日本読書療法学会を設立して、読書セラピーの研究と実践を続けてきた寺田真理子さまより書評をお届けします!
“寝る前に5分”読むだけで「不安」がスーッと消え去る本 弥永英晃 著 大和出版 2020年10月発売 |
こちらの紹介記事(心理学と脳科学的アプローチ)もぜひご参考ください。
書評
私はうつから回復していく中で、本の中にモデリングの対象を見つけてきました。
「こんなふうに生きていきたい」と憧れる人物の本を読んで、その生き方や考え方を真似するようになったのです。
読んだカテゴリは主に3つありました。
「活躍する女性の実用書やエッセイ」
「人生の先輩のエッセイや人生論」
そして
「シンプルな物語」
です。
「活躍する女性や人生の先輩の本はわかるけれど、どうして物語?」と不思議に思われるかもしれません。
物語を読むことで、自分が困ったときや悩んだときに、「あの登場人物だったらどうするだろう?」と考えられるようになったのです。
中でもシンプルなものほど内面化しやすく、モデリングの対象に適していました。
この本にも、そんな役割を果たしてくれそうな7つの物語が登場します。
いずれも絵本のような雰囲気で、どこか懐かしさを覚えます。
メンタルが弱っているときには、バッドエンドの作品に注意が必要です。
お話の世界のことでも、ダメージを受けてしまうからです。
だけど、7つの物語はハッピーエンドの温かい作品ばかりなので、安心して読むことができます。
また、潜在意識のことをはじめ、心理学について知ることは、うつからの回復のために大きな力になってくれました。
メンタルが弱ったことをきっかけに、心理学に興味を持つ方は多いものです。
そうはいっても、勉強するとなると、疲れているときはなおさらハードルが高く感じられてしまうでしょう。
この本では、気軽に心理学に触れられるようになっています。
たとえば、物語には、ネガティブなセルフトークをしてしまう子猫のクウが登場します。
そんなクウに対して、「森のしあわせ診療所」のふくろう先生は、こう教えてくれるのです。
それは自分が自分の心にかける『呪いの言葉』なんだよ。
そんなときは、『祝福の言葉』(自分を愛する・応援する言葉)を
かけてあげるといいんだ。(中略)そしてどうしても呪いの言葉で苦しくなったときは、
“それって本当なの?”と自分で問いかけてみるといいよ。
絶対にそうとは限らないことが多いんだ。出典:『”寝る前に5分”読むだけで「不安」がスーッと消え去る本』弥永英晃 著/大和出版(129~130ページ)
「ふくろう先生の教え」とイメージするので、内面化しやすいでしょう。
行間や文字の大きさなども、疲れていても読みやすいように工夫されています。
実際に寝る前に読んで、潜在意識を少しずつ自分の味方に変えていくことで、安らぎを取り戻せると思います。
評者プロフィール
寺田真理子(てらだ・まりこ)
長崎県出身。幼少時より南米諸国に滞在し、ゲリラによる日本人学校脅迫や自宅の狙撃を経験。東京大学法学部卒業。多数の外資系企業での通訳を経て、現在は講演・執筆・翻訳活動。読書によってうつから回復した経験を体系化して日本読書療法学会を設立し、国際的に活動中。また、うつの体験を通して共感した認知症について、パーソンセンタードケアの普及に力を入れている。著書、訳書多数。日本メンタルヘルス協会公認心理カウンセラー。
心と体がラクになる読書セラピー 寺田真理子 著 ディスカヴァー・トゥエンティワン 2021年4月発売 |