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【書評】『もしあと1年で人生が終わるとしたら?』(評者:寺田真理子/日本読書療法学会会長)

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日本読書療法学会を設立して、読書セラピーの研究と実践を続けてきた寺田真理子さまより書評をお届けします!

メンタル本大賞®2022 エントリー作品

もしあと1年で人生が終わるとしたら?
小澤竹俊 著
アスコム
2021年3月発売

書評

落ち込みがひどいと、死にたいという気持ちが強くなってしまいます。
死について考える時間が一日の大半を占めるようになってしまうのです。

私も、うつがひどかった当時、死ぬことばかり考えていました。

そこから抜け出すきっかけのひとつが、死から逆算する発想でした。

本当に死んでしまうとしたら、やり残したことはないだろうか。
まわりの人に何を残せたら自分の人生に満足できるだろうか……。

そんなことを考え抜いて、「それなら今どういうふうに生きればいいんだろう?」と生きることに目を向けられるようになったのです。

自分らしく生きていくためのきっかけを与えてくれる本

この本では、「もしあと1年で人生が終わるとしたら?」と問いかけることで、今を充実させて生きるように、心を方向転換させてくれます。

3500人を超える患者さんたちを看取ってきた医師の立場から、実際のエピソードを交え、死を前にして人がどんなふうに自分の人生を振り返り、どんな後悔の念を抱くかを教えてくれるのです。

概念としての死ではなく、実際に死をリアルなものとして感じ取ることで、自分の人生を切実な思いで見つめ直すことができるのではないでしょうか。

“どうしてもやりたいことはありますか?”
“これからの人生で何を大事にしたいと思いますか?”
“今までの人生で一番誇らしいことはなんでしょう?”
“どうすれば、生きてきてよかったと思えるでしょうか?”
“自分の心の声は聞こえていますか?”

そんな質問に答えていくことで、自分にとって大切なことに気づき、自分らしく生きていくためのきっかけを与えてくれる本です。

人は存在するだけで、すでに価値を持っている

深く考えてみても、何も見つからないかもしれない……。

そんな不安を抱くかもしれませんが、著者の小澤竹俊さんはこんな温かい言葉を伝えてくれます。

たとえ今は見えてこなくても、あなたの人生、あなたの存在には必ず意味が、価値があります。
そのことだけはどうか、忘れないでください。

出典:『もしあと1年で人生が終わるとしたら?』小澤竹俊 著/アスコム(p26)

小澤さん自身も、人の役に立つ仕事がしたくて医師になったにもかかわらず、患者さんの病気を治すことも苦しみを和らげることもできず、無力感に苦しんだ時期があったそうです。

だけどその経験から、無力な自分でも存在することを赦されていると感じられるようになったのです。

“人は存在するだけで、すでに価値を持っている”

小澤さんが自身の経験から実感したこの思いが、どの言葉の背後にも感じられます。

評者プロフィール

寺田真理子(てらだ・まりこ) 
長崎県出身。幼少時より南米諸国に滞在し、ゲリラによる日本人学校脅迫や自宅の狙撃を経験。東京大学法学部卒業。多数の外資系企業での通訳を経て、現在は講演・執筆・翻訳活動。読書によってうつから回復した経験を体系化して日本読書療法学会を設立し、国際的に活動中。また、うつの体験を通して共感した認知症について、パーソンセンタードケアの普及に力を入れている。著書、訳書多数。日本メンタルヘルス協会公認心理カウンセラー。

心と体がラクになる読書セラピー
寺田真理子 著
ディスカヴァー・トゥエンティワン
2021年4月発売

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