Xなどでメンタルケアや自分らしく生きる方法を心理学と生科学の視点から発信している きょうさま(製薬会社 主任研究者)より書評をお届けします!
かくれ繊細さんの「やりたいこと」の見つけ方 時田ひさ子 著 あさ出版 2022年5月発売 |
書評
この本は、特にHSS型HSP(下記引用文を参照)に焦点を当てて、感受性が強く、外向的でありながらも内面的には傷つきやすい人々が、自分の本当にやりたいことを見つけるための方法を提供しています。
最近は、アメリカの心理学者のエイレン・アーロン博士の発見した概念「HSP:Highly Sensitive Person」(生まれつき感受性が強く敏感な気質を持った人)が少しずつ浸透してきて話題になることも増えました。
「かくれ繊細さん」とは、この「HSP」の中でも、共感能力が高く繊細で傷つきやすい側面(HSP)を、外向性、社交性、積極性、好奇心旺盛さんという別の側面(HSS:High Sensation Seeking)によって表面化しないようカバーしている人たちです。
出典:『かくれ繊細さんの「やりたいこと」の見つけ方』時田ひさ子 著/あさ出版(p3-4)
本書の主なポイントは以下の通りです。
「かくれ繊細さん」の理解
かくれ繊細さんとは、外向的で社交的な一方で、内面的には非常に敏感で傷つきやすい特性を持つ人々を指します。
彼らは周囲の期待に応えようとするあまり、自分の気持ちを抑え込んでしまうことが多いです。
このため、自分が本当に何を求めているのかが不明確になりがちです。
才能の発見
本書では、かくれ繊細さんに秘められた10個の才能についても触れています。
これらの才能を理解し、活用することで、自分自身の強みを見つける手助けとなります。
著者は、これらの才能がどのように日常生活や仕事に役立つかを具体的に示しています。
自己理解メソッド
著者は、自己理解を深めるための具体的なメソッドを提案しています。
自分の感情や欲求に気づき、それを受け入れることが重要です。
特に、「やりたいこと」を見つけるためには、自分自身と向き合い、内面的な声に耳を傾ける必要があります。
行動への移行
やりたいことを見つけた後、それを実現するためには行動が不可欠です。
本書では、具体的なステップやワークショップ形式でのアプローチが紹介されており、読者が自分自身の目標に向かって進むための道筋が示されています。
生きづらさの解消
かくれ繊細さんはしばしば生きづらさを感じていますが、本書ではその解消方法についても言及されています。
自分自身を理解し、他者とのコミュニケーションを円滑にすることで、より充実した生活を送るためのヒントが得られます。
このように、「かくれ繊細さんの「やりたいこと」の見つけ方」は、自分自身を理解し、本当にやりたいことを見つけるための実践的なガイドとなっています。
特にHSS型HSPという特性を持つ人々にとって、有益な情報と具体的なアプローチが詰まった一冊です。
『かくれ繊細さんの「やりたいこと」の見つけ方』は、HSS型HSPに焦点を当てた一冊で、外向的かつ感受性が高い特性を持つ人々が、自分の本当にやりたいことを見つけるための実践的なガイドとなっています。
製薬会社の研究者という立場から見ると、この本が提供する自己理解の方法や行動への移行のアプローチは、研究の場での自己管理やチームワークにも応用できる内容であり、非常に興味深いものでした。
HSS型HSPは、外向的で新しい刺激を求める一方で、感受性が強く、内面で傷つきやすいという複雑な特性を持ちます。
この本では、そんな「かくれ繊細さん」の特性を理解し、受け入れることの重要性が強調されています。
研究職でも、周囲の期待に応えるために多忙なスケジュールをこなす中で、自分の気持ちを抑えてしまう場面が少なくありません。
著者が述べるように、自分が本当に何を求めているのか、どんな環境で最大限の能力を発揮できるのかを理解することは、長期的なキャリア形成においても非常に重要だと感じました。
本書が提案する自己理解のメソッドは、自分の感情や欲求に気づき、それを受け入れるプロセスを重視しています。
特に、自分の「やりたいこと」を見つけるためには、まず自分自身と向き合うことが不可欠です。
製薬の研究開発は、探求心や創造性が求められる一方で、データ解析や実験の反復作業が続くことも多く、自己の内面と向き合いながら、自分の研究テーマに情熱を持ち続けることが成果に直結します。
自分の内面的な声に耳を傾け、何が自分を動かすのかを理解することは、研究者にとっても極めて有意義なプロセスだと感じました。
また、行動に移すための具体的なステップやワークショップ形式のアプローチも紹介されており、これが本書の実践的な魅力となっています。
特に研究の現場では、アイデアやプロジェクトを形にするために計画性が求められるため、これらのステップを取り入れることで、自分のやりたいことを効率的に実行に移せると感じました。
本書はさらに、かくれ繊細さんが抱えがちな「生きづらさ」の解消にも触れています。
自分自身を理解し、他者とのコミュニケーションを円滑にする方法についての提案があり、これがHSS型HSP特有の「周囲に理解されにくい」という悩みの解決に役立つと感じました。
研究職でも、異なる専門分野や価値観を持つ人々と協力し合う場面が多く、自己理解とコミュニケーション能力の向上は、より充実した研究生活を送るために必要な要素です。
総じて、『かくれ繊細さんの「やりたいこと」の見つけ方』は、HSS型HSPの特性を持つ人々が、自分自身を理解し、自分の本当にやりたいことを見つけるための優れたガイドとなっています。
自分の特性を知り、それを活かすことで、日常や仕事における生きづらさを解消するための具体的なアプローチが詰まっており、研究者としてのキャリアを見つめ直す際にも役立つ一冊だと感じました。
選考委員プロフィール
きょう
静岡県出身。大学院を卒業後、新卒で外資系製薬会社に入社し研究職として勤務。幼少期の家庭事情から心の問題にも強い関心がある。現在は、会社員として創薬研究に携わりつつSNSを用いた情報発信に取り組み、心身の健康に貢献する活動もしている。Xでは「科学的根拠に基づいたメンタルケア」を主に発信中。
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