選考委員の平光源さま(精神科医)より、ノミネート作品の書評をお届けします!
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精神科医が教える ストレスフリー超大全 樺沢紫苑 著 ダイヤモンド社 2020年7月発売 |
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書評
今回もこの本の良いところを3つに分けてお伝えしたいと思います。
1.まさに”大全”! メンタル版の『家庭の医学』
皆さんは『家庭の医学』という本をご存じでしょうか?
以前はどこの家庭にもあったのですが、家庭でできる、病気に対するありとあらゆる対処法が網羅されていた100年の歴史のある本です。
この本はまさにそのような素晴らしい本のメンタル版と言っていいと思います。
人生のあらゆる悩みや、不安や疲れを無くすためのTO DOがわかりやすく書いてあります。
こういう辞書的な本を書くと言うのは、すごい勇気と覚悟が要ります。
なぜなら、あらゆる知識を正確に把握して、多くの項目をバランスよく、簡潔にけれども読者にわかるように書かなければいけないからです。
この作業は本当に途方もない位の労力が必要で、これを作られた先生のご苦労を想像すると本当に頭が下がります。
2.とにかく解決策が具体的
精神科医になる過程で、研修医時代は指導医と一緒に患者さんの診察に入ります。
そこでさまざまな指導医の様々な診療スタイルを学ぶわけですが、精神科指導医の発する言葉に、正直あんまりピンとくることがありませんでした。
なぜならば、「あまり無理をしないように」などの抽象的で曖昧な言葉ばかりで、「じゃあどうしたらいいの?」という気持ちになってしまうことが多かったからです。
それ以来患者さんにアドバイスするときは、「具体的にわかりやすく」を大切に診療してきました。
この『精神科医が教える ストレスフリー超大全』には、そんなモヤモヤを吹き飛ばすぐらいの具体的なアドバイスがたくさん詰まっています。
例えば、不安に対するアドバイスとしては、「不安を消す事は簡単です。行動することです」と単純明快に解決策を提示してくれます。
さらに、「ではどういう行動すればいいの?」という問いに対しては
「次の3つの行動をすること。悩みを友人に話すこと、自分の悩みをノートに書くこと、今すぐ外に出て100メートル全力疾走すること」
具体的な数値までを出して何をしたらいいかを教えてくれます。
こんな指導医がいたらなぁとつくづく思うので、何かアドバイスが欲しいと思っている方にはきっと役立つと思います。
3.単なる大全本にとどまらない幸福論を伝える本
普通の辞書的な本は、筆者の主観や思いが入らない本がほとんどですが、この『精神科医が教える ストレスフリー超大全』は違います。
最終章の「幸せを手に入れる方法」という項目では、著者独自の幸福論を伝えてくれます。
樺沢先生によれば、幸福には次の3つの種類があるそうです。
- やすらぎ、癒し等のセロトニン的幸福
- 夫婦や友人、恋人などとのつながりのオキシトシン的幸福
- 成功達成などに関わるやる気のドーパミン的幸福
この幸福には順番が大切なのですが、多くの現代人は、目標達成ばかりを追い求め、つながりの幸福を忘れてしまっています。
コロナ禍で私たちが身に染みて感じた、「ただ相手が生きていてくれる喜び」「ただ自分が存在できる喜び」をわかりやすく力強く伝えてくれます。
まとめ
この本を一言でいえば、「具体的で今日から実行できる、読めば幸福になるメンタル版『家庭の医学』です。
精神科医が外来診療をするときに、アドバイスのために1人1冊参考書として持っていってもいい位の本だと思います。
精神科にかかる前に「心が不調だなぁと思った方」や、受診しているのだけど、なかなか先生がアドバイスもくれない場合に良きガイドになってくれると思います。
大全ですから、全てを最初から読もうとすると大変なので、自分に必要な項目だけを読むことから始めてみると良いでしょう。
樺沢先生、素晴らしい本をありがとうございます。
出典:平光源さまFacebook投稿(2021年6月14日)
評者プロフィール
2022 優秀賞・2021 選考委員MVP賞
平光源(たいら・こうげん)
東北地方でクリニックを開業している開業医。
高校時代、自分の不登校によって医学部受験に失敗。
3年浪人してうつになり、ある本がきっかけでうつから回復した経験をふまえて、約20年精神科医として心のケアに当たる。
支援学校学校医、老健施設往診医、いのちの電話相談医、傾聴の会顧問など、その活動は多岐にわたる。
精神保健指定医、精神科専門医、日本医師会認定産業医。
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