『要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑』(サンクチュアリ出版)の著者、F太(えふた)さんと小鳥遊(たかなし)さんのお二人にお話をうかがいました。
要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑 F太、小鳥遊(共著) サンクチュアリ出版 2020年4月発売 |
著者インタビュー PART2
この作品で一番伝えたかったこと
― この本の中で、一番伝えたいメッセージは何ですか?
F:
一番伝えたいことは「とにかく書く」という事ですね。
この本の中では「まず手順書を作りましょう」と伝えているんです。
僕自身、悩んだりしんどくなった時、紙に自分が考えていることを書く。
これを小さい頃からやってきて、この行為によって気持ちの整理がスタートするんだということを実感してきたので。
僕はこの「書く」という習慣に色々と助けられてきたんですよ。
「悩み始めたら何でも書きましょう」っていうことなんですけど、それをシステマチックというか、テクニカルに書いたのがこの本かなっていう気がしています。
小:
なれそうもない自分になろうとして苦しむ必要はないっていうことですね。
自分の理想が高くなって「こうならなきゃいけない」「こうであるべき」みたいなことってあると思うんですけど、そこまでしてする必要はないんですよ。
「今の自分のまんまで、それにちょっとした工夫をするだけで十分、大丈夫なんですよ」ということをぜひ伝えたいなと思います。
― 読者の方からの反応はいかがでしたか?
F:
読者の方の反応が一番多く感じられるのが Amazon レビューですね。
有難いことにたくさんのコメントを未だに頂いてまして、「まさに自分のことが書いてあった」というコメントがすごく多かったです。
新入社員や部下に薦めてくれる方も多くいらっしゃいました。
小鳥遊さんのスタンスで一番素晴らしいと思ったのは、ご自身の特徴や経験を活かして、普通の本では書かれていないようなことを、初歩の初歩から言語化して書かれていることでした。
同じような特徴の方がタスク管理をする場合、ケアすべきことを非常によく考えていらっしゃっるんです。
頭の中のことを全部書き出すという最初の一歩をすごく丁寧に書くという点は、会社じゃ当たり前すぎて教えてくれないようなところだと思うんです。
でも、こういう当たり前のところが実は重要で、そういうところがこの本ではしっかり言語化できていると思います。
こういう内容の本って例えば「何かしらの障害をお持ちの方が苦労しないように建物を作ると一般の方にとっても使いやすい建物になるよね」っていうのと同じで。
新入社員の方や元々スキルの高い人でも、新しいことを始めると頭が真っ白になったり、テンパったりすると思うんですけど、「困った時の教科書みたいな仕事の本だよね」っていう風に紹介してくださってる方がいらっしゃって。
そういう使い方をしてもらえると嬉しいなと感想を読みながら思いました。
小:
Amazonレビューが多いなというのは私も思ってました。
レビューが多くてもネガティブなコメントが多いのであれば別なんですけど、ポジティブな点を言ってくれてる方が非常に多くて。
平均の点数も割と上なんです。
だから、ある程度受け入れていただいているのかなって思いました。
驚くのは、私の友達や先輩、後輩は、優秀だと言われている人たちが多いんですけど、「自分にはこういう所があって結構参考になった」という感想をよく頂くんです。
あんまりこの本のタイトルに惹かれるような人じゃなさそうな人が多いんですけど、むしろそういう人こそ、自分の至らないところを冷静に見ているのかなと思いました。
いわゆる “できるビジネスパーソン” みたいな人たちからも「すごい役立ったよ」っていう感想を頂くことも多かったですね。
「私の特徴」を説明している小鳥遊さん
※以前は「仕事が遅い」「先送りしてしまう」「忘れる」「自分のせいにする」「詰めが甘い」「集中し過ぎる」の6項目だったが、現在は上記の4項目で説明
人生で一番辛かったこと(小鳥遊さん)
― この本には「小鳥遊のしくじり体験記」や「F太のこじらせ体験記」というコラムが章末にありますよね。お二人にとって、人生で一番辛かったことは何ですか? またそれをどのように克服されたのか教えて頂けますか?
小:
私は今3社目の会社に勤めているんです。
1社目は障害者雇用で入りました。
それでも仕事はなかなかうまくいかなくて。
頑張ろうと思ってもミスがなくならなかったんです。
2社目は障害者雇用ではなく、一般雇用だったんですが、1社目と同じ経緯をたどって、休職してしまい結局は退職したんです。
「また同じことになるのか」と絶望に近いような状況に陥りました。
そう感じた時には、もう会社にいられなくなる、いたくなくなっちゃうんですよ。
周りは別にそう思っていないのに「小鳥遊は全然できないやつだ」みたいに思ってるんじゃないかって、被害妄想が広がってしまって。
いつ怒られるかわからないって感じで、常にビクビクしながら会社にいるようになっちゃうんですね。
― 大変辛い日々を送っていたのですね……
小:
それまでの昼休みの過ごし方は、近くのコンビニでお弁当を買ってデスクで食べるっていう感じだったんですけど……。
気持ちが落ち着かなくなって、デスクでは食べられなくなっちゃったんですよ。
それで、ちょっと高いんですけど、会社の近くにあったルノアール(喫茶店)によく行ってたんです。
サンドイッチとコーヒーを頼んで、趣味のクラシックを聴きながら、少しでも気持ちを落ち着けようとするんですけど……。
そういう時に限って音楽がめちゃめちゃ身に染みるんですよ。
聴きながら泣いちゃうこともあって。
「なんで自分はこうなんだろう」
「また同じような経緯をたどって、仕事がうまくいかなくなって休職してしまう」
「休職して退職して、もう社会復帰できないんじゃないか」
そこまで考えてしまったんです。
そう考え出したら八方塞がりになっちゃって、泣くしかなかったんですよね。
ルノアールで泣いている私を見て、きっと周りの人は「何であの人、サンドイッチを食べながら泣いてるのかな?」と疑問に感じてたと思います。
今思えば「ミスしない、忘れない自分になろう」と頑張っちゃってたんですよ。
それ自体が無駄とは言わないんですけど、私にとってはそういう方向性で努力をしない方が良かったなって今は思うんです。
結局、その後休職しちゃったんですから。
でもここまでくると開き直ることができて「どうせ忘れちゃうんだったら、忘れてもいいように環境の方を整えればいい」っていう風に自分の殻を破ることができたんです。
あの辛い状況を経験して乗り越えて、タスク管理にたどり着いて、やっと克服できんたんじゃないかなと思います。
「タスク管理ツール」の説明をしている小鳥遊さん
人生で一番辛かったこと(F太さん)
― F太さんはいかがですか?
F:
公認会計士試験に受からなかったという挫折経験は本に書いたんですけど。
それ以外では、小学校の時に体も小さかったので、よくいじめられてたなって思い出します。
あの頃が一番人生の難易度が高かったように思います。
僕は出身が村なんですね。
中学校の頃もこの村という限られた人間関係の中で立ち回る必要があったので、今思うと難易度が高いことを要求されてしんどかったなと思います。
高校は都市部にあったので生徒の人数も増えて。
自分が付き合う相手を選べるようになったので一気に快適になりましたね。
自分で人間関係を選べないことはすごく難易度が高い、ということをそこで学んだというか。
僕自身は、たくさんの人の中から自分が付き合いやすい人と関係性を築く方が向いてるのかもしれないと思って、大学からは東京に出てきて活動をしています。
言ってしまうと僕は未だに克服できていないと思うんですよ。
村の小さい人間関係から「ここは合わない」と言って逃げたし、その後働き始めても「職場が合わない」と思って逃げたことも結構あるんです。
― 辛い時に逃げるって大切なことですよね……
F:
はい。
逃げるテクニックって実は必要だなって、僕はすごく思っていて。
メンタルも体も強い方じゃないですけど、割とストレスなく今は生きていられるので。
それって逃げるスキルがあるからだなって自覚しています。
逃げるという選択肢を選ぶことが苦手な人が多いなと感じることもあって、ずるいかもしれないけど「こういうやり方もあるんだよ」ってことを伝えてきたいと常々思っています。
ずる休みできない人っているじゃないですか。
「仮病でも使って休めばいいのに」と思うんですけど、その選択ができない方はいると思うので、「逃げてもいいんだよ」と伝えていきたいですね。
でも、逃げ続けることが出来ない部分も確かにあって。
例えば、僕の家族が住んでいる村に戻れば、やっぱり村の中でのコミュニケーションが必要ですし。
でもそのために必要なスキルは、自分にとって居心地のいい場所で身につけてから立ち向かえばいいって気がするんですよね。
次回はF太さん、小鳥遊さんの「タスク管理との出会い」、プライベートに迫ります!