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【書評】『ちょっとのコツでうまくいく! 躁うつの波と付き合いながら働く方法』(評者:河合南/書店店主)

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古本と新刊のこだわりの選書やアクセサリーなどの雑貨を取り扱う独立書店「百年の二度寝」(東京都練馬区)の店主 河合南さまより書評をお届けします。

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ちょっとのコツでうまくいく! 躁うつの波と付き合いながら働く方法
松浦秀俊 著/高江洲義和 監修
秀和システム
2024年9月発売

書評

双極症の当事者向けに、躁うつの波と上手く向き合いながら働くノウハウを解説した書籍。

著者の松浦さんは、自身も双極症の当事者であり、双極症を抱えた方向けのメディアや就労支援を運営してきた方です。

本書の最大の特徴は、この松浦さんが、長年双極症の症状と向き合うことで掴んだ「躁うつの波と付き合う方法」が、とても具体的に書かれていることです。

例えば躁状態の時、対人関係でイライラしてしまい、このまま自分の気持ちをぶつけたら確実に関係が悪くなる、そんな時にどうするか?

本書が勧めているのは、相手への連絡やレスポンスの手段を、敢えて手間のかかるものにする(チャットではなくメール、メールではなく電話にするなど)ことです。
こうやって、「コミュニケーションコスト」をあげることで、気持ちに任せて失礼なことを言ってしまったり、関係を悪くすることを防げるそうです。

また、朝起き上がるのがおっくうになるうつ病の対処としては、朝の行動を細かく詰めておき、毎日そのルーティンに従って行動するのが効果的だとのこと。

このように、双極症障害と長く向き合ってきた方だからこその、かゆいところに手が届くようなノウハウがたくさん書かれています。

また、ひとつひとつの行動は比較的簡単に実行できるものですし、なぜこの行動が必要なのかの解説も行き届いているので、読んでいて「自分もやってみようかな?」と思えます。

著者自身が20代のあいだに4回転職し、4回休職するなど、実際に双極症の症状に振り回されてきた方であるというのも、本書の説得力を高めています。
ご当人にとっては辛かったり忘れたかったりするであろう経験も、すごく率直に描かれており、同じ病で苦しんでいる方の力になりたいという、強い気持ちを感じます。

本書の軸となっているのは、双極性障害の方が自分自身の調子の波や、躁(うつ)に転じるきっかけを客観的に見直し、その後の闘病に活かすための「双極トリセツ」の作成です。

「双極トリセツ」作成には、それなりに手間がかかりそうですし、自身の調子の波を見返すということで、一定の負担はかかると思います。
しかし、双極症の当事者として、読者より一歩先にいる松浦さんが勧めているということで、「少し大変だけど、思い切って挑戦してみよう」という気持ちになる方も多いのではないでしょうか?

躁、うつの「波」がある双極症という病気には、他の精神疾患とはまた違った困難があると思います。
身近に双極症と診断された方がいたら、まずおススメしたい一冊です。

評者プロフィール


河合南(かわい・みなみ)
東京都練馬区の書店「百年の二度寝」の店主です。発病してから15年以上付き合ってきたうつ病の当事者でもあります。店主自身が精神疾患の当事者と言うこともあり、精神疾患の当事者さんや周囲の方が読める本にも力を入れています。

公式サイト・SNS
百年の二度寝ホームページ
百年の二度寝 Twitterアカウント(@mukadeyabooks)

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