日本読書療法学会を設立して、読書セラピーの研究と実践を続けてきた寺田真理子さまより書評をお届けします!
1日3分でうつをやめる。 川本義巳 著 扶桑社 2019年10月発売 |
書評
『1日3分でうつをやめる。』
この本のタイトルに、もしかしたら抵抗を覚えるかもしれません。
「そんなに簡単にどうにかできるわけがない」「やめたくてもどうにもならないから苦しんでいるのに」……そんな気持ちになるかもしれません。
だけど、著者の川本義巳さんも、実際にうつを経験しているのです。
うつ病と診断されて1年2か月休職し、抗うつ剤を飲みながら復職したものの、6年ほど再発を繰り返していました。
そこから回復した経験から、こう断言します。
断言しますが、うつは「やめたい」という意志を持てば、やめることができます。(p27)
逆に「うつをやめられない人」は「誰かになんとかしてもらいたい」と思っている人で、医師や薬、家族や恋人に依存する傾向があります。(p48)
出典:『1日3分でうつをやめる。』川本義巳 著/扶桑社
「そんなつもりはないし、少しでもよくなりたいと思っている」ならば、この本のプログラムが、きっと力になってくれるでしょう。
とても簡単にできることで、効果が得られるならば、やってみてもいいと思いませんか?
川本さんが提唱する「メンタル・リセット・プログラム」は、次の3ステップで、時間をかけずにできるものです。
このプログラムの生まれた経緯について、川本さんはこう語ります。
自分自身のうつ克服に効果があったことを振り返り、学んだことと照らし合わせて「なぜうまくいったのか?」を分析した結果、「うつが回復するときにいつも共通してやっていることがある」というポイントを見つけました。
それを誰にでもできる形に落とし込み、手順を決めたものが「メンタル・リセット・プログラム」です。出典:『1日3分でうつをやめる。』川本義巳 著/扶桑社(p49)
簡単なプログラムの背後には、経験と試行錯誤があります。どうしてこういうプログラムになっているのか、解説を読むことで、納得して取り組むことができるでしょう。
まだあまり文字を読む気になれないなら、冒頭のマンガを読んで試してみるだけでもいいかもしれません。
自分がうつで苦しいというだけでなく、家族が苦しんでいるケースも多いのですが、そのときにどうすればいいかという情報は意外と少ないものです。
この本の中には「家族がうつになったら」という章もあるので、気持ちの持ち方や接し方の参考になるでしょう。
最後に記されたこの言葉から、本に込められた読者への思いが伝わってきます。
私は「必ず出口がある」と信じています。
だから最後まで、あきらめないでください。
そう。必ず出口はあります。出典:『1日3分でうつをやめる。』川本義巳 著/扶桑社(p221)
評者プロフィール
寺田真理子(てらだ・まりこ)
長崎県出身。幼少時より南米諸国に滞在し、ゲリラによる日本人学校脅迫や自宅の狙撃を経験。東京大学法学部卒業。多数の外資系企業での通訳を経て、現在は講演・執筆・翻訳活動。読書によってうつから回復した経験を体系化して日本読書療法学会を設立し、国際的に活動中。また、うつの体験を通して共感した認知症について、パーソンセンタードケアの普及に力を入れている。著書、訳書多数。日本メンタルヘルス協会公認心理カウンセラー。
心と体がラクになる読書セラピー 寺田真理子 著 ディスカヴァー・トゥエンティワン 2021年4月発売 |