Xなどでメンタルケアや自分らしく生きる方法を心理学と生科学の視点から発信している きょうさま(製薬会社 主任研究者)より書評をお届けします!
弱いメンタルに劇的に効く アスリートの言葉 鈴木颯人 著 三五館シンシャ 2019年3月発売 |
書評
本書は、スポーツメンタルコーチとしての経験を基にアスリートたちの名言を通じてメンタルの強化方法を探求する内容であり、特に逆境に直面している人々や、メンタル面での弱さを感じているアスリートに向けて書かれています。
本書の主なテーマは以下の通りです。
逆境を受け入れることの重要性
著者は、逆境や挫折を恐れず、それを受け入れることが成長につながることを教えてくれます。
この考え方は、アスリートが試合や練習で直面するプレッシャーや失敗に対処する際に非常に有効です。
メンタルの育成方法
本書では、一流アスリートたちの言葉を引用しながら、具体的なメンタル育成方法が解説されています。
名言を通じて読者に自分自身と向き合うことの大切さを伝えています。
自己理解と目標設定
自分自身を理解し、適切な目標設定を行うことがメンタル強化につながると強調しています。
目標設定によって自分の成長を実感しやすくなるため、モチベーションが維持されるという点も重要です。
ポジティブ思考とネガティブ思考のバランス
「ポジティブに生きよう」というメッセージだけではなく、ネガティブな感情も受け入れることが大切だと述べられています。
多くのアスリートが抱える不安や恐れについても触れ、それらを克服するための具体的な方法論を提供しています。
著名なアスリートたちの言葉から導き出された三つの法則「弱気であること」、「自分流を見つけること」、「挫折を経験すること」は、アスリートが成功するために必要な心構えや成長の過程を示しています。
総じて本書は、アスリートだけでなく一般の読者にも役立つメンタル強化のための実践的な知識とインスピレーションを提供する一冊です。
逆境への対応力やメンタルの強化は研究者の世界でも欠かせないテーマです。
本書は、スポーツというフィールドを通じて困難に立ち向かう方法や自己理解の大切さを探求しています。
その内容はアスリートだけでなく、科学者や研究者にも深く響くものです。
「どん底を歓迎しよう」という考え方は、失敗が避けられない研究の現場で特に共感できる部分です。
実験が予想通りに進まなかったり、新薬開発の段階で問題が発生する中で、失敗を単なる結果ではなく新たな洞察を得るチャンスと捉えることが、研究者にとっても重要です。
著者の提案する「逆境を受け入れる力」は、研究プロジェクトの長期的な成功に欠かせないマインドセットだと感じました。
製薬研究の分野では、結果がすぐに現れない中でのモチベーション維持や、失敗を次の成功につなげる思考法が必要不可欠です。
この本は、アスリートたちの経験と名言を通じて、逆境に立ち向かう勇気と、自己を成長させるためのヒントを与えてくれます。
科学や研究に従事する方にも、ぜひ手に取っていただきたいと思いました。
選考委員プロフィール
きょう
静岡県出身。大学院を卒業後、新卒で外資系製薬会社に入社し研究職として勤務。幼少期の家庭事情から心の問題にも強い関心がある。現在は、会社員として創薬研究に携わりつつSNSを用いた情報発信に取り組み、心身の健康に貢献する活動もしている。Xでは「科学的根拠に基づいたメンタルケア」を主に発信中。
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