メンタル本大賞2021【選考委員MVP賞】に輝いた平光源さま(精神科医)より書評をお届けします!(書評一覧はこちら)
「会社行きたくない」気持ちがゆるゆるほどける本 加藤隆行 著 小学館クリエイティブ 2021年4月発売 |
書評
今回は、加藤隆行先生の『「会社行きたくない」気持ちがゆるゆるほどける本』(小学館クリエイティブ)です。
この本の良いところを3つに分けて解説しますね。
1.人生の4大テーマの3つが一挙に解決するお得な本
私の患者さんや知り合いに占い師さんがいます。
その占い師さんに言わせると、人生の悩みの4大テーマは、「仕事」「お金」「人間関係」「恋愛」だそうです。
投資という意識があまりない日本人にとっては、「会社に行く=お金を得る」こと。
もし人間関係が嫌で会社に行けないとすると、「恋愛」意外のすべての悩みは、いかに職場の人間関係を良好にして楽しく職場に行けることにかかっています。
本書は60ものケーススタディで、その解決への考え方や方法を細かく分かりやすく教えてくれます。
でも60の裏技を全て覚える必要があるかというとそうではありません。
3.で述べますが、全てはこの本で述べられている「無条件の肯定」という幹から生える枝であり葉っぱなので、一貫性があるので心にスッと入ってきます。
2.テレワークの悩みも含めて最新の働き方に対する悩みも解決する実践的な本
2年前からのウィズコロナの時代から、私たちの生活は一変してしまいました。
働き方もその例外ではなく、テレワークなど新しい働き方が試されています。
顔が見えない、または日常的な触れ合いがないと、人は相手の状況が確認できず不安になり、少なからず「不信感」が芽生えてきます。(中略)
不安は「未来への過度な恐れという妄想」なので、アタマで考えれば考えるほど膨らんでいきますし、考えないよう否定すればするほど追いかけてきます。(中略)
「仲間」意識を作って不具合を解消していくためのルールを丁寧に決めていく。
出典:『「会社行きたくない」気持ちがゆるゆるほどける本』加藤隆行 著/小学館クリエイティブ(p63-65)
加藤先生は、人は相手の状況が確認できないと不安になるのが当たり前で、大切なことはそれを否定するのではなく、あることを前提として認めて許すこと
そして、新たに「仲間意識を作って不具合を解消していくためのルールを丁寧に決めていく」ことで安心、安全を醸成していくことをすすめています。
また「大きな仕事を任されたけどプレッシャーで潰れそうです」(p70)という質問に対しては、「自分が不安であること」をわかっていることが大切だとおっしゃいます。
「自分が不安であること」をわかっていない人は「ただの無謀な人」
と加藤先生らしいユーモアもタップリで、とても楽しく実践的な本に仕上がっています。
実は「自分が不安であるということ」、これをわかっていることが超大切です。
わかっていない人はアラームを無視しているも同然ですから、なんにでも突っ込んでいってしまう「ただの無謀な人」になってしまいます。出典:『「会社行きたくない」気持ちがゆるゆるほどける本』加藤隆行 著/小学館クリエイティブ(p75)
3.自己肯定感が高まるとっても優しい本
私はある学校の学校医をしており、学校に行くと教育相談を受けます。
しかし先生方の多くが、
「私はこんなにがんばっているのに、生徒が理解してくれない」
「私はこんなに一生懸命やっているのに、親がクレームばかりで苦労をちっとも分かっていない」
と自分がいかに肯定されていないかと言うお話を切々と訴えられます。
そんなことを経験しながら私も含めて
「人間て本当に認められたい生き物なんだなぁ」
とつくづく実感します。
加藤先生によれば、人間は、自罰的な悲観タイプと他罰的な反抗タイプに分かれます。
この2つのタイプが部下と上司の関係で組み合わさってしまうと、いわゆるパワハラのような現象が起こります。
しかし、2人はお互いに、そのようなやり方で認めてもらえない自分を守ってきた同志。
本当は2人ともただ愛されたいだけなのです。
ちゃんとしなければ認めてもらえないという、
「条件付けの肯定」から、
「自分が存在していること自体への肯定」という
「無条件の肯定」へ。
この本はその新しい道への道案内を優しくしてくれます。
まとめ
この本を一言でまとめると、
「自己肯定感が高まることで人間関係が改善し楽しく職場に行けるようになる本」
です。
サラリーマンの方だけではなく、人の指導に悩む自営業の方も含めて、働く人すべてに読んで欲しい本です。加藤先生、素晴らしい本をありがとうございました。
出典:平光源さまFacebook投稿(2022年3月28日)
評者プロフィール
2022 優秀賞・2021 選考委員MVP賞
平光源(たいら・こうげん)
東北地方でクリニックを開業している開業医。
高校時代、自分の不登校によって医学部受験に失敗。
3年浪人してうつになり、ある本がきっかけでうつから回復した経験をふまえて、約20年精神科医として心のケアに当たる。
支援学校学校医、老健施設往診医、いのちの電話相談医、傾聴の会顧問など、その活動は多岐にわたる。
精神保健指定医、精神科専門医、日本医師会認定産業医。
あなたが死にたいのは、死ぬほど頑張って生きているから 平光源 著 サンマーク出版 2021年4月発売 |
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