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【書評】『メンタル・クエスト 心のHPが0になりそうな自分をラクにする本』(評者:平光源/精神科医)

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選考委員の平光源さま(精神科医)より、ノミネート作品の書評をお届けします!
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メンタル・クエスト 心のHPが0になりそうな自分をラクにする本
鈴木裕介 著
大和出版
2020年4月発売

「メンタル本大賞 2021」ノミネート

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書評

この本の素晴らしいところを3つに分けて説明しますね。

1.内科医の視点の新しいメンタル本

ここ4,5年でかなり変わってきたようですが、医学部の精神科の授業や実習で習う事は、ほとんどは病気の原因とその症状の鑑別、さらに薬物治療が中心です。

つまり、精神療法(みなさんがカウンセリングと呼ぶ治療内容)に相当するものはほとんど学ばずに大学を卒業します。

そして、精神療法は実戦で、ほとんどはついた指導医から見よう見まねで身に付けていくので、もしくは指導医に物足りなさを感じる場合、例えば「ラカン派」など自分の好みの流派の勉強を深くしてしまうので、どうしても癖と偏りがついてしまうことがあります。

「精神科の医師は単なる処方マシーンだ」
「同じ精神科の医師なのに人によって言うことがえらく違う」
「言っている内容が専門的すぎてちょっとなに言ってるかわからない」

と言われるのはこのためです。

しかし鈴木先生は内科医の先生で、友人のメンタル不調を治療しようと一生懸命、少しずつメンタル疾患を勉強されて、治療を実践され今に至ります。

参考にされている書籍も、社会心理学者の先生や、人文学者、生物学者の先生など、精神科医のような偏りがありません。

さらに、重症化した患者さんだけを多く見ている精神科医の本に見られる、本全体に流れる「重さ」や「深刻さ」がなく、軽やかに本を読むことが出来ます。

「大切な人たちのSOSを受け、使命感とかではなく、必要に駆られてやっていたら人生のドアが想定外に空いてしまった」と先生がはじめにで述べられているように、長年多くの困りごと相談に乗って、一緒に解決策を考えてきた優しい町のお医者さんの本です。

2.まさに人生というゲームの攻略本

「敵を知り、己(味方)を知れば百戦危うからず」

あらゆるゲームをするときに、共通しているのは、この名言を実行することだと思います。

例えば、レーシングゲームをするとして、自分が安定走行が出来るけどスピードがそこそこしかでない車が合うのか、それとも、時に暴走するけどスピードが圧倒的な車が合うのかは人によって違います。

さらに、どう攻めればいいのかもコースによって変わってくるでしょう。

この本では、第2章で自分のタイプを、「キャラ」と呼び、「真面目な英雄」「繊細な魔法使い」「心の間合いにおける近接型・遠隔型」と3つに分けて、解説してくれています。

例えば、「繊細な魔法使い」は、「肉弾戦は苦手でも、危機にいち早く気づきグループ全体を助ける特殊能力を持つ魔法使いである」と、いわゆるHSPの長所をわかりやすく教えてくれます。

他にも、第3章では、「べき思考」は「呪い装備(自分では気が付かないが自動的にそうさせられてしまう呪術)」と例え解説するなど、敵の分析も完璧。

自分がロールプレイングゲームの主人公となって、社会という迷宮を上手に抜け出せるような仕組みをたくさん解説してくれています。
まさに、人生というゲームの攻略本です。

3.愛と覚悟の本

この本は、「軽やかに読める本である」と冒頭に書きましたが、それは、「内容が薄い」ということではありません。

誰よりも多くの大変な患者さんに寄り添って診察してきたなかで経験した、「絶望」を「希望」に変えるために、覚悟をもって取り組んだ筆者の努力の結果です。

なぜそうなのかはネタバレのようになるので、もうこれ以上は書きません。

本書を手に取って読んでほしいので控えますが、私は「おわりに」を読んでいるときに、エレファントカシマシの「悲しみの果て」が頭の中に流れてきて、思わず目頭が熱くなりました。

「怒っていた僕は、ポップな仇討ちをしかけていく」

この終わりの言葉に筆者の思いが全て集約されています。
この本は、まさに愛と覚悟の本です。

おわりに

ソーシャルゲームのように、カードを引き続ければ、はずれも多いけれど、いつかSSR(激レアカード)を引いて、戦況がひっくり返るかもしれない。

大切なのは、「カード」をめくり続けること

など、他にも紹介したい言葉はいっぱいありますが、是非本書を手にして自分で味わってほしい。

この本を一言でまとめると、愛と覚悟をもって書かれた人生ゲームの攻略本です。
生きづらさを感じている方すべてに読んでほしい本です。

鈴木先生、素晴らしい本をありがとうございました。

出典:平光源さまFacebook投稿(2021年7月5日)

評者プロフィール

2022 優秀賞・2021 選考委員MVP賞
平光源(たいら・こうげん)

東北地方でクリニックを開業している開業医。
高校時代、自分の不登校によって医学部受験に失敗。
3年浪人してうつになり、ある本がきっかけでうつから回復した経験をふまえて、約20年精神科医として心のケアに当たる。
支援学校学校医、老健施設往診医、いのちの電話相談医、傾聴の会顧問など、その活動は多岐にわたる。
精神保健指定医、精神科専門医、日本医師会認定産業医。

メンタル本大賞2022 ノミネート作品

あなたが死にたいのは、死ぬほど頑張って生きているから
平光源 著
サンマーク出版
2021年4月発売

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