Xなどでメンタルケアや自分らしく生きる方法を心理学と生科学の視点から発信している きょうさま(製薬会社 主任研究者)より書評をお届けします!
この会社ムリと思いながら辞められないあなたへ 井上智介 著 WAVE出版 2021年9月発売 |
書評
この本は、会社を辞めることに対する不安や恐れを和らげ、実際に行動を起こすための具体的な手順を示しています。
まず、自己認識と辞め時の理解が重要です。
自分が「もう限界」と感じていることを認識し、その感情を無視せずに自分の状況を振り返ることが勧められています。
自分がどれだけ頑張っているか、そしてその頑張りがどれほど自分に負担をかけているかを理解することが、次のステップへの第一歩です。
次に、心と体の危険サインに気づくことが強調されています。
仕事に行くことが怖くなったり、身体的な不調が続いたりする場合、それは辞めるべきサインかもしれません。
こうしたサインに敏感になり、自分自身を守るための行動を取るよう促されています。
円満退職のための準備も重要です。
周囲が納得できる理由を用意し、退職理由や退職日を事前に考え、計画的に行動することが求められます。
また、就業規則や労働条件についても理解しておく必要があります。
さらに、休職や転職活動のすすめとして、休職中でも転職活動を行うことは可能であり、その際には自分の健康を最優先に考えるべきです。
休職中の過ごし方や転職活動のポイントについても具体的なアドバイスが提供されています。
最後に、自己価値の再確認が重要です。
自己価値を再確認し、自分自身を大切にすることの重要性が伝えられています。
会社はあなたを守ってくれないため、自分自身が自分を守る必要があります。
このメッセージは、多くの読者に勇気と希望を与えるものとなっています。
このように、『この会社ムリと思いながら辞められないあなたへ』は、現代社会で働く人々が直面する問題に対して具体的な解決策と心構えを提供しており、多くの人々にとって有益な一冊となっています。
この本は、特に製薬業界のように高い専門性を求められ、プレッシャーがかかる職場環境にいる研究者にとって、非常に心に響く内容です。
研究職は、一見して安定しつつも、その実、成果のプレッシャーや厳しいスケジュールに追われることが多く、心身に大きな負担がかかる場合があります。
そうした状況で「辞めたい」という気持ちが芽生えても、専門職ゆえの「せっかく積み上げてきたキャリアを無駄にしてしまうのではないか」「次の職場でも同じような悩みを抱えるのではないか」という不安が、行動をためらわせる原因となりがちです。
この書籍は、そうした不安を和らげ、実際に行動に移すための具体的な手順を提供しています。
まず、自己認識の重要性が強調されており、限界を感じた際にその感情を無視せず、きちんと向き合うことの大切さが語られています。
特に研究者はプロジェクトの進行やチームへの責任感から、自分の不調を見過ごしがちです。
しかし、著者は「どれだけ頑張っているか」を自分で認識し、その負担がどれほど自分に影響を与えているかを理解することが、次のステップへの第一歩だと訴えています。
このプロセスは、研究者にとっても有用な自己分析の手段となるでしょう。
また、心と体の危険サインに気づくことについても言及されており、精神的・身体的な不調が続く場合は、辞職を検討するシグナルであることが示唆されています。
製薬業界の研究者は、長時間の実験や厳しい納期に追われる中で、こうしたサインを見逃してしまいがちです。
本書が提案するように、自分の体と心の声に敏感になることは、結果的に自分のキャリアを守ることにもつながります。
さらに、円満退職のための具体的なステップが解説されている点も、非常に実践的です。
退職理由や退職日の設定、就業規則の理解など、細かな準備をしておくことで、不安を減らし、円満な退職が実現できます。
特に製薬業界のように専門性が高い職場では、辞職後のキャリアに影響を与える要因も多いため、このような計画的なアプローチが非常に役立ちます。
最後に、自己価値の再確認と、自分自身を守る意識の重要性が強調されている点は、特に印象に残ります。
製薬業界の研究者として、時に会社の期待に応えようとするあまり、自分を犠牲にしてしまうこともありますが、著者は「自分自身を守るのは自分しかいない」というメッセージを通じて、読者に勇気と希望を与えています。
このように、この書籍は製薬業界を含む専門職の人々が、自分自身の幸せを再発見するための一助となるでしょう。
選考委員プロフィール
きょう
静岡県出身。大学院を卒業後、新卒で外資系製薬会社に入社し研究職として勤務。幼少期の家庭事情から心の問題にも強い関心がある。現在は、会社員として創薬研究に携わりつつSNSを用いた情報発信に取り組み、心身の健康に貢献する活動もしている。Xでは「科学的根拠に基づいたメンタルケア」を主に発信中。
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