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【書評】『「死にたい」「消えたい」と思ったことがあるあなたへ』(評者:寺田真理子/日本読書療法学会会長)

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日本読書療法学会を設立して、読書セラピーの研究と実践を続けてきた寺田真理子さまより書評をお届けします!

メンタル本大賞®2022 ノミネート作品

「死にたい」「消えたい」と思ったことがあるあなたへ
河出書房新社 編
河出書房新社
2020年11月発売

書評

つらい状況にある読者に向けて、同じ経験を持つ執筆者たちが、考え抜いた言葉を伝える本です。

執筆陣は作家や漫画家、精神科医、学者、俳優、ソーシャルワーカー、YouTuberなどバラエティ豊かです。

想定読者は10代ですが、それぞれの執筆者が読者に真摯な思いで向き合っているため、純度の高い言葉が綴られ、大人の心にも響きます。

苦しくなって行き場がないと感じるときに、心の状態や考え方を変えてくれる言葉にきっと出逢えるはずです。いくつかご紹介しましょう。

生きることなんて、本来は全部ひまつぶしなので、のうのうと生きていていいはずです。しかし、私たちは子どもの頃は学校へ行き大人になったら働くものだと思い込まされています。でもそのレールから外れたら外れたで、暮らしていく別の方法はあります。(ソーシャルワーカー 今井出雲)

出典:『「死にたい」「消えたい」と思ったことがあるあなたへ』河出書房新社 編/
河出書房新社(p50~51)

実は「死にたい」という気持ちは、頭の中だけで組み立てられたものがほとんどです。どういうことかというと、気持ちは死にたがっているけど、実際の自分の身体は死にたがっていない、ということです。「死にたい」という気持ちは身体を巻き込んでいないのです。(精神科医 斎藤環)

出典:『「死にたい」「消えたい」と思ったことがあるあなたへ』河出書房新社 編/
河出書房新社(p114)

不安とは、(他者による)何らかの基準を満たさない自分を「自分が」責めている状態と言えるでしょう。不安に襲われている人は、自分を責めているのは他でもない自分だと自覚することができません。この人は、意識の深層にまで入り込んだ「あなたはこうしなければならない」という観念と、知らない間に一体化し、自分自身を攻撃しているのです。(ライター 小野ほりでい)

出典:『「死にたい」「消えたい」と思ったことがあるあなたへ』河出書房新社 編/
河出書房新社(p126)

自分もダメだし、自分以外の人間もみんなダメ、ホモ・サピエンスはそんなもの、という気持ちを持つようにしたい。ダメな奴が生きていけないなら、人類はもっと何百万年も前に滅んでいただろう。(文筆家 pha)

出典:『「死にたい」「消えたい」と思ったことがあるあなたへ』河出書房新社 編/
河出書房新社(p206)

生きていると悪いことも起こるし、苦しいことに遭うかもしれませんが、良いことに出会う可能性が失われることはありません。人生に明日、何が起こるか分からないというのは、怖いけれど、同時に希望でもあります。(詩人 岩崎航)

出典:『「死にたい」「消えたい」と思ったことがあるあなたへ』河出書房新社 編/
河出書房新社(p210)

文字の大きさなど、うつが重度のときには全体を通して読むのは難しいかもしれません。

そんなときは、パラパラとめくって、自分の感性と合う執筆者のところだけ読んでみることをおすすめします。

各執筆者あたりの分量は8ページと短めなので読み通せるでしょうし、短い中にも、力のある言葉が満ちています。

評者プロフィール

寺田真理子(てらだ・まりこ) 
長崎県出身。幼少時より南米諸国に滞在し、ゲリラによる日本人学校脅迫や自宅の狙撃を経験。東京大学法学部卒業。多数の外資系企業での通訳を経て、現在は講演・執筆・翻訳活動。読書によってうつから回復した経験を体系化して日本読書療法学会を設立し、国際的に活動中。また、うつの体験を通して共感した認知症について、パーソンセンタードケアの普及に力を入れている。著書、訳書多数。日本メンタルヘルス協会公認心理カウンセラー。

心と体がラクになる読書セラピー
寺田真理子 著
ディスカヴァー・トゥエンティワン
2021年4月発売

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