平光源

【書評】『「会社行きたくない」と泣いていた僕が無敵になった理由』(評者:平光源/精神科医)

選考委員の平光源さま(精神科医)より、ノミネート作品の書評をお届けします!
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「会社行きたくない」と泣いていた僕が無敵になった理由
加藤隆行 著
小学館クリエイティブ
2019年9月発売

書評

平光源の書評シリーズ。
今回は、加藤隆行先生の『「会社行きたくない」と泣いていた僕が無敵になった理由』(小学館クリエイティブ)です。

今回もこの本のいいところを3つに分けて説明しますね。

1.「なるほど」と腹にストンと落ちる本

精神科医を長くやっていると、

「この患者さんはここをもう少しこう考えなおしたら生きやすいのになあ。でも、本人はそれを生きる支えのように思っているから伝えにくいなあ」

という場面に良く出くわします。

例えば、事故で子供を亡くされたお母さんが、自分が罪悪感を持ちすぎることでメンタル疾患になり、残された家族が結果的に苦しんでしまう場合などです。

加藤先生は、それにたいして「それって本当はこうだよ」と何の嫌味もなくストレートに答えてくれています。

例えば、

「完璧主義者」とは「完璧」を目指す人ではなく、”不完全な自分を認められない臆病な人”です。

出典:『「会社行きたくない」と泣いていた僕が無敵になった理由』加藤隆行 著、小学館クリエイティブ(P117)

「怒り」とは、本来は「防御」のためのエネルギーです。つまり【自己防衛隊】。(中略)
境界線を引くには、かならず適切な「怒り」が必要です。

出典:『「会社行きたくない」と泣いていた僕が無敵になった理由』加藤隆行 著、小学館クリエイティブ(P167-168)

など、「完璧主義はすごい」とか「怒ってはいけない」という世の思い込みをひっくり返してくれます。

それを拒否感なく受け入れられるのは、ひとえに著書の加藤先生が、実際に会社で生きづらくて苦しんだ経験があり、それを一つ一つ克服され、たどり着いた言葉だからだと思います。

是非「なるほど」「そういうことか」と本書を手に取って、腹に落ちる感覚を味わってほしいと思います。

2.会社でのコミュニケーションの取り方のヒントがたくさん詰まった本

この本の第5章には、職場の上司との付き合い方がタイプ別に書いてあります。

例えば、「上司が細かい粗ばかり指摘してきてウンザリする」「上司に意見を言うと激怒され扱いに困る」などの内容はとても具体的で実践的。

キレる上司に関しては、「相手の感情の面倒をみない」ことです。

上司がキレるのは上司の問題であって、アナタの問題ではない。
アナタが否定されているのではないし、アナタの価値とも関係ない。怒りたい人は怒らせておいてあげましょう。

別に上司と友好関係を結ぶ必要がなければ、境界線を意識してテキトーに受け流しましょう。

また、「怒っている人は困っている人」と考えてみましょう。

出典:『「会社行きたくない」と泣いていた僕が無敵になった理由』加藤隆行 著、小学館クリエイティブ(P180-181)

このように対処法を教えてくれて、上司との境界線を意識して適当に受け流すことを薦めています。

「そんなこと出来るかなあ」と思ったあなたもきっと大丈夫。
最初は無理でも、繰り返し練習していくときっと上手に対処できるようになるはずです。

なぜそう言えるかは、自分が無敵になれるから。詳しくは、3.で説明しますね。

3.「無敵」の本当の意味が分かる本

みなさんは、無敵というとどんなイメージがありますか?

私は最初にこの本を読んだときに、正直「無敵になるなんてホンマかいな?」と疑問を持ちました。

それは、どんなセラピーやワークをしても、ダイヤモンドのような傷つかないメンタルを得ることは不可能だと思ったからです。

でも、この本を最初から読み始め、そして最後の章を読んでその疑問が氷解しました。

アナタの自己否定は、ほんとうは、愛されたい、喜ばせたいという、アナタの「優しさ」や「愛」から生まれたのです。

出典:『「会社行きたくない」と泣いていた僕が無敵になった理由』加藤隆行 著、小学館クリエイティブ(P202)

(親に)愛されたい、喜ばせたいという思いが強すぎて、「愛されない」から悲観して、自己肯定感の低い自信のない私が生まれたこと。

「頑張っても認められない」と反抗して、「今の自分じゃだめだ。もっと、もっと」と完璧な自分に憑りつかれて、自分にも相手にも完璧を求めるパワハラ上司が生まれたこと。

部下も上司も、加害者も被害者も、実はおんなじ「愛されたい」「認められたい」という自分の中にあるシンプルな思いに動かされていること。

そして「私なんか愛されない」と諦める道と、「愛が足りない。もっと」と努力の無限ループにおちいる道が出来てしまうこと。

あの上司も、あの部下も、あのお客も、みんなみんな自己否定をしてきただけで、「敵」ではなかったのです。
だから、もう自分を否定するのはアナタで終わりにしましょう。

出典:『「会社行きたくない」と泣いていた僕が無敵になった理由』加藤隆行 著、小学館クリエイティブ(P205)

本当は同じものなのに、自己否定の方法が違うために表現型が変わり、それがお互いに敵のように見えるだけであることが書かれています。

つまり、「無敵」とは誰よりも強くなることではなく、本当にみんなただ、「愛されたかった」仲間同士。
この世には敵がいないということに気が付かせてくれるのです。

これが、「無敵」の本当の意味です。

まとめ

この本を一言でまとめると、

「職場でのコミュニケーション論の枠を超えた真の無敵になれる本」。

自己肯定感の低い方や、パワハラ上司に悩まされている方に是非お勧めしたいです。
加藤先生、素晴らしい本をありがとうございます。

出典:平光源さまFacebook投稿(2021年7月29日)

評者プロフィール

メンタル本大賞 選考委員
平光源(たいら・こうげん)

東北地方でクリニックを開業している開業医。
高校時代、自分の不登校によって医学部受験に失敗。
3年浪人してうつになり、ある本がきっかけでうつから回復した経験をふまえて、約20年精神科医として心のケアに当たる。
支援学校学校医、老健施設往診医、いのちの電話相談医、傾聴の会顧問など、その活動は多岐にわたる。
精神保健指定医、精神科専門医、日本医師会認定産業医。

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