川本義巳 著 扶桑社 2019年10月発売 |