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【書評】『この会社ムリと思いながら辞められないあなたへ』(評者:佐々木戸桃さま/文筆家・セラピスト)

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セラピストとして、自分と同じHSP気質の医療・介護従事者クライアントのケアをしながら、文筆活動をされている佐々木戸桃さまより書評をお届けします!

メンタル本大賞®2022 ノミネート作品

この会社ムリと思いながら辞められないあなたへ
井上智介 著
WAVE出版
2021年9月発売

書評

『この会社ムリと思いながら辞められないあなたへ』井上智介著(WAVE出版)を紹介させていただきます。

この本を手にしたのは、実際わたし自身が「疲れが抜けない」と感じつつ無理に仕事をしていた頃でした。
タイトルを踏まえれば、“会社”がムリ、と思うかた向けではありますが、6章に分けて細やかに解説されているその内訳は、何かにおいて『ムリ』と感じるのであれば、とても響くものです。

わたしの体験も踏まえつつにて恐縮ではありますが、そのすてきなポイントをお伝えします。

1. 職業問わず「今の自分」の確認がすぐできる

無意識に頑張り過ぎてしまう事は、どなたにもあると感じます。

井上先生は日常における『自分軸』の大切さについて他著書でも教えてくださっていますが、その評価軸をわたし自身が見失いかけていた時とほぼ同時に、この本が出版されたのでした。

雨の日の仕事帰りに書店に立ち寄り(何か仕事に役立つ本はないかなぁ?)と探していたところ、この本が目に留まり、開くと突然 p34「あなたは今、笑顔ですか?」と語りかける井上先生のイラストが見えて“ぎくり”。

同時に、(助かった~)と感じました。

わたしは“笑顔を失うほど仕事で頭がいっぱいだった”と、そのページだけで気付けたのです。

イラスト:伊藤美樹

目次を見てみると、組織に属さぬ自身にとっては、タイトルや内容の“会社”を“仕事”に置き換えて読める内容だと直感しました。

そこで早速、読みながら自分を振り返り、見直す作業に入る事にした次第です。

2. 心身不良時でも読みやすいポイントごとのマーキング=マーカー部分だけ読んでも実践しやすい

読み始めると、わたしは既に文字が読みにくい状態だと判明し、首を傾げて苦笑するしかありませんでした。

井上先生が特に伝えたいポイントは太ゴシック体で記されマーカーが施されています。

わたしには、その前後1~2行しか頭に入らない。
これは「頑張り過ぎて休息が必要な目安」となります。

そして、マーカー部分のみ一通り読み、しばらくしっかりと仕事を休む事を決めました。

この本の読みどきとしては、

  • 現時点でどれだけ自分が頑張っているかを知りたいとき。
  • 追い詰められていても諸事情によりすぐに立ち止まれないとき。
  • 既に十分辛い自覚はありつつも具体的にどうすればいいか分からないとき。

にもお勧めです。

3. 前半と後半、各々の構成が明確

前半1~3章は『心と身体の危険サイン』、後半4~6章は『もうムリ、と思ったときの具体的な対処・対応方法』について、と構成が明確です。

特に印象的なのは、3章の『「体の危険サインだ」と思ったときの対処法』です。

体のサインは、目先の事をこなすのに精一杯であればある程、見落としたり見過ごしがちではないでしょうか。

まさにわたしはそうだったので、井上先生が本の中で教えてくださる一つずつの項目を確認し、改善に努める事に。

イラスト:伊藤美樹

まずは期間を設けてしっかり休養をし、その後、心にも体にも負荷のかかりにくい仕事スタイルへと徐々に変化させていきました。

おかげさまでさほど時間も掛からず、むしろ休養以前よりも仕事に前向きに動ける様になりました。

セラピストとしては、ヒアリング中に、このクライアント様はもう身体症状が顕れていらっしゃる、とすぐに感じる事があります。
更には、産業医制度のない組織に勤務されている場合、「何をどうすればいいか分からない」というご相談を受けもします。

ある日、切羽詰まったクライアント様に、フリーランスの自身こそがこの本を読むまできちんと知らなかった6章の『「この会社ムリだから辞める!」ときに知っておきたいこと』を踏まえてお話した事がありました。

限られた時間でこの本に書かれている“退職時に必要とされる専門用語とその内容”を噛み砕いて伝えるのは難しいため、「もし本を読む事が苦痛でなければ、読んでみるとすぐ役立つかもしれません」とお勧めしたところ、後日「読んだらこれからどうしたらいいか分かり、退職に向けて動き出せました!」とご報告をいただき嬉しくなった瞬間は忘れられぬものです。

イラスト:伊藤美樹

 カバーはコーティングされており、帯がありません。表紙下部には一瞬帯に見えるキャッチーなデザインが。こうした丈夫で無駄のない工夫に、辛さから抜け出したく一刻をあらそうかたがすぐ読みすぐ役立てられるように、との配慮を感じます。

 各章のおわりには、丸1ページを使って井上先生のイラストが“ひとこと”語りかけてくれています。日常に疲れたらそこを眺めるだけでもホッと和み安心できたり励まされるところも、本書の大きなお勧めポイントです。

この本から、どんなかたも“自分で自分のムリを乗り越える術”を得て、日々の笑顔を取り戻したり、笑顔そのものを一層増やしていけますように。

評者プロフィール


佐々木戸桃(ささき・ともも)
東京都出身。大学時代、学内文芸誌主宰を機に、自身の詩集(既に絶版)を出版。卒業後、広告代理店に入社し、クリエイティブ部門で製薬会社、文具メーカー等の販促ツール制作に携わる。徐々に組織内での振る舞いに疲れ3年後に退職、以降ライターとして独立。実用誌・ムック・書籍の取材執筆編集業務をする内に、関わる人々から公私問わず相談を受け続けていると気づき、独自のセラピー・カウンセリングスタイルを見出して本格的に活動開始。現在は、主に自身と同じHSP気質の医療・介護従事者クライアントのケアに注力しつつ、文筆活動もゆるりと継続中。

おもな著書
『ユニクロ★デコ・リメイク』佐々木戸桃、五十嵐友美 著(雷鳥社)
『NHKサラメシ あの人が愛した昼めしの店』NHK「サラメシ」制作班 編(主婦と生活社) ※編集協力

他、実用誌・ムック約200冊に、取材、編集協力クレジットあり。

公式サイト・SNS
Twitterアカウント(@tomomo_journal)

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