加藤隆行さま(心理カウンセラー)より、「メンタル本大賞2021」ノミネート作品の評価コメントを頂きました。
加藤隆行さまは、「メンタル本大賞2021」ノミネート作品『「会社行きたくない」と泣いていた僕が無敵になった理由』(小学館クリエイティブ)の著者ですが、このたび実行委員会の活動にご賛同いただき、書評および参考コメントのご寄稿をお願いしました。
※加藤さまは、「大賞」決定の審査には携わっておりません。
参考評価・作品別コメント
1位 | 参考順位 | 弱いメンタルに劇的に効く アスリートの言葉 鈴木颯人 著 三五館シンシャ |
2位 | 参考順位 | 多分そいつ、今ごろパフェとか食ってるよ。 Jam 著/名越康文 監修 サンクチュアリ出版 |
3位 | 参考順位 | あやうく一生懸命生きるところだった ハ・ワン 著/岡崎暢子 訳 ダイヤモンド社 |
1位:『弱いメンタルに劇的に効く アスリートの言葉』
弱いメンタルに劇的に効く アスリートの言葉 鈴木颯人 著 三五館シンシャ 2019年3月発売 |
評価ポイント
- 著者の情熱が伝わる
- トップアスリートも自分と同じだと思わせてくれる
- 著者とアスリートの言葉が納得感のある形で書かれている
評価理由
自分が心理カウンセラーとして、クライアントさんと接していると「今の自分ではない、すごい人にならなきゃいけない」と思い込んでいる人がとても多いです。
人は「自分じゃない誰かにならねば」と考えすぎることによって、自分を否定し、追い込み、メンタルを病んでいってしまいます。
その一方で、「そのままの自分でいいんだよ」というアプローチの本は数多くありますが、「そのままの自分でいいんだよ」と言われても、自分を否定し続けてきただけに、そもそもそのままの自分がわからないというジレンマがあります。
シンドイ状態からある程度抜け出してきた人であれば気づけるかもしれませんが、本当にシンドイ状態の人は「そのままの自分でいい」と言われても、自分にどうOKをだせば良いかわからないでしょうし、「そうなんた!」と納得するのは難しいと思うんです。
この本では、そのジレンマを、アスリートたちの言葉をもとにわかりやすく解きほぐしてくれます。
彼らのような世界トップレベルの「すごい人たち」は、不安や弱さを「強さ」で克服した人だと思われがちです。
しかしそんなアスリートたちでさえも、不安や弱さを人一倍抱えていることがよくわかる。
そしてその自分の弱さを「自覚」して受け入れ、「等身大の自分でいること」が最も大切なのだという、メンタルを整える根幹の部分がとてもわかり易く書かれています。
とはいえ「トップの人たちだからこそ出来るんでしょ」という風に捉えられる方も一定数いるとは思うんですが、そんな方たちにも届くように著者の鈴木さんが表現を工夫し配慮しながら、さらに想いあふれる情熱的な言葉で書かれているのが印象的でした。
アスリートたちも「自分と同じなんだ」と感じられ、私も同じように頑張ってみよう、自分の弱さを受け入れてみよう、とメンタルを整える最初の一歩を踏み出す勇気がもらえます。
そのままの自分を受け入れることの大切さについて、誰もが腑に落ちる本と思います。
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2位:『多分そいつ、今ごろパフェとか食ってるよ。』
多分そいつ、今ごろパフェとか食ってるよ。 Jam 著/名越康文 監修 サンクチュアリ出版 2018年7月発売 |
評価ポイント
- 手に取りやすく読みやすい
- 読みやすいけど、深くてしっかり実践的
- イラストの猫が可愛い
評価理由
この本はとにかく手に取って読みやすいです。
読みやすさを追求した本は、読んでも「ふーん。そうなんだ。」で終わることが多いのですが、この本は深いし、しっかり実践的だと感じました。
理屈を並べて書いているのではなくて、著者自身が実体験を通して、しっかり考えてきたんだよというのが伝わってくる。
最近はメンタル系のコミックエッセイがよく出ていますが、あとから仕入れた心理の知識をそのまま書いてるなという印象の本も多いです。
そういう本は、この部分って自分の体験からもってきてないよねって読んできてわかるんですが、この本は全編に渡ってそういう印象がありませんでした。
その上で、監修に名越先生が入っていることもあり、結果的に心理的な裏付けもしっかりしています。本人の体験から紡ぎ出されたリアルで実効性の高い本だなと思いました。
すごい可愛いイラストで手に取りやすい。入口のハードルが低いので、どんな方にも受け入れやすい作品だと思いますね。
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3位:『あやうく一生懸命生きるところだった』
あやうく一生懸命生きるところだった ハ・ワン 著/岡崎暢子 訳 ダイヤモンド社 2020年1月発売 |
評価ポイント
- 読んでいて面白かった
- 積極さが全くないので心が軽くなる
- 軽く読めるのはエッセイ本ならでは
評価理由
まず韓国という日本よりも人の目が厳しい社会の中で、こういう考え方を持っている人がいることが面白いなと思いました。
「自分らしく生きるのがいいんだよ!」といった説教くささが全くなくて、「まあ社会はあいかわらず厳しいんですが、ボクはこんな感じで生きることにしました」的な自然体な文章が心地よいです。
こういう内容を書いた本は、ちょっと浮世離れ感を感じてしまいがちなのですが、この本は現実味を持ってスラスラ読めました。
だから心がしんどい人も無理なく読み進められるのではないでしょうか。
すでに自分にある程度向き合ってみて、本に書いていることを実践してみよう!という段階の方ならば、他のノミネート作品もとても役に立つと思いますが、その前段階の、まだまだ落ち込んだままのしんどい状態の方や、逆にちょっと落ちてしまったような方が読むと、心がとても軽くなる本だと思います。
一生懸命生きすぎちゃっている人に対して、一生懸命生きなくてもいいんだよ、という肩の力を抜いてくれるタイトルの秀逸さと、ノウハウや知識の本ではないところが良いですね。
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総評
ノミネート作品はすべて心が楽になるというテーマでありながらも、さまざまなジャンルやテーマに振られていて、選定するのもご苦労されたのではないかと思います。
私自身、これまでも気になった本は読んできましたが、新たな本との出会いもあり、今回関わらせてもらえたことに大変感謝しています。
普段は専門書を読むことが多いのですが、メンタル本もまだまだ手にとって読んでいます。
著者として「読者に響く言葉って何だろう」と考えるときや、「クライアントさんに寄り添えてないな」と感じたとき、ライトなメンタル本を読むことで、「ああ、こんなことに困ってるんだ」と気づかせてくれたり、初心を思い出させてくれたりするので役立っています。
メンタル本は、読みやすさと心理の専門性を両立させた素晴らしいジャンルと思います。
まだまだ玉石混交な部分もありますが、この大賞にノミネートされている本は、読者の心を軽くする良書ばかりと思います。
この取り組みが、しんどい人が良書と出会うための大切な羅針盤となり、多くの人が心を軽くする手助けになるといいなと思っています。
最初、拙書(『「会社行きたくない」と泣いていた僕が無敵になった理由』(小学館クリエイティブ))のノミネートの知らせを受けたとき、NPOや出版社などの活動の一環だと思いました。
よくよく確認してみると、メンタル本に救われた個人からスタートした有志メンバーによる活動であることを知り、より応援したいと思いました。
これからも頑張ってください!
加藤隆行さま(心理カウンセラー)のメルマガ
『ココロと友達:自分自身と仲直りして優雅に生きる』
プロフィール
メンタル本大賞2021 ノミネート作品著者
加藤隆行(かとう・たかゆき)
1971年生まれ。愛知県名古屋市出身。
福井大学大学院工学研究科卒業後、SE としてNTTに入社。インターネット黎明期よりOCNなど関連サービスの企画開発に携わる。激務の中、30 歳のとき体調が激烈に悪化。3 度の休職と入退院を繰り返し、しだいに自身のココロと向き合うようになる。
2015 年に退職し、心理カウンセラーとして独立。「自分自身と仲直りして優雅に生きる」をコンセプトに、全国でカウンセリングやセミナーを開催している。
これまでの著書に、メンタル本大賞2021ノミネート作品『「会社行きたくない」と泣いていた僕が無敵になった理由』、『「また怒ってしまった」と悔いてきた僕が無敵になった理由』(ともに小学館クリエイティブ)があり、最新作となる第3弾『「会社行きたくない」気持ちがゆるゆるほどける本』(同)は、過去2作で解説した理論をより具体的かつ実用的な内容に落とし込んだ“実践編”となる。
公式サイト・SNS
ブログ
「会社行きたくない」気持ちがゆるゆるほどける本 加藤隆行 著 小学館クリエイティブ 2021年4月発売 |
メンタル本大賞実行委員会によるインタビュー
著者の加藤隆行さん、編集者の寺澤薫さん(本作品を担当:小学館クリエイティブ)と酒井徹さん(過去2作品を担当:同)にお話をうかがいました!