メンタル本大賞®創設の2021年より選考委員としてご協力いただき、2022年はノミネート著者として<特別賞(著者MVP賞)>に輝いた 川本義巳さま(公認心理師&メンタルコーチ)より書評をお届けします!
かくれ繊細さんの「やりたいこと」の見つけ方 時田ひさ子 著 あさ出版 2022年5月発売 |
書評
HSPという名前を始めて聞いたのは、多分今から10年ほど前のことだったと思います。
ある人が「自分はHSPなんです」と言っていたんですよね。
そのときは「HSPって何?」というのが正直な感想でした。
その後、その人から詳しく話を聞いたのですが「それって抑うつ状態とか発達障害とかじゃないのかな?」としか思いませんでした。
同時に「きっとこれまでの流行語と同じでそのうち言わなくなる」とも思っていました。
でも実際は10年経った今でもHSP関連の話題は豊富です。
それだけ共感する人も多いし、研究している人も多いということですよね。
改めて「すみませんでした」と言いたいです。
さて、今回紹介する本は「かくれ繊細さん」がキーワードです。
繊細さんはHSPの人のことを表しているので、タイトルを見てHSP関連の本だと感じました。
でも「かくれ繊細さん」がよくわかりません。
そのことについて著者の時田さんはこう書いています。
「かくれ繊細さん」とは、この「HSP」の中でも、共感能力が高く繊細で傷つきやすい側面(HSP)を、外向性、社交性、積極性、好奇心旺盛さという別の側面(HSS:high Sensation Seeking)によって表面化しないようにカバーしている人たちです。
出典:『かくれ繊細さんの「やりたいこと」の見つけ方』時田ひさ子 著/あさ出版(
なるほどそういうことなのですね。
確かにコーチングをしていても、こういうタイプの人に出会うことがしばしばありました。
繊細な部分と社会性・協調性を高く持つ部分が両方あるわけですからそりゃあしんどいはずですよね。
時田さんはそんな「かくれ繊細さん」のことをとても優しく愛情深く解説してくださっています。
例えばこんな感じ。
- 「感受性の強さ」を隠さなければ生きられなかった
- 「刺激を求める好奇心」と「まわりの反応に縮み上がる繊細さ」の両方を扱いきれない
- かくれ繊細さんは、いつも必死で疲れている
多分これを読んで「私のことだ」と思った人は、時田さんの表現に救われたんじゃないかな?
それくらい「かくれ繊細さん」への愛情を感じます。
そしてこの本は、そんなかくれ繊細さんだからこそ持っている才能についても説明をしてくれています。
その中に「気遣い・相手に合わせる才能」というのがありますが、これってマイナス的に考えると「相手に合わせすぎて疲れる」だと思うんですよね。
それをこの本ではうまく、優しく、そしてわかりやすく伝えてくれます。
第三章でいよいよ「やりたいことの見つけ方」が出てきますが、こちらも優しく、わかりやすく、ワークという形式で紹介されています。
読んでみて、ほっこりすると同時に実際にチャレンジして実感を得ることができるお得な本です。
オススメ。
評者プロフィール
メンタル本大賞2022 著者MVP賞
川本義巳(かわもと・よしみ)
三重県松阪市生まれ津市在住。
うつ専門メンタルコーチ/公認心理師/一般社団法人エフェクティブコーチング協会代表理事。高校卒業後、SEとして20年以上メーカーに勤務。大手IT企業への転職を機にうつ病を発症、寝たきり状態になり、1年2か月の休職を余儀なくされる。2007年コーチングに出合い、うつ病を完全克服。それを機にうつ専門のプロコーチになることを決意。コーチング、NLP、アドラー心理学、エリクソン催眠を学び、それらを応用したメソッドを開発し、2010年個人コーチングを開始。自治体や上場企業でのメンタルヘルス研修講師や精神科クリニック、児童相談所、教育委員会での相談業務等でも経験を積み、10年間で1万件以上の相談、指導を行っている。
1日3分でうつをやめる。 川本義巳 著 扶桑社 2019年10月発売 |