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【書評】休職・復職がテーマのメンタル本2作品を読み比べてみました(評者:實山美穂/元書店員)

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閉店前の文信堂書店 長岡店で文芸書・ビジネス書を担当。現在、小学館の小説ポータルサイト「小説丸」にもコラムを寄稿されている 實山美穂さま(元書店員) より書評をお届けします。

版元ドットコム許可書影『マンガでわかる 休職サバイバル術』 『この会社ムリと思いながら辞められないあなたへ』井上智介 著(WAVE出版)
マンガでわかる 休職サバイバル術
加藤高裕 著、ミヨシ 漫画
主婦の友社
2022年11月発売
この会社ムリと思いながら辞められないあなたへ
井上智介 著
WAVE出版
2021年9月発売

書評

『マンガでわかる 休職サバイバル術』について

『マンガでわかる 休職サバイバル術』は、精神科医で産業医として現役で活躍する著者と、うつ病を発症し、休職・復職を経験した漫画家のコンビで書かれています。

本を見たときに目を引かれたのは、タイトルの復職率9割という言葉です。

現代の日本は、働く人の2人に1人が、仕事に強い不安やストレスを感じ、3人に1人がメンタル不調、10人に1人が1ヶ月以上の休職を経験しているそうです。
うつ病は珍しくないと言われていますが、復職率9割は気になる数字です。

さらに本の中で驚いたのは、精神科医・心療内科医の産業医は、産業医全体の5.1%でしかないということでした。

社員のメンタルヘルス対策に注文が集まる一方で、精神科の産業医はまだ少ないのが現状です。日本医師会が行ったアンケート調査(※2)でも、精神科医・心療内科医は産業医全体の5.1%です。

出典:『マンガでわかる 休職サバイバル術』加藤高裕 著、ミヨシ 漫画
/主婦の友社(11ページ)

それなら他はどういう人たちなのかが気になって、元になった「産業医活動に対するアンケート調査」(日本医師会、2015)を確認してみました。

一番多いのが内科医(全回答者4,153人のうち1,831人)で、次は外科医(同回答者のうち303人)という結果になっていました。

産業医を置いている事業場の業種で一番多いのは〔製造業〕で、事業場の規模は〔50~99人〕次いで〔100~299人〕に多いようです。

本の中には、性格タイプの自己診断、精神科・心療内科を受診するかどうかの目安チェックシートなど、休職を考える本人はもちろん、会社側がとるべき対応まで言及されていました。

社員が休職した場合の損失、企業の価値向上までを考えるなら、社員のメンタルヘルス対策に力を入れることの意義を教えてくれます。

復職率9割のためには、周囲のサポートの重要性を再認識しました。

『この会社ムリと思いながら辞められないあなたへ』について

一方、休職をテーマにした同様の本から、メンタル本大賞2022〔最優秀賞〕『この会社ムリと思いながら辞められないあなたへ』は、著者が精神科医で産業医であるという、立場を同じくしていましたが、より患者目線で書かれていました。

イラスト 伊藤美樹(『この会社ムリと思いながら辞められないあなたへ』より)

本を読むのが辛いようなら、マーカー部分だけでいいし、具体的かつ読者に寄り添ったアドバイスが連なっています。
私も読んでみて、思い当たることが多かったです。

最後に「本当に辞めたいのか」を問うところまであって、無責任に「辞めたいなら辞めれば」とすすめているわけではないのが、この本が完成されているポイントだと思いました。

この2冊を読み比べてみて思ったのは、今まさに会社を辞めたいと思っていたり、疲れていると感じているのであれば、『この会社ムリと思いながら辞められないあなたへ』を読んでほしい。

そして、メンタルヘルス対策に興味があり、部下のいるような人は、『マンガでわかる 休職サバイバル術』を読むことをおすすめしたい。

どちらにもいえるのは、これらの本が会社の就業規則を確認するきっかけになりそうです。

評者プロフィール


實山美穂(じつやま・みほ)
大学で心理学などを専攻し、卒業後、文信堂書店に入社。文芸書・ビジネス書他担当。文芸書担当を機に本屋大賞エントリー店となり、新書担当を機に新書大賞の投票に参加し、興味の赴くまま御書印プロジェクトにも参加。基本、本を読んで猫と遊んでいれば満足。2023年4月10日をもって、文信堂書店長岡店がCoCoLo長岡より撤退。それにあわせて文信堂書店を退社し、今に至る。小説丸の、書店員さんのコラムに参加。

公式サイト・SNS
小説丸|週末は書店へ行こう!目利き書店員のブックガイド(vol.98)
note|御書印プロジェクト(公式)

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