昨年【特別賞】受賞作品の著者 加藤隆行さま(心理カウンセラー)より、2022ノミネート作品の書評をお届けします!
生きづらいがラクになるゆるメンタル練習帳 バク@精神科医 著 ダイヤモンド社 2021年8月発売 |
書評
評価ポイント
- 「擬態」という切り口のおもしろさ
- 精神科医でありながら悩みの当事者であった著者ならではの納得感
- 軽やかで優しく、現実的なノウハウを提示
メンタルが苦しくなってしまうのは、簡単に言えば、環境や考え方の影響により「自分」のホンネを殺してしまい、「自分らしく」生きられていないから、だと言えると思います。
ですのでメンタル本の多くに書かれていることは
「そのままのアナタでいいんだよ」「ホンネに気づいて生きていこう」的な、役割を生きてきてしまった自分から「本来の自分を取り戻していく」
という内容になってきます。
一方この本は、
「そんな『そのままの自分』にこだわりすぎて、真っ向から現実問題に立ち向かおうとするからシンドい。それよりも《擬態》して社会を上手にやり過ごそう!」
という、メンタル本の中では少し特殊な立ち位置で書かれています。
これは、もともとADHDやジェンダーの課題を抱える著者さんだからこそ、「そのままの自分」を社会に適応させるのは難しいという前提で、社会と「ほどほどいい塩梅」で生きて行くための方法とノウハウを伝えるというスタンスによるもの。
とは言えこの本も、最終的には、「自分らしく生きたらいいんだよ」ということが書かれているのですが、そのスタンスのおかげで、内容が「寄り添い型」すぎることもなく、こうしたらいい!という「アドバイス押し付け型」でもなく、「人生は練習なんだよ」という、ほどほどいい塩梅で書かれています。
「そもそも、人は平等ではない」
「自分らしく生きている風に見せる」
「着せ替え用の仮面を用意する」
「イヤなことに脳を飽きさせる」
「なんちゃっていいヤツごっこをする」
これらの言葉だけでも、通常のメンタル本とはだいぶ違う感じがしますが、すんなりと抵抗なく入ってくるのは、行間に感じる著者さんの優しさによるものだと思います。
なかにはちょっと難しいなと思うものもありますが、実践的で納得感がありますので、自分に合うものから少しずつ取り入れていけそうです。
練習を続けていくことで、自然と自分らしさが身につき、人生は大きく好転していくのではないかと思える本でした。
評者プロフィール
加藤隆行(かとう・たかゆき)
ココロと友達オフィス代表 心理カウンセラー
幼少より病弱だったこともあり、劣等感が強くコミュニケーションの苦手な子に育つ。大手通信会社での激務の中、30歳のとき体調が激烈に悪化。3度の休職と入退院を繰り返し、カラダだけでなく次第にココロとも向き合うようになる。2015年に退職し、心理カウンセラーとして独立。「自分自身と仲直りして優雅に生きる」をコンセプトに、東京を中心に全国でカウンセリングやセミナーを開催。愛称は「かとちゃん」。
「会社行きたくない」気持ちがゆるゆるほどける本 加藤隆行 著 小学館クリエイティブ 2021年4月発売 |
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