古本と新刊のこだわりの選書やアクセサリーなどの雑貨を取り扱う独立書店「百年の二度寝」(東京都練馬区)の店主 河合南さまより書評をお届けします。
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しんどくなったら、心より先に体を整えよう いちい葉子 著 アスコム 2024年11月発売 |
書評
めずらしい整体の専門家によるメンタル本。
タイトルにもある通り、メンタルのしんどさに「身体」からアプローチするという視点は、とても新しいと思いました。
著者が考案したという「まくら体操」は、使う道具もバスタオル3枚だけとシンプルですし、難しい運動でもないので、無理なく自分のペースで続けられそう。
また、体操の効果について「これさえやれば精神疾患が治る!」といった誇張をすることないのも良いところです。
私が特に心を引き付けられたのが、「老い」に対する捉え方。
「老いること」を絶対悪のように捉え、若い見た目ばかりをもてはやす風潮、誰もが「アンチエイジング」に励まねばならないと思い込んでいる風潮に、著者は異を唱えます。
人間も生物である以上、老いていくのは自然なこと、その自然の摂理に抗おうとしすぎるのはとても不自然なことではないか?
「私は、「アンチ・エイジング」ではなく、「アクセプト・エイジング」のマインドで、歳を重ねていきたいと思っています。自分の老いを受け入れて(アクセプト)、その時々の良さや強さを磨いていく。そんな姿勢こそ、「美しさ」を生み、人としての魅力になるのだと思うのです。
出典:『しんどくなったら、心より先に体を整えよう』いちい葉子 著/アスコム(157ページ)
という部分は、うなずきながら読みました。
心は思い通りにならない、けれど、体はケアしてあげれば必ず応えてくれる。
だから、まずは体を整えよう、という著者の考えには非常に説得力があります。
メンタルにアプローチする一つの方法として、大変参考になる一冊です。
評者プロフィール
河合南(かわい・みなみ)
東京都練馬区の書店「百年の二度寝」の店主です。発病してから15年以上付き合ってきたうつ病の当事者でもあります。店主自身が精神疾患の当事者と言うこともあり、精神疾患の当事者さんや周囲の方が読める本にも力を入れています。
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