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【書評】『「頑張る」をやめてみる』(評者:河合南/書店店主)

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古本と新刊のこだわりの選書やアクセサリーなどの雑貨を取り扱う独立書店「百年の二度寝」(東京都練馬区)の店主 河合南さまより書評をお届けします。

「メンタル本大賞®2023」エントリー作品

『「頑張る」をやめてみる』根本裕幸 著(リベラル社) 「頑張る」をやめてみる
根本裕幸 著
リベラル社
2022年5月発売

書評

珍しい、文庫サイズのメンタル本。

文庫はどうしても文字が詰まって窮屈な印象を与えますし、ビジュアル面の演出や使える色数にも制約があるので、「読みやすさ」を感じさせるのが難しいメディアだと思うのですが、この本ではページによって文字の配置を変えたり、グレーをうまく使うなどの工夫がなされていて、圧迫感を感じさせません。

「抱え込んでいる」ことありませんか?

この本では、メンタルがしんどくなる様々な要因を「抱え込み」という言葉で表現しています。

「抱え込み」という表現は実に秀逸です。
我が身を振り返っても、思い当たることがありまくり……。

多様な要素をひとつの言葉にまとめることで、「それがならなんとかできるかもしれない」と、希望が持てますし。

著者はこの「抱え込み」を、さらに3つのタイプに分類しています。

「自己肯定感が低いタイプ」
「敏感タイプ」
「しっかりものタイプ」

私は精神療法の専門家などではありませんので、あくまでもそう感じるだけなのですが、それぞれ、専門的な分類や用語を当てはめようとすれば当てはめることが出来る概念かと思います。

専門用語を持ってきて読者をけむに巻いたり、権威付けをすることなく、著者はあくまでも読者の実感に沿った、日常用語で説明してくれます。

「抱え込み」から脱出できる

また、第3章以降で挟み込まれる「ワーク」は、すぐに取り組めるものばかり。

一人の時に「助けて」という言葉を口にするとか、気持ちを分かってほしい相手に「出さない手紙」を書くなど、どれも心を軽くしてくれそうです。

書店員の立場としては、人に頼る練習のために、「店員にちょっとしたことを聞いてみる」というのは、ぜひチャレンジしてみてほしいな、と思います。

私は、店員って「赤の他人だけどちょっとしたことなら頼ってもいい」独特な存在だと思っていて、依存されてしまうのは困りますけど、抱え込んだ荷物を軽くする練習に使っていただけるなら大歓迎です。

お店の商品に気に入ったものがあって、お財布にも余裕があるようでしたら、お買い上げもよろしく……。

「抱え込む」ことも悪くない

著者は「抱え込み」を100%否定しているわけではありません。

筋肉を付けたければ筋トレして負荷をかける必要があるように、自分の心に重さを留め置いてグッと耐えることで人の心は確かに強くなる。
そのことにもちゃんと触れられています。

しかし、持ち上げきれないような重荷を、休みなく常に抱え続けると、強くなる前に自分が壊れてしまいます。

抱えられる荷物と抱えきれない荷物の見極めは難しいけれど、自分と向き合いつつ、抱えたり手放したりしながら歩んでゆきたい。
そんなことを、考えさせられる一冊でした。

評者プロフィール


河合南(かわい・みなみ)
東京都練馬区の書店「百年の二度寝」の店主です。発病してから15年以上付き合ってきたうつ病の当事者でもあります。店主自身が精神疾患の当事者と言うこともあり、精神疾患の当事者さんや周囲の方が読める本にも力を入れています。

公式サイト・SNS
百年の二度寝ホームページ
百年の二度寝 Twitterアカウント(@mukadeyabooks)

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