ノミネート作品の『がんばらなくても死なない』の編集者、吉見涼さま(KADOKAWA)にお話をうかがいました。お忙しいところありがとうございます!
がんばらなくても死なない
竹内絢香 著
KADOKAWA
出版に至った経緯、構想から発売までの期間など教えて下さい!
当時の編集担当は違う者ですし、お仕事関係のコミックエッセイでしたので、今回の本と内容は違いました。
2020年の1月頃、竹内さんがTwitterで「日々の気づき漫画」と題した作品を投稿されていまして。
例えば、「暴言を吐く人について気づいたこと」や、「褒められることが苦手な私に友人が教えてくれたこと」など。
また、元々竹内さんがイギリスに留学された経験から、イギリスと日本の文化を比べて、「日本で暮らすハードルの高さについて考えたこと」を漫画にして投稿していたんですね。
その投稿がTwitter上でも話題になっていたので、一度お話をさせて頂いたんです。
それが2020年2月で、本の出版が2020年6月だったので、制作期間は大体4ヶ月ほどでした。
※デビュー作品は『英語力0(ゼロ)なのに海外営業部です』(竹内絢香 著、高橋基治 監修/KADOKAWA)
基本コミックエッセイですと半年、凝ったものですと、1年近くかかったりするんですが、竹内さんの筆が早く、Twitterに投稿していた原稿もいくつか溜まっていたので、早く出せたのかなと思います。
でもそういう本は実用書の棚に行けばたくさんあるんですね。
特に文章メインの本が多いんですが、この本はコミック形式なのでより簡単そう、やさしそうに見えるかもしれません。
あらゆる悩みに対して、これをすれば解決しますという解を示すのではなく、あくまでもエッセイなので、竹内さん自身の体験から出たものを読んで共感してもらって、自分の生き方や考え方を見つめ直せるのが、この本ならではのところかなと思っています。
読者ターゲットについて教えて下さい。
30代~40代の女性をターゲット層として考えていまして、実際に手に取って頂いているのもその年代の女性の方々がメインです。
企画の内容と方向性はすぐ固まったんですが、タイトルとカバーデザインは色々悩んで決めました。
コミックエッセイのタイトルって王道のものがあったり、結構長めのタイトルもあったりするんです。
でも、それだと少しインパクトに欠けるなと思ったんです。
『がんばらなくても死なない』というちょっと賛否両論あるかもしれないけれど、直球で目に留まり、心に刺さるタイトルにしたいなと思って決めました。
カバーでは「死なない」という部分をかなり目立たせるようにしました。
苦労したことは、読者の方に「暑苦しい」と思われたり、「こうあるべき」という押しつけがましい感じにならないよう、ネーム(※)の段階で細かな言葉のニュアンスを何度もやりとりして修正しました。
※漫画を描く際、コマ割り、コマごとの構図、セリフ、キャラクターの配置などを大まかに表したもの(出典:Wikipedia)
ただ専門的な言葉を使ったり、エビデンス(※)を用いて「なぜこういう気持ちが解消されるのか」という言いまわしはこの作品には出てこないので。
コミックエッセイとして等身大の悩みの解決方法を、あくまでも竹内さんの主観で描いてもらうことがポイントでした。
※証拠・根拠、証言、形跡などを意味する英単語 “evidence” に由来する、外来の日本語(出典:Wikipedia)
発売後の反響、販売部数は当初の予想と比べていかがでしたか?
竹内さんに初めてお会いしたときの印象はいかがでしたか?
いつもハキハキしていて、色んなことに積極的で前向きなので、ぜひ一緒にお仕事したいなと思ったのを覚えています。
一方で、漫画の表現はとても繊細で、細部まで丁寧に描かれる方です。
「落ち込んだ気分がなかなか抜けず、ずーっと引きずって、色んな事がうまくいかない」といった悩みに対して、この本では「自分の中の回復ポイントを沢山作ろう」という答えを提案しています。
例えば、竹内さんの場合だったら、散歩に行くとか、いつもより贅沢に粉を使って濃い目のココアを淹れるとか、次の原稿料が入ったら買うものを考えるとか。
日常の中のほんの小さなことで自分の気分があがるルーティーンを沢山作って、尚且つそれを自分で知っておくことは心の健康を保つために大事だなと。
僕自身も、散歩したり、好きな動画を観たり、音楽を聞いたり、自分で回復ポイントを把握して気分が落ち込んだ時にすることで、気分転換をしています。
みなさんも落ち込んだ時のために、自分の回復ポイントをたくさんストックしておくのはいかがでしょうか。
KADOKAWAさまの話題書
高校生のわたしが精神科病院に入り自分のなかの神様とさよならするまで
もつお 著
KADOKAWA
神様の言うことを聞いていれば、すべてうまくいくはずだった。
強迫性障害、摂食障害、強制入院、退院後の揺り戻し…高校生のわたしを苦しめたのは、自分のなかの「神様」でした。
物を触らずにはいられない、自信の体型が気になって食事ができない、同級生の視線が気になって学校へ行けない、家族や医師にさえ「神様」の秘密を打ち明けられない……ある平凡なひとりの女子高生が経験した、凄絶な日々。
精神科病院に入院し、一時は「もう無理、死んでしまいたい」とさえ思いながらも、自分を見つめて認めること、本当のやりたいことを見つけることで回復に至るまでの道のりを描く、絶望と希望のコミックエッセイ。
第4回新コミックエッセイプチ大賞受賞作品『わたし宗教』を約3年間かけて完全改稿のうえ、大幅な加筆を加えてオールカラーで書籍化。
几帳面だと思っていたら心の病気になっていました
菊晴 著
KADOKAWA
鍵かけた? 火消した? 日々の不安を私はこう乗り越えました。
もともと完璧主義で几帳面。でもそんな性格を自分では苦にするでもなく、ときどき友達と遊んで漫画やアニメを楽しむ、そんなごく平凡で普通の幸せな日々。
しかしある日、ささいなきっかけで不安の渦にのみこまれることに……。
「鍵かけた?」「火消した?」など様々なことが気になって仕方がない。
不安に押しつぶされて、引きこもりになってしまった著者に告げられたのは「強迫性障害」という病名だった。
ブログで共感の声続々! 心のとらわれ解消コミックエッセイ。