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【書評】『うつ病のぼくが始めた行商って仕事の話』(評者:きょう/製薬会社 主任研究者)

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Xなどでメンタルケアや自分らしく生きる方法を心理学と生科学の視点から発信している きょうさま(製薬会社 主任研究者)より書評をお届けします!

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『うつ病のぼくが始めた行商って仕事の話』ちゃんちき堂のてつ 著(文芸社) うつ病のぼくが始めた行商って仕事の話
ちゃんちき堂のてつ 著
文芸社
2022年9月発売

書評

この本は、うつ病を抱える人々がどのようにして社会に溶け込み、自分らしい働き方を見つけることができるかを示しています。

著者は、IT企業での成功を収めた後、うつ病に苦しみ退職しました。
その後、療養中にシフォンケーキ専門店「ちゃんちき堂」を立ち上げ、リアカーを使った行商を始めました。
この過程で、著者は自分の体調に合わせた働き方を模索し、社会との接点を持つことができるようになりました。

本書では、うつ病と共生しながらも自分らしい生き方を見つけるための試行錯誤が赤裸々に綴られています。
著者は「夢はありません」と語りながらも、自身の経験から得た教訓や希望を読者に伝えようとしています。
特に、うつ病に悩む人々やその家族に向けて、「自分だけが苦しいわけではない」というメッセージが込められています。

この本は、単なる自伝ではなく、うつ病患者がどのようにして社会参加し、自立していくかという具体的な道筋を示しています。
著者は、自身の経験を通じて、他の人々にも勇気や希望を与えることを目指しています。
また、行商という働き方がどのように可能であるか、その実践例としても価値があります。


私自身、製薬業界の研究者として、身体だけでなく心の健康の重要性を日々実感しています。
うつ病の治療法を探る一方で、患者がいかにして社会に適応し、生活の質を向上させるかという観点も欠かせません。
本書は、その点において非常に実践的であり、医療従事者やカウンセラーにとっても参考になる内容です。

著者が行商という形で社会との接点を持つことで、自分自身の回復と成長を果たした実例は、心の病と向き合う人々にとって希望の光となるでしょう。
特に興味深いのは、リアカーを使った行商という働き方が、単なる生計手段にとどまらず、社会とつながるための一つの「窓口」として機能している点です。

著者は自身の体調に合わせて無理なく働くことで、自分らしい生き方を見つけていきます。
このアプローチは、従来の就労形態とは異なる視点を提供し、精神的な負担を減らしながらも社会参加を実現する方法として非常に有意義です。

さらに、本書は単に成功体験を述べるだけでなく、失敗や挫折も率直に描かれており、そのリアルな描写が読者に強い共感を与えます。
「自分だけが苦しいわけではない」というメッセージは、心の病と向き合っている人々にとって大きな励ましとなり、前向きな一歩を踏み出すきっかけを与えてくれるでしょう。

この<ちゃんちき堂のリアカー日記>は、心の病と共生しながらも自分らしく生きるためのヒントを与えてくれる貴重な一冊です。
心の健康を支えるための多様な選択肢を考える上で、非常に示唆に富む内容だと感じました。
うつ病に悩む方々、その家族、そしてメンタルヘルスに関心のある全ての人にぜひ読んでいただきたいと思います。

選考委員プロフィール


きょう
静岡県出身。大学院を卒業後、新卒で外資系製薬会社に入社し研究職として勤務。幼少期の家庭事情から心の問題にも強い関心がある。現在は、会社員として創薬研究に携わりつつSNSを用いた情報発信に取り組み、心身の健康に貢献する活動もしている。Xでは「科学的根拠に基づいたメンタルケア」を主に発信中。

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