セラピストとして、自分と同じHSP気質の医療・介護従事者クライアントのケアをしながら、文筆活動をされている佐々木戸桃さまより書評をお届けします。
書評『どうする?家族のメンタル不調』
身内や大切な人が心に不調を抱えた際、もっとも近くにいる『家族』が直面する事例が、大変リアルにQ&A式で綴られている一冊。
対象読者は、精神疾患と向き合う家族をケアするかた、と想定されますが、もし心と身体にゆとりがあれば、疾患と向き合っている最中の当事者がご自分のペースでじっくりと読んでもよいと思います。
現にわたしは、発売時ちょうどメンタル不調のさなかにおり、かつセラピスト業務も同時進行していたため、当事者・ケア者双方の視点で読み、家族や周囲がしてくれたこと・自身が仕事でしていること、を振り返りつつ答え合わせとなり、「よく頑張っていますね」と言われた気がして、涙が止まらなくなりました。
著者は「はじめに」の部分できっぱりと、
私はきれいごとをお伝えするつもりはありません。
厳しい現実を、お話しようと思います。出典:『どうする?家族のメンタル不調』井上智介 著/集英社(8ページ)
と断言しています。
強い覚悟をもって書かれた内容は、精神科医だからこそ明かすことのできる貴重なものでしかありません。
その実、もっとも近しい家族が精神疾患の診断を下された際、その当事者と共に生活する上で徐々に複雑化されると思しき24時間のあらゆるシーンを元に、「もうどうしたらいいかわからない」という状況や、ケア者のいたたまれぬ心情と身体的エネルギーの負荷を汲み取り、具体的になぞらえつつの丁寧な解説と、即物的アドバイスをくれています。
ゆえに、心を病んだ家族への対処法が分からず今すぐ必要!と感じるかたはもちろん、日頃から第三者のケアを仕事とされているかたにも幅広く役立つ本でもあるでしょう。
井上智介先生のおすすめ著書ピックアップ
ノミネートされたことを知ってからは、メンタル本大賞®︎の活動そのものに心を動かされました。
読者投票でメッセージを送らせていただいたり、クラウドファンディングで支援させていただいたことなどがきっかけかと思いますが、ご縁(選考委員のオファー)をいただき、本当に感謝しています!
こちらこそ、活動をご一緒していただけて大変感謝しております!
ご存じない方のために、ノミネートされた作品(下記)を改めてご紹介いたしますね。
『職場の「しんどい」がスーッと消え去る大全』
井上先生・編集者インタビュー、書評、内容図解、読者コメントはこちら
職場の「しんどい」がスーッと消え去る大全 井上智介 著 大和出版 2019年8月発売 |
『この会社ムリと思いながら辞められないあなたへ』
井上先生コメント、編集者インタビュー、書評、表彰レポートはこちら
この会社ムリと思いながら辞められないあなたへ 井上智介 著 WAVE出版 2021年9月発売 |
その後も井上先生は精力的に執筆なさっていて、改訂された文庫版を含めると14作品の著者でいらっしゃいます。
そこで、ノミネート作品以外から2作品を追加でご紹介したいのですがよろしいでしょうか?
『職場のめんどくさい人から自分を守る心理学』
『職場のめんどくさい人から自分を守る心理学』
井上智介 著(日本能率協会マネジメントセンター)
もおすすめです!
【祝・重版決定🎉】
『職場のめんどくさい人から自分を守る心理学』が5刷りとなりました😭
精神論ではなく、現場で苦手な人とうまく距離とりながら自分の心を守る方法をかなり具体的に書いています🍀
本書を多くの人に支持してもらって素直にうれしいです🙇♂️
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— 井上智介 (精神科医 & 産業医) (@tatakau_sangyoi) August 14, 2022
タイトルには、はっきりと「めんどくさい人」とあります。
これに(いるいる)と、すかさずご自身の職場の《だれか》を思い浮かべたとして、ですが、日頃からあなたはその人とどう接し、どんな気持ちを抱いているでしょうか。
もしかして無理をしてはいませんか?
この書籍では、6章に分けて、具体的なパターンとその対策、が記されています。
『なぜその人はめんどくさいのか?』においても細かく言及されており、もし時間や精神的ゆとりがなければ、まずは太ゴシック体にマーカーが施されている部分を読むだけでも、何かしらのヒントを得られることと思います。
ちなみに、一部センセーショナルに感じられる箇所もありますが、それは著者があなたを守りたいがため、あえて強めの口調にて伝えている“自分を守るためのテクニック”と受け取ってみてください。
本書は、職場の人間関係についてのみならず、『職場でのストレスをためないためのセルフケア』の内容にて締めくくられており、この章は仕事以外の日常生活にも活かせる内容となっています。
例えば、
60点で自分に「合格!」をあげよう(224ページ)
自分で自分を否定してしまう時は(239ページ)
落ち込んで自分を否定してしまっても「こんな時があってもいい」と自分を許してあげましょう。(241ページ)
などです。
本書はグリーンで統一されており、どんなにしんどくても読み疲れを覚えにくい仕様です。仕事にまつわる辛さを少しでも緩和したいときにお勧めです。
『がんじがらめの心がラクになる 「呪いの言葉」の処方箋』
『がんじがらめの心がラクになる 「呪いの言葉」の処方箋』
井上智介 著(ナツメ社)
を読むと、気づきや勇気を得られ、すっと心が軽やかになれるかもしれません。
【新刊紹介】
「迷惑かけちゃいけない」
「一番にならなきゃ」
「あなたのためだよ」
こんな言葉に💬
振り回されていませんか?🙄それって
呪いの言葉かも…うまくつきあう方法を
井上智介先生(@tatakau_sangyoi)が解説‼#呪いの言葉の処方箋
好評発売中‼https://t.co/nJvU41KVoX pic.twitter.com/cDinQOD4B3— 株式会社ナツメ社 (@natsumepub) July 14, 2022
表紙にある「呪い」の書体をよく見ると、お化け感のあるおどろおどろしいデザイン…ながらも、けっして怖くはなく、むしろユーモラスなムードが漂い、愛らしいイラストと明るい水色が目を惹きますから、手に取る事にためらう心配こそ無用です。
日常生活において、無意識に自分を縛っている『言葉』に、思い当たる節はありませんか。
本書は全6章で成り立っていますが、前半の3章では自分を責める元となりやすい「呪いの言葉」とされるものをカッコ付けで記し、見開きで説明されています。
それは、大きく分けて2パターンであり、「自分で自分を縛る言葉」と「他から向けられ自分を縛ってしまう言葉」です。
後半の3章は、「呪いの言葉」が生まれる仕組みの解説に始まり、そうした言葉や思考との向き合い方をやさしく伝授してくれています。
その流れで専門用語がいくつも出てきますが、もしも聞き慣れていなくとも、要所には太ゴシック体にマーカーが引かれ、分かりやすく説明されていますから安心です。
全編を通して印象的かつ頼もしいのは、著者の姿をしたイラストのふきだし。
イラストの井上先生は各テーマ下に、フォローする《ひとこと》をさり気なく発しています。
そこに共感できたり、ハッとしたり…。
もし疲れていて文字を読むゆとりすらないなら、眺めるだけでもだいじょうぶ。気づきや勇気を得られ、すっと心が軽やかになれるかもしれません。
巻末には『さくいん』があり、気になる部分や何度も読んで心に刻みたい部分をさっと開けるのが特長です。
《参考文献》には、井上先生の著書が5冊記されています。そこから選んで読むのもお勧めです。タイトルにピンと来た作品は、きっとご自身に寄り添ってくれることでしょう。
さいごに
「患者さんばかりでなく、目にみえぬ苦しむ人々をも1人でも多く、せめて本を通して救いたい」
との想いが伝わってきます。
そして、精神科医・産業医としてのご経験をふまえて書かれているので、心身の状態がよくない方でも読みやすく、すぐに役立てられるように工夫が凝らされています。
今後とも井上先生の作品に注目していきたいですし、メンタル本大賞®の選考委員として微力ながら発信を続けていきたいと思います。
今後とも本の力を信じて、しんどい・生きづらいと感じて苦しんでいる方々の救いのきっかけとなれるよう情報を発信していきましょう。
評者プロフィール
佐々木戸桃(ささき・ともも)
東京都出身。大学時代、学内文芸誌主宰を機に、自身の詩集(既に絶版)を出版。卒業後、広告代理店に入社し、クリエイティブ部門で製薬会社、文具メーカー等の販促ツール制作に携わる。徐々に組織内での振る舞いに疲れ3年後に退職、以降ライターとして独立。実用誌・ムック・書籍の取材執筆編集業務をする内に、関わる人々から公私問わず相談を受け続けていると気づき、独自のセラピー・カウンセリングスタイルを見出して本格的に活動開始。現在は、主に自身と同じHSP気質の医療・介護従事者クライアントのケアに注力しつつ、文筆活動もゆるりと継続中。
おもな著書
『ユニクロ★デコ・リメイク』佐々木戸桃、五十嵐友美 著(雷鳥社)
『NHKサラメシ あの人が愛した昼めしの店』NHK「サラメシ」制作班 編(主婦と生活社) ※編集協力
他、実用誌・ムック約200冊に、取材、編集協力クレジットあり。
公式サイト・SNS
Xアカウント(@tomomo_journal)