Xなどでメンタルケアや自分らしく生きる方法を心理学と生科学の視点から発信している きょうさま(製薬会社 主任研究者)より書評をお届けします!
あやうく一生懸命生きるところだった ハ・ワン 著/岡崎暢子 訳 ダイヤモンド社 2020年1月発売 |
書評
本書は現代社会における努力や競争に疲れた人々に向けて、もっとリラックスして生きることの重要性を教えてくれます。
著者は40歳を目前にして会社を辞め、フリーランスとしての生活を始めました。
この経験を通じて「一生懸命生きる」ことが必ずしも幸せにつながらないことを実感し「努力は必ず報われるわけではない」というメッセージを伝えています。
本書は以下のような主要なテーマが展開されています。
努力と結果の不均衡
努力しても必ずしも成功するわけではなく、逆に努力しなかった場合でも良い結果が得られることがあるという気付きを伝えてくれています。
著者は、「努力は裏切ることもある」と述べており、人生には予測できない要素が多いことを示唆しています。
自分らしい生き方の模索
他人の期待や社会的なプレッシャーから解放され、自分自身の価値観に基づいて生きることの重要性が語られています。
著者は、「人生マニュアル」を捨て、自分自身の幸せを追求することを提唱しています。
失敗と諦めの勇気
失敗を恐れず、新たな挑戦をする勇気や、時には潔く諦めることも大切だと述べています。
これは、自己嫌悪や過度な自己責任感から解放されるための重要な視点です。
小さな幸せの発見
日常生活の中で小さな楽しみや幸せを見つけることが大切であり、それが心の余裕につながるとしています。
特にコロナ禍において、多くの人々がこの考え方に共感したとされています。
この本は韓国で25万部以上売れたベストセラーとなり日本でも翻訳されて好評を得ています。
著者自身も、自身の経験を通じて「一生懸命生きない」新しいライフスタイルを実践しており、その姿勢が多くの読者に共感を呼んでいます。
「リラックスして生きる」アプローチは、日々の業務に追われる多くのビジネスパーソンにとって重要な視点だと感じました。
特に研究開発分野では一定の成果や結果を求められる一方で、時に「努力」と「結果」が必ずしも比例しないことがあります。
研究という性質上、成果が得られるか否かは不確定要素が多く、結果をコントロールしきれない状況が往々にしてあります。
本書が示唆する「努力の結果が報われなくても、自分を責めすぎず、次のステップに目を向ける」という視点は、研究者としても共感でき、特に失敗が続いた際の心の安定に寄与するアプローチとして捉えられます。
また、著者が提案する「自分らしい生き方の模索」や「小さな幸せの発見」も、研究業務において自己成長と持続的なモチベーションを保つためのヒントとなります。
研究や業務の多忙さに追われるとどうしても「結果」を追い求めがちですが、本書が説くように日常の中で小さな楽しみや喜びを見出すことは、長期的に見てもパフォーマンスの向上に寄与すると言えるでしょう。
さらに、著者が自らの経験を通じて「一生懸命生きない」スタイルを実践している姿勢も、多くの人に安心感と勇気を与えています。
競争と努力を強要する社会の中で、「力を抜くことも選択肢の一つである」と知ることは、多忙な社会で生きる現代人にとって新鮮かつ必要なメッセージです。
韓国のベストセラーが日本でも支持されていることからも、現代人がいかに競争と努力に追い詰められがちかを反映しているように感じました。
選考委員プロフィール
きょう
静岡県出身。大学院を卒業後、新卒で外資系製薬会社に入社し研究職として勤務。幼少期の家庭事情から心の問題にも強い関心がある。現在は、会社員として創薬研究に携わりつつSNSを用いた情報発信に取り組み、心身の健康に貢献する活動もしている。Xでは「科学的根拠に基づいたメンタルケア」を主に発信中。
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