Xなどでメンタルケアや自分らしく生きる方法を心理学と生科学の視点から発信している きょうさま(製薬会社 主任研究者)より書評をお届けします!
僕たちはもう帰りたい さわぐちけいすけ 著 ライツ社 2019年3月発売 |
書評
この本は、特に職場環境や人間関係におけるストレスをテーマにしており、多くの人が共感できる内容となっています。
本書の中心テーマは「帰りたい」という願望で、無意味な残業や上司からの無茶振り、板挟みの状況、非効率な会社の運営など、働く人々が直面する現実的な問題が取り上げられています。
著者は、年齢や性別、立場が異なる多様な人々の視点を通じて、共通する「帰りたい」という思いを描写しています。目次の題目もユニークで、それぞれの章で異なる側面から「帰りたい」という感情に迫っています。
「お付き合い残業」がつらくて、もう帰りたい
「板挟み」だらけで、もう帰りたい
「無茶ぶり上司」に振り回されて、もう帰りたい
会社が「非効率」すぎて、もう帰りたい
「妻でも母でもない私」になりたくて、もう帰りたい
自分の中の「優先順位」がわからなくて、もう帰りたい
職場にも家にも「居場所」がなくて、もう帰れない
このように、本書は単なるエッセイではなく、多くの読者にとって自己反省や共感を促す内容となっており、現代社会における働き方や生き方について考えさせられる一冊です。
製薬会社の研究者として、忙しいプロジェクトや試験データの管理、タイトな納期に追われることも多く、「帰りたい」と思う瞬間は少なくありません。
特に、プロジェクト進行中に予期せぬ方向転換や膨大なデータ管理を求められることは「無茶振り」や「非効率」の代表格であり、著者が指摘する職場の構造的なストレスと共鳴する部分が多いと感じます。
しかし、仕事に対する責任感とチームへの信頼もまた、帰りたさを和らげる一助となります。
本書を読むと、その両者のバランスを保ちながらどのように働くか、自分の「優先順位」を改めて考えさせられます。
「もう帰りたい」と思う自分を許し、それをただの愚痴ではなく、自分の生き方や働き方を再評価する一歩にすること。
社会全体が個人に無理を強いる時代において、それに「NO」と言える柔軟さや、働くことの意味を見直す大切さを、軽妙な語り口で教えてくれます。
このようにして本書は、単なるエッセイに留まらず、自己反省や職場の問題提起に繋がる考察を提供し、読者がそれぞれの「帰りたい」という思いと向き合う手助けをしてくれます。
選考委員プロフィール
きょう
静岡県出身。大学院を卒業後、新卒で外資系製薬会社に入社し研究職として勤務。幼少期の家庭事情から心の問題にも強い関心がある。現在は、会社員として創薬研究に携わりつつSNSを用いた情報発信に取り組み、心身の健康に貢献する活動もしている。Xでは「科学的根拠に基づいたメンタルケア」を主に発信中。
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