【メンタル本大賞2021】の<特別賞>を『明るい出版業界紙』(WEBメディア)の発行元のライツ社さまに贈りました。これを記念して、ライツ社の魅力を<5日連続>でお届けします!
繰り返し読んでいるドキュメンタリー作品
― 大塚さん自身がこれまでの人生でつらかったことや何かエピソードはございますか?
大塚: いろいろありますが最初に挙げるとすれば、阪神・淡路大震災(1995年)の被災経験ですね。
当時、僕は小学2年生でした。
明石は震度8でめちゃくちゃ揺れたんですよ。
ベッドで寝ていたんですが、直下型地震だったので体が浮きました。
浮いた体が落ちて、気づいたらお父さんが抱きしめてかばってくれたんです。
― あの大震災で被災されたのですね……。
大塚: 母から教えてもらいましたが、ずっと泣き続けていたらしいです。
しばらくして学校は再開したらしいんですが、怖いと言って僕は行けなかったらしいです。
― とてもつらい経験ですね。先ほど「人生に影響を与えた本」として『1歳から100歳の夢』や『イシューからはじめよ』を挙げていただきました。つらい時に支えとなってくれた本があれば教えていただけますか?
大塚: 僕は新しい本をたくさん読むというよりは、気に入った本を何度も何度も読み返すというスタイルなんです。
ちょうどライツ社を創業するときには、『紙つなげ!彼らが本の紙を造っている』(佐々涼子 著、早川書房)と『裸でも生きる』(山口絵里子 著、講談社)を読んでパワーをもらいました。
― 『紙つなげ!彼らが本の紙を造っている』は、2012年の開高健ノンフィクション賞を受賞した作品ですね。
大塚: 当時、出版業界で使用しているほとんどの紙を作っていたのが、宮城県石巻市の日本製紙石巻工場でした。
その工場が東日本大震災(2011年)で津波にのみこまれて、完全に機能停止しました。
「この工場が死んだら、日本の出版は終わる」
そんな絶望的な状況から復興を果たす再生ストーリーなんですが、これを読んで僕も頑張ろうと思いました。
― 私(成瀬)も読ませていただいて、心震わせる作品だったと今でも印象に残っています。
何か明確な目標があって、それを成し遂げようとする人のドキュメンタリーのような作品はよく読みますね。
― 『裸でも生きる』はどのようなお話なんですか?
大塚: 著者の山口さんが当時、アジア最貧国と言われていたバングラデシュに単身で渡り、日本で売れる現地生産の「かわいいバッグ」のブランドを立ち上げる話なんです。
失敗を繰り返しながらも、バングラデシュの貧困を救うために、ボランティアではなく、ビジネスとして取り組んだエピソードに共感して、繰り返し読んでいます。
バングラデシュの大学院に行くと言ったとき、周りは反対した。なんでちゃんと大学まで卒業しているのにそんな生きて帰れるかもわからない場所に行くの。
バングラデシュで起業しようと決意したときも、周りは反対した。起業なんて、そんなに簡単じゃない。できるわけない。
ただ、そんな周りの声の中、私が拠り所にしたことは、たとえば尊敬する人の言葉でも、素晴らしい本でもなんでもなく、自分自身だった。
出典:『裸でも生きる』山口絵里子 著、講談社(p257)
ライツ社のホームページの「代表挨拶」で、創業にあたって周囲から反対意見もあったことを明かしている大塚さん。
インタビューを終えた後、気になって『裸でも生きる』を読んだ私(成瀬)は、大塚さんが髙野さんたちとライツ社を立ち上げたときの気持ちは、穏やかな文章で語ってはいるけれども、こんな(上記引用)熱い想いが込められていたのかもしれない……
と勝手に想像しました。
PART5 につづく
(出版業界の明るいニュースを届けたい!)