日本読書療法学会を設立して、読書セラピーの研究と実践を続けてきた寺田真理子さまより書評をお届けします!
今日こそ自分を甘やかす 根本裕幸 著 大和書房 2021年12月発売 |
書評
「自分に厳しすぎるために自己肯定感が低い」読者に向けて書かれた本書は、私にも思いあたることばかりでした。
まずは、どれくらい自分に厳しいかをお伝えします。
私は英語圏の帰国子女でもないのに英語で同時通訳をしていましたが、それは「セルフスパルタ」のおかげでした。
英語を学び始めた頃、「1回間違えたらビンタ10回」と決めて、それはそれは厳しく、自分に勉強させていたのです。
ビンタは毎回、手加減なし。
顔は真っ赤に腫れました。
そうして自分に厳しくし続けた結果、自己肯定感が低くなってしまいました。
「東大法学部卒。多数の外資系企業で通訳を経験。英語、スペイン語に堪能。著書・訳書多数。全国各地で講演」
こんな具合にプロフィールをまとめられると、自己肯定感が高そうに思われがちです。
だけど自分では、こんなふうに捉えています。
東大法学部卒。
→高学歴化している世の中なのに、博士号すら取得していない……。
多数の外資系企業で通訳を経験。英語、スペイン語に堪能。
→首脳会談すら担当していない……。
著書・訳書多数。
→数百冊も本を出している人がいるのに、私はたった20冊弱……。
全国各地で講演
→毎日のように講演する人もいるのに、そんな体力はとてもない……。
そして「なんて無能な人間なんだろう……」と落ち込みます。
何かうまくいかないことがあるたびに、「この無能!」と自分の中の厳しい自分にののしられるのです。
自分に厳しすぎる人たちは様々な点で「厳しい基準」を自分に設けています。(中略)
しかし、本当の問題は「厳しすぎる基準を持っていることに、自分が気づいていない」ということです。
出典:『今日こそ自分を甘やかす』根本裕幸 著/大和書房(22ページ)
ここで指摘される「本当の問題」は、まさしくその通りだなと感じます。
「博士号持ってて首脳会談の通訳して、数百冊本を出して毎日のように講演するって、何者?」
と考えてみればツッコミどころ満載なのに、普段はまったく気づけないのです。
「ちょっとした失敗」から「この無能!」に自動的に直結してしまっているのですね。
それ、自分いじめに他なりませんよ?
出典:『今日こそ自分を甘やかす』根本裕幸 著/大和書房(60ページ)
おっしゃる通りです。
日々、いじめ抜いてしまっていました。
身につまされる指摘が多くありました。
そして、そんなタイプの人がラクになれるように、たとえばこんなアドバイスがあります。
「できることしかできない。だから、できることにベストを尽くそう」
出典:『今日こそ自分を甘やかす』根本裕幸 著/大和書房(50ページ)
そのための具体的な方法も豊富に示され、頼れる味方になる一冊です。
評者プロフィール
メンタル本大賞2022 選考委員MVP賞
寺田真理子(てらだ・まりこ)
長崎県出身。幼少時より南米諸国に滞在し、ゲリラによる日本人学校脅迫や自宅の狙撃を経験。東京大学法学部卒業。多数の外資系企業での通訳を経て、現在は講演・執筆・翻訳活動。読書によってうつから回復した経験を体系化して日本読書療法学会を設立し、国際的に活動中。また、うつの体験を通して共感した認知症について、パーソンセンタードケアの普及に力を入れている。著書、訳書多数。日本メンタルヘルス協会公認心理カウンセラー。
心と体がラクになる読書セラピー 寺田真理子 著 ディスカヴァー・トゥエンティワン 2021年4月発売 |