Xなどでメンタルケアや自分らしく生きる方法を心理学と生科学の視点から発信している きょうさま(製薬会社 主任研究者)より書評をお届けします!
あなたが死にたいのは、死ぬほど頑張って生きているから 平光源 著 サンマーク出版 2021年4月発売 |
書評
この本は特に「死にたい」と感じる人々に向けて書かれており、その根底には「生きることへの真剣な思い」があると著者は述べています。
多くの人が「自分は何もできない」「生きる価値がない」と感じている状況で、「死にたい」という思いが芽生えることが多く、これは自己肯定感の低下や社会的なプレッシャーから来るものであり、実際には誰よりも「生きたい」と思っている証拠であるとしています。
著者は自身が精神科医として実践している治療法についても触れており、彼らの心を受け入れ安心感を与えることが重要だと強調しています。
このアプローチは、患者が自分の感情を自由に表現できる環境を作り出し、結果的に回復へと導く手助けとなります。
本書では、「弱い自分をそのまま愛する」ことが本当の強さであると説明しています。
人々はしばしば、自分を否定しがちですが、自分自身を受け入れることで初めて心の健康を保つことができるというメッセージが込められています。
著者は、自己肯定感を高めるための具体的な方法や考え方も紹介しています。
本書は、このようにメンタルヘルスについて深く考えさせられる内容であり、多くの人々に寄り添う力強いメッセージを持っています。
著者自身の経験や患者との対話を通じて得た知見が詰まったこの本は、心の病に苦しむ人々だけでなく、その周囲の人々にも大きな影響を与えることでしょう。
日々治療法や薬剤の開発を通じて患者のQOL(生活の質)を向上させることを夢見ていますが、その中で気づくのは薬剤だけでメンタルヘルスを解決できるわけではないということです。
本書が示すような「安心できる環境」や「心を受け入れること」は、薬が補いきれない部分を支えるものとして非常に大切であり、治療において患者に寄り添うという姿勢が改めて重要であると感じます。
特に本書における著者の治療法や患者の感情を表現できる環境づくりに関する記述は、私たち研究者にとっても、心のケアがいかに回復を助けるかを再認識させられる内容です。
また本書は、「弱い自分をそのまま愛することが強さである」というメッセージを通して、自己肯定感を高めるための実践的なアドバイスを提案しています。
自己肯定感の向上は、日々高い成果を求められる研究職にも通じるテーマです。
研究開発の分野では、失敗が多くプレッシャーも強いなか、自分を必要以上に責めてしまうことも少なくありません。
そのため、自分の感情や行動をありのまま受け入れることで、自己否定に陥ることなく長期的に充実した成果を目指すことが可能になると考えます。
本書はメンタルヘルスの悩みに対して、専門家としての知識と著者自身の経験を交えつつ、温かい共感と実践的な方法を読者に届ける力強い作品です。
選考委員プロフィール
きょう
静岡県出身。大学院を卒業後、新卒で外資系製薬会社に入社し研究職として勤務。幼少期の家庭事情から心の問題にも強い関心がある。現在は、会社員として創薬研究に携わりつつSNSを用いた情報発信に取り組み、心身の健康に貢献する活動もしている。Xでは「科学的根拠に基づいたメンタルケア」を主に発信中。
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