昨年、選考委員としてご協力いただいた川本義巳さま(公認心理師&メンタルコーチ)より、2022ノミネート作品の書評をお届けします!
なぜ、あなたの思っていることはなかなか相手に伝わらないのか? 西剛志 著 アスコム 2021年6月発売 |
書評
メンタル本大賞2022エントリー作品の紹介です。
今回は『なぜ、あなたの思っていることはなかなか相手に伝わらないのか?』です。
西剛志さん著でアスコムさんから出ています。
この本の感想をひとことであらわすと
「私たちは違っている。ただそれだけだ」
です。
これはNLP(神経言語プログラミング)を学ぶときに基本前提として出てくる言葉ですが、この本でなぜこのキーワードが浮かんだのか。
それがまさにこの本がNLPと同じ観点で書かれているからです。
この本はタイトルからもわかるようにコミュニケーションの本です。
通常、コミュニケーションの本というと、カウンセラーや精神科医、コーチといった人たちの専門ですが、著者の西さんはなんと脳科学者です。
そうこの本は「脳の働きから見たミスコミュニケーション」について書かれています。
この本ではまず「うまくいく人といかない人の最大の違いはコミュニケーションにある」としています。
そしてコミュニケーションスキルが高いということは話が面白いではなく
研究の結果から判明したこと、それは
「自分の脳と相手の脳が見せる世界が違うということをしっかりと認識している人」
がコミュニケーションスキルが高いということ。
出典:『なぜ、あなたの思っていることはなかなか相手に伝わらないのか?』西剛志 著/アスコム(p4)
としています。
つまり、相手が見ている世界と自分の見ている世界の違いがミスコミュニケーションになっているので、その違いを理解することでミスコミュニケーションを避けることができるということですね。
それを知るためにこの本ではいくつかクイズが出てきます。
それに答えるときは「これってこうじゃん」と自信満々なのですが、解説を読むと「あーそういうことか」と伝わらない理由がわかったりします。
個人的に興味を惹かれたのが、脳タイプの話。この本で脳タイプは3つに分かれるとしています。
タイプ1 視覚を優先する視覚タイプ
タイプ2 聴覚を優先する聴覚タイプ
タイプ3 触覚、味覚、嗅覚などを含めた体の感覚を優先する体感覚タイプ
ちなみに日本人は視覚タイプ44%、聴覚タイプ18%、体感覚タイプ38%だそうです。
このタイプが何を意味するかというと、「タイプによって同じものを見ても脳の処理が違う」ということ。つまりここに「伝わらない原因」があるんですよね。
他にも右利きと左利きの認知の違いや、男女の認知の違いなどにも触れています。
特に「女性は男性よりも細かい色を識別できる」そうで、特にピンク系の色の識別に関しては、男女で10倍近い差があるとか。
そういえば、奥さんと買い物に行ったときに「どっちの色の方がいい?」とか聞かれることがあるのですが、毎回「違いがわからん」と答えていたっけ。
なるほど話が伝わらないわけだ(笑)
最後の章のタイトルが「結局人は、わかりあえない生き物である」なのですが、なんかそう言われると身も蓋もないなあと思いながらも
「そっか。わかりあえないのが当たり前なんだ」
と思えば随分人間関係は楽になる気もします。
ただご心配なく。
この本はそういうことで終わらせていません。
「どうすればよくなるのか」そこについても触れています。
最初から最後まで読むことで大きな気づきがある本です。
評者プロフィール
メンタル本大賞2021 選考委員
川本義巳(かわもと・よしみ)
三重県松阪市生まれ津市在住。
うつ専門メンタルコーチ/公認心理師/一般社団法人エフェクティブコーチング協会代表理事。高校卒業後、SEとして20年以上メーカーに勤務。大手IT企業への転職を機にうつ病を発症、寝たきり状態になり、1年2か月の休職を余儀なくされる。2007年コーチングに出合い、うつ病を完全克服。それを機にうつ専門のプロコーチになることを決意。コーチング、NLP、アドラー心理学、エリクソン催眠を学び、それらを応用したメソッドを開発し、2010年個人コーチングを開始。自治体や上場企業でのメンタルヘルス研修講師や精神科クリニック、児童相談所、教育委員会での相談業務等でも経験を積み、10年間で1万件以上の相談、指導を行っている。
1日3分でうつをやめる。 川本義巳 著 扶桑社 2019年10月発売 |