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【メンタル本大賞2022】「体験・エピソード部門」選考委員 審査コメント(寺田真理子/日本読書療法学会会長)

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【メンタル本大賞2022】
「体験・エピソード部門」審査コメント


選考委員
寺田真理子(日本読書療法学会会長)

「体験・エピソード部門」ノミネート作品

僕たちはもう帰りたい
さわぐちけいすけ 著
ライツ社
2019年3月発売
発達障害サバイバルガイド
借金玉 著
ダイヤモンド社
2020年7月発売
“寝る前に5分”読むだけで「不安」がスーッと消え去る本
弥永英晃 著
大和出版
2020年10月発売
もうあかんわ日記
岸田奈美 著
ライツ社
2021年5月発売
がんばらないことをがんばるって決めた。
考えるOL 著/おさつ イラスト
KADOKAWA
2021年11月発売

「体験・エピソード部門」評価結果・作品別コメント

1位 30 pt がんばらないことをがんばるって決めた。
考えるOL 著/おさつ イラスト
KADOKAWA
2位 20 pt “寝る前に5分”読むだけで「不安」がスーッと消え去る本
弥永英晃 著
大和出版
3位 10 pt 僕たちはもう帰りたい
さわぐちけいすけ 著
ライツ社

 

30pt:『がんばらないことをがんばるって決めた。』

がんばらないことをがんばるって決めた。
考えるOL 著/おさつ イラスト
KADOKAWA
2021年11月発売

評価ポイント

  • 生きていくうえで大切な考え方を伝えてくれる
  • 日常生活にすぐに取り入れられる
  • 言葉の背後にていねいな思考がある

評価理由

真面目にがんばっていろいろなことを乗り越えてきた方ほど、生きていくうえで大切な考え方を知らずにきてしまいます。
大切なのに教わる機会がないままになりがちなことを、OLとしての著者の生活を通して伝えてくれます。

物事の捉え方や日々のしんどい場面への対応方法など、読者が日常生活にすぐに取り入れて変化を実感していくことができます。

ていねいに一つひとつの物事を考えてきたことが感じられる言葉で綴られているので、伝わりやすいと思います。
ハイライト箇所やツイート風のデザインの箇所を読むだけでも気づきが得られるように工夫されています。

20pt:『“寝る前に5分”読むだけで「不安」がスーッと消え去る本』

“寝る前に5分”読むだけで「不安」がスーッと消え去る本
弥永英晃 著
大和出版
2020年10月発売

評価ポイント

  • 絵本のような温かい物語なので安心感がある
  • モデリングの対象になる
  • 潜在意識の大切さなど心理学について学べる

評価理由

一つひとつが短く、絵本のような雰囲気の物語なので、どこか懐かしさを感じながら読むことができます。
メンタルが弱っているときにバッドエンドの作品だとダメージを受けてしまいますが、いずれもハッピーエンドの温かい作品なので安心感があります。

シンプルな物語は、自分が困難な状況にある時に「あの登場人物だったらどうするだろう」というモデリングの対象になってくれます。
また、潜在意識のことをはじめ、心理学について知ることは回復の大きな力になってくれますが、本書ではそれを実感しながら学ぶことができます。

行間や文字の大きさなども読みやすく工夫されています。

10pt:『僕たちはもう帰りたい』

僕たちはもう帰りたい
さわぐちけいすけ 著
ライツ社
2019年3月発売

評価ポイント

  • 身近なエピソードを題材にしているので、共感を得やすい
  • 登場人物の奮闘に読者が自分を重ね合わせることができる
  • どのエピソードにも希望がある

評価理由

仕事をしている人なら誰もが経験したことがあるような身近なエピソードを題材にしているので、共感を得やすいと思います。

登場人物は躓きながらもそれぞれに突破口を見つけて前に進んでいくため、その姿に読者も自分を重ね合わせて自身の悩みへのヒントが得られます。
どのエピソードにもラストにちゃんと希望があり、温かい読後感が得られます。

マンガであることも、本を読みたいけれど文字があまり読めない状態の読者や、本を読みなれない読者にもアプローチしやすいと思います。

総評

今回、選考委員として多くの「メンタル本」を読ませていただいたことは、とてもありがたい経験でした。

かつての私もよくメンタル本を読んでいたのですが、近年はあまり読まなくなっていました。
もう十分読んだという思いもあり、読む前からすでに内容を知っているかのような気分になっていたのです。

それが選考のために久しぶりに読むようになり、まだまだ学ぶべきことがこんなにあったと自省するとともに、このジャンルの本ならではのよさもあらためて感じることができました。

貴重な機会を与えてくださった実行委員会のみなさま、一つひとつの作品を届けてくださった著者のみなさまと出版社の方々に、この場を借りてお礼を申し上げます。

私もうつを経験し、本によって救われ、回復することができました。
当時を思い出し、かなりメンタルが弱った状態でも読めることを重視して選考をさせていただきました。
そのため、本としてはとても完成度が高くても、残念ながら上位にはできなかった作品もありました。

このサイトを訪れてくださった方々には、ぜひすべての作品の書評もご覧いただき、ご自身に合った本を見つけていただけたらと思います。

選に漏れてしまった『発達障害サバイバルガイド』は、一見マニュアル本で、たしかに解像度の高いマニュアル本でありながらも、その根底にあるのはマニュアルとは真逆の「あなたがあなたである」ことを尊重する精神でした。
その強い思いと読者に徹底して寄り添う著者の姿勢には感銘を受けましたし、個人的な読書記録にも、感化された言葉の数々を書き写させていただきました。

また、同様に選に漏れてしまった『もうあかんわ日記』も、読みごたえがあり、おもしろさの中にも多くの示唆を含む、著者の人間力を感じる作品でした。
波長の合う読者にとっては、きっと一生の友人を得たような感覚をもたらしてくれるのではと思います。

二作品とも、ぜひ書評のほうをご覧いただけたら幸いです。

メンタル本大賞のような取り組みを続けていくことは大変な労力を要するものです。
実行委員会のみなさまのご努力と行き届いたご配慮には本当に頭が下がります。

読者に届く本をていねいにつくって、長く売っていく……そんなふうに、本の寿命を延ばし、本づくりのあり方にも影響を与えていく賞に育っていくことを願っております。

応援の輪が確実に広がっていっていると感じますし、微力ながら、私も応援しております。

選考委員プロフィール

寺田真理子(てらだ・まりこ) 
長崎県出身。幼少時より南米諸国に滞在し、ゲリラによる日本人学校脅迫や自宅の狙撃を経験。東京大学法学部卒業。多数の外資系企業での通訳を経て、現在は講演・執筆・翻訳活動。読書によってうつから回復した経験を体系化して日本読書療法学会を設立し、国際的に活動中。また、うつの体験を通して共感した認知症について、パーソンセンタードケアの普及に力を入れている。著書、訳書多数。日本メンタルヘルス協会公認心理カウンセラー。

心と体がラクになる読書セラピー
寺田真理子 著
ディスカヴァー・トゥエンティワン
2021年4月発売

公式サイト・SNS
日本読書療法学会
ブログ

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