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【メンタル本大賞®2023】審査コメント(佐々木戸桃/文筆家・セラピスト)

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【メンタル本大賞®2023】
ノミネート作品 審査コメント


【選考委員】
佐々木戸桃
(文筆家・セラピスト)

2023 ノミネート作品

メンタル本大賞®2023 ノミネート作品一覧メンタル本大賞®2023 ノミネート7作品

 

 

評価結果・作品別コメント

1位 30 pt 「自分の感情」の整えかた・切り替えかた
高井祐子 著
大和出版
2位 20 pt かくれ繊細さんの「やりたいこと」の見つけ方
時田ひさ子 著
あさ出版
3位 10 pt がんばらにゃい生きかた
Jam 著
笠間書院

30pt:『「自分の感情」の整えかた・切り替えかた』

『「自分の感情」の整えかた・切り替えかた』高井祐子 著(大和出版) 「自分の感情」の整えかた・切り替えかた
高井祐子 著
大和出版
2022年5月発売

評価ポイント

  • すぐ実践でき楽になれる身近なスキルに満ちている。
  • 読者層を問わない。
  • 『生きる』を軸に、すべての人々に寄り添っている。

評価理由

無意識にややこしくしがちな感情の扱い方を分かりやすく優しい言葉で解説しており、「認知行動療法」とありつつも、気構えなく読み進めることができる一冊だと感じました。
CBTは臨床現場に足を運んで専門家と一緒でないと実践できない、というイメージはまだ強めにあると思うのですが、“おわりに”に綴られた最後の一文に、著者の心が詰まっています。
キーワードは、「一緒に」「いつもいつでも」「応援」…この語りかけは、CBTを実臨床で受けにくい状況の方にも、いますぐできることこそ惜しみなく伝えたい気持ちの顕れともとれますし、自然とセルフケア継続へ導くものでもあるでしょう。

また、読者層を問わない、ということも感じました。
例えば、専門家が他者のケアをするうちに、自分においてうっかりないがしろにしてしまう面もふわりと気づきをもたらすような掬い方がなされています。
全体的に、2022年度大賞「セルフケアの道具箱」(伊藤絵美 著、細川貂々 イラスト/晶文社)をどこか彷彿とさせるような、ゆるやかながらも芯のあるエネルギーが漂っているのがすてきでした。

終盤には『生きる意味・死生観』について綴られていますが、デリケートであり核でもあるそこへ至るまでに、じっくりと段階を踏み練り上げられた構成がなされているのも、読んでいて心に負荷を掛けません。
内容はもとより、読者への寄り添い方と配慮はメンタル本にふさわしいと感じ、一位とさせていただきました。

20pt:『かくれ繊細さんの「やりたいこと」の見つけ方』

『かくれ繊細さんの「やりたいこと」の見つけ方』時田ひさ子 著(あさ出版) かくれ繊細さんの「やりたいこと」の見つけ方
時田ひさ子 著
あさ出版
2022年5月発売

評価ポイント

  • 人の特性を細やかに解説し、誰しもがどこかで抱くであろう不安や悩みを速やかにほどくプロセスが具体的に綴られている。
  • 自己分析⇒スキル⇒ワーク⇒コツ、と、構成が明確で受け取りやすい。
  • 著者の自己開示エピソード部分は特に一定層の共感を呼び、読者を「1人じゃない・楽になる」と導くものと想定できる。

評価理由

しんどいけれどもそのしんどさを見せずにいる、もしくは、見せ方が分からない、という方々は潜在的に多数いらっしゃいます。
その辛さを日常にて表すことなく「どこでなにをどう折り合いをつければいいか?」で悩み続け、諦めも多い人生が当たり前となっているかもしれない層の『声なき声』をきっぱりと代弁している潔さが印象的でした。

ゆったり・ゆるく・おだやかに…が、メンタル本には多いものですが、この書はどこかラジカルな構成がなされ、一気読みして一気に腑に落ちる、という読者も多くいると思われますし、この一冊を読む行動そのものが『セルフセラピーになる』と感じています。

心理を基盤にしたカテゴリーに、こうした寄り添い方や伴走本がある、ということそのものを評価したく、二位とさせていただいた次第です。

10pt:『がんばらにゃい生きかた』

『がんばらにゃい生きかた』Jam 著(笠間書院) がんばらにゃい生きかた
Jam 著
笠間書院
2022年5月発売

評価ポイント

  • 文字が読みにくいコンディション層に配慮した『どこから読んでもいい』構成。
  • 読み手の心がすぐ楽になるように、との願いによる文言とイラストの熟度。
  • 人生で遭遇するあらゆる困難な状況に触れつつも、深刻さこそを極力省き、心の温度がすっと上がるユーモラスさがある。

評価理由

著者のJamさんが織りなす、『この本を通して「辛い人がすぐ楽になれるように」という願い』の一貫性がとても響いた一冊です。
ことばやイラストは平易に見えますが、何となく眺めている中でも、ふと(あなたはどう思う?)と不意に気づきをもたらすページもあり、バラエティに富んでいました。
どこを開いても何かしらのヒントが受け取れるため、“すぐさましんどい脱出書”として拝読した次第です。

中には、イマドキ事情を織り交ぜて笑わせてくれたり、何も考えずページを開いただけで目に飛び込むイラストにより自然と楽になる趣向もちりばめられているので、段階を踏んで楽になりたい読み手には若干物足りなさはあるかもしれません。
裏を返せば、日々悩みつつも他に打ち明けにくい若年層には特に響き救いとなりうると感じ、三位とさせていただきました。

総評

ビジネス書か心理読み物か ー 大好きな書店を訪れる度に棚の配置は変わり、書籍の入れ替わりも著しい中、「心が楽になる本の定義や判断」こそが市中では難しい昨今だと感じます。
さなか、今年度エントリーされた9冊それぞれに『伝えたい、そして孤立を覚える人や不安で一杯な人を1人でも減らしたい』という熱意が込められていたことを体感できたのが、とても心に残る活動でもありました。

職業柄、一冊を生み出すプロセスを知っており、かつ、メンタルケアにも従事する身としては、著者様・編集者様・出版社様の並々ならぬ思いをわたくしなりに汲み取らせていただきつつ、どの書からもあらゆる角度からの新たな学び・気づき・喜びをいただきましたことに、心よりお礼申し上げます。

以下、エントリーされながらも残念ながらノミネートに至らなかった二冊の著者様へ、この場をお借りしてお伝えさせていただきたく思います。

ちゃんちき堂のてつさんへ。
ご自身のエピソードを惜しみなく語られたご著書に励まされる読者はとても多いこととお見受けします。
パートナーさんが撮られたお写真からは特に、『生きること・いのち』を感じさせていただきました。
視覚から受け取れる(心の調整)をいただき、どうもありがとうございました。

ローランドさんへ。
太ゴシック体で力強く発せられた幾つものお言葉は、読書するエネルギーのない状態でもすっと受け取れるものがありました。
また、そこここに、読み手を潜在的に大きくくるむ深い愛が満ちていました。
コロナ禍によるご苦心もおありの中、とてもすてきな一冊をどうもありがとうございました。

わたくしごとでまことに恐縮ですが、今年度活動期間中は公私共に突如大きな出来事が立て続けに訪れ、酷暑も相まって、心身の状態が決して良好とは言い難い、いわば『メンタル本を至急要する当事者』の側面が強く拝読を進めておりました。
久々にいっとき文字が読みにくい状況にも陥ったため、マーカー部分やイラストに頼らせていただいたこともありました。

そして身も心も救われ今こうしてこの文面を書かせていただいているのは、メンタル本大賞に関わるすべての皆様のおかげでもあります。
この賞と活動があり、今年度わたくしが選考委員としてかろうじて参加させていただけたことに感謝し、メンタル本大賞を一市民としても応援しつづけながら、さらに多くの方々の元へ届くよう、情報の拡散も楽しみつつ続けていきたく思っております。

最後になりましたが、エントリーなさり献本くださった編集者様からのお手紙一つ一つに感動し、大切に保管させていただいております。
自身の名が入った手紙は、数週間ほど寝込み一日が終わってしまう状況が続いた際、(わたしは選考委員である)という意識を改めて掘り起こしてくださり、中断せざるを得なかった選考作業を再始動するためのエネルギーをもくださいました。
お一人お一人にお礼ができぬままの失礼をお詫びするとともに、重ねてお礼を申し上げます。

年度区切りはありつつもメンタル本大賞は通年のもの…一年を通して、この活動に関わるかた・応援するかたが今後一層増えていきますように。
そして、アフターコロナのえも言われぬ現混沌において、メンタル本大賞を通じて、まことの笑顔が広がりますことを切に願っております。

選考委員プロフィール


佐々木戸桃(ささき・ともも)
東京都出身。大学時代、学内文芸誌主宰を機に、自身の詩集(既に絶版)を出版。卒業後、広告代理店に入社し、クリエイティブ部門で製薬会社、文具メーカー等の販促ツール制作に携わる。徐々に組織内での振る舞いに疲れ3年後に退職、以降ライターとして独立。実用誌・ムック・書籍の取材執筆編集業務をする内に、関わる人々から公私問わず相談を受け続けていると気づき、独自のセラピー・カウンセリングスタイルを見出して本格的に活動開始。現在は、主に自身と同じHSP気質の医療・介護従事者クライアントのケアに注力しつつ、文筆活動もゆるりと継続中。

おもな著書
『ユニクロ★デコ・リメイク』佐々木戸桃、五十嵐友美 著(雷鳥社)
『NHKサラメシ あの人が愛した昼めしの店』NHK「サラメシ」制作班 編(主婦と生活社) ※編集協力

他、実用誌・ムック約200冊に、取材、編集協力クレジットあり。

公式サイト・SNS
X アカウント(@tomomo_journal)

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