【メンタル本大賞®2023】
ノミネート作品 審査コメント
2023 ノミネート作品
評価結果・作品別コメント
1位 | 30 pt | あなたの「しんどい」をほぐす本 Poche 著/もくもくちゃん イラスト KADOKAWA |
2位 | 20 pt | マンガでわかる 休職サバイバル術 加藤高裕 著、ミヨシ 漫画 主婦の友社 |
3位 | 10 pt | がんばらにゃい生きかた Jam 著 笠間書院 |
30pt:『あなたの「しんどい」をほぐす本』
あなたの「しんどい」をほぐす本 Poche 著/もくもくちゃん イラスト KADOKAWA 2022年12月発売 |
評価ポイント
- しんどい人を全肯定してくれる優しい本
- ポジティブに考えるのではなく、ネガティブのままそのままを包み込んでくれる
- しっかりとした心理のバックボーンが感じられる
評価理由
一読して豊富なカウンセリング経験に裏打ちされた本だと感じました。
それは、書き手の考えを伝えるよりも前に、読み手の「しんどさ」を丁寧に拾い上げ、そのあなたでいいんだよと全肯定してくれる優しさから来ているのだと思います。
著者Pocheさんのいつもの態度と言葉がそのままこの本に綴られているのだと感じました。
さらにその一言一言には、ただの経験値だけでない、心理についてのしっかりとしたバックボーンが読み取れます。
自分も同業者のカウンセラーなのですが、こんなふうにクライアントに寄り添えたらいいなと思える本でした。
20pt:『マンガでわかる 休職サバイバル術』
マンガでわかる 休職サバイバル術 加藤高裕 著、ミヨシ 漫画 主婦の友社 2022年11月発売 |
評価ポイント
- 休職から復職まで何があるかをひととおり説明
- 実際に休職・復職を経験したマンガ家さんが、実際に休職・復職した人を取材
- マンガで読みやすい
評価理由
これまで休職や復職に関する本は、当然とは思いますが、医療従事者や会社の労務管理者向けに書かれた堅苦しい本ばかりだったと思います。
この本は、休職の当事者と、企業側の両方に向けて書かれた本で、しかもマンガで読みやすい。今までにあまり見たことない本だと思いました。
いわゆるメンタル本と呼べるかどうかは迷いましたが、メンタルを追い込まれてしまう人の中には、休職したら大変なことになる!と休職後に復帰できるのか怖い!といって休めない人も少なからずいると思います。
そんな人に「ただただ休め」というよりも、休職とはどういうことなのか、メンタルを止む理由はなにか、どんなトレーニングをしていくのかなど、復職までの道筋を、わかりやすく教えてくれるのは、休むために背中を押してくれるのではないかと思います。
もちろんすでに休職されている方には、これからの方向性を教えてくれる手助けになると思います。
豊富なマンガも含めての200ページ程度、薄めながら内容は充実しています。
復職することがすべてではないですが、新しい切り口の本として評価したいと思いました。
10pt:『がんばらにゃい生きかた』
がんばらにゃい生きかた Jam 著 笠間書院 2022年5月発売 |
評価ポイント
- メンタルがしんどい時にも読みやすい
- 本来の自分を取り戻すためのヒントがいっぱい
- あいかわらず猫イラストがかわいい
評価理由
耳障りのいいことが書いてあるイラストが可愛いだけの本は、たくさん書店に並んでいます。
しかし『多分そいつ、今ごろパフェとか食ってるよ。』(サンクチュアリ出版)から続くJamさんのシリーズは、さすがにずっと売れ続けているだけの理由があるな、と読むたびに思います。
この本は、シンドいメンタルの人向けというよりかは、日常生活に支障がないレベル人向けに書かれた本だと思いますが、毎ページ毎ページにハッとさせられる言葉が並んでいます。
ガンバリすぎてしまうがゆえに怒りや不安といった感情にとらわれてしまっている人が、自分を否定することなく、本来の自分を取り戻すためのヒントがたくさん詰まっています。
今回は章立てやテーマを設けずあえて、どこから読んでもいい、という構成にしたというのも、なるほどと想いました。
そしてやっぱりイラストの力は偉大ですね。
手にとりやすさと読みやすさ、ココロを軽くしてくれる実用感がそろった良書と思います。
総評
メンタル本には大きく分けて2種類あると思っています。
ひとつは「シンプルで優しく読みやすいもの」、もうひとつは「理論しっかり苦しみから抜け出す方法を書いたもの」の2つです。
どちらもそれぞれの役割があると思いますが、選考委員をさせていただいていて思うのは、最近は、前者のようにシンプルながら内容が充実した優良な本が本当に増えてきたな、という想いです。
以前はシンプルな本は、「いいこと」書いてあるけどそこまでだったり、シンプルさがシンプルすぎて読み手に届いてないみたいな部分があった気がします。
また、これは結局健常者向けでメンタルがシンドい鬱的な人には味気ないなと感じるものが多かった。
それが最近は、「シンプルだからこそシンドさにスッと入ってくる」ようになった気がしてます。
それらの本に書かれていることは共通して「自己受容の大切さ」なのだと思いますが、たぶん時代が成熟し、皆が共通意識としてそれを求めるようになったからこそ、言葉の純度が上がってきたのではないかな、と思っています。
今回は、選考委員として、通常自分では手に取らないものも含め、たくさんの本に目を通させていただくことができました。
そのおかげさまで、「メンタル」というものに対して、時代はいい方へ優しい方へ向かっているなと感じることができました。
ご協力ご献本いただいた著者様・出版社様、すばらしい本たちをありがとうございました。
またこのような場に参加させていただけけることに感謝します。ありがとうございました。
選考委員プロフィール
加藤隆行(かとう・たかゆき)
ココロと友達オフィス代表 心理カウンセラー
幼少より病弱だったこともあり、劣等感が強くコミュニケーションの苦手な子に育つ。大手通信会社での激務の中、30歳のとき体調が激烈に悪化。3度の休職と入退院を繰り返し、カラダだけでなく次第にココロとも向き合うようになる。2015年に退職し、心理カウンセラーとして独立。「自分自身と仲直りして優雅に生きる」をコンセプトに、東京を中心に全国でカウンセリングやセミナーを開催。愛称は「かとちゃん」。
「どうせ自分なんて」と思う君に、知っておいてほしいこと 名越康文 監修/加藤隆行 文 小学館クリエイティブ 2023年8月発売 |
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