メンタル本大賞2022「職場・仕事部門」にノミネートされた『この会社ムリと思いながら辞められないあなたへ』(井上智介 著)の編集者、吉田ななこさん(WAVE出版)にお話を伺いました!
この会社ムリと思いながら辞められないあなたへ 井上智介 著 WAVE出版 2021年9月発売 |
【前編】つらい思いをして欲しくない!
診断書による会社との交渉や「休職→休職中に転職活動→転職先決定→退職」といったフロー、引きとめされた時の対処などの具体的な解説が詳しく、非常に実践的な内容となっているこの作品。
選考委員のけけさんも書評で次のようなコメントを寄せています!
実際にわたしも相談を受けたことがあり「この本がピッタリ!」と感じて紹介してみました。すると求めていた答えだったようで、とても喜んで頂けました。
読んで欲しい読者について
― どのような読者の方に読んで欲しい作品でしょうか?
吉田ななこ(WAVE出版): タイトルどおり「この会社ムリ」と思いながら辞められない人です。
入社したばかりの人は「数ヶ月で辞めるなんてもったいない」「数百社チャレンジしてやっと内定をもらえたのに、この会社の次なんてあるの?」と考えてしまう場合が多いと思います。
お金の不安がある人、養う家族がいる人、「辞めたい」と伝えてもなんだかんだ言われて説得されてしまう人などもそうです。
これらの人はすべて「この会社ムリだけど、辞められない」と我慢をしてしまう人たちではないかと思います。
― 「もうムリ!」と思っているのに辞められない状況は本当につらいですよね。
吉田: 実は私自身にも経験があって……。
新卒で入社した会社を一年で辞めてしまったのですが、辞めるまでに本当につらい経験をたくさんしたんです。
― そうだったのですね……。
この作品を手がけるのはある意味つらかったのではないでしょうか。
吉田: 企画段階で行ったアンケートの回答の中には「こんなに酷い経験をされた方もいらっしゃるのか」と心が痛くなるものもありました。
私だけでなく、つらい思いをしている人が一人でも少なくなることを強く願いながら、作っていました。
― 吉田さんの強い想いが井上先生の文章を通して伝わってくるような気がします。
目指したのは “あの作品” より一歩踏み込んだ本
― ちなみに企画段階で意識していた作品はありましたか。
『「死ぬくらいなら会社辞めれば」ができない理由(ワケ)』(汐街コナ 著、ゆうきゆう 監修/あさ出版)は、すごく共感しました。
とてもいい本でしたし、「死ぬこと」以外の選択肢を狭めてしまう理由がよくわかりました。
「あともう一歩、具体的にどうしたらいいのか」に踏み込んだ本をつくりたいと思って、『この会社ムリ……』を企画しました。
『「死ぬくらいなら会社辞めれば」ができない理由(ワケ)』は、メンタル本大賞2021【大賞】『多分そいつ、今ごろパフェとか食ってるよ。』の編集者、大川美帆さん(サンクチュアリ出版)も「意識していた作品」と語っています。
メンタル本大賞の推薦作品です。
― 個人的には診断書を使った会社との交渉方法などはかなり具体的だと思いました。
吉田: 「精神科に行って診断書をもらいましょう」と言われても、どこの病院がいいのかわからず、調べるのでさえもしんどくなってくることがあると思います。
そんなときにどうすればいいのか、具体的なイメージができれば、行動までのハードルはぐっと下がるのかなと思いました。
― 未経験のことでもイメージできれば不安は軽減されるような気がします。
吉田: 井上先生から「段階別の休職中の過ごし方」や「精神科の選び方」について教えていただいたときに、「これならできそう」と思いました。
想像できないときは、選択肢として考えられませんでしたが、現実的に想像できるようになると、ひとつセーフティネットができたような気がして安心感につながりました。
私たち医者は、自分たちを「一種のセーフティーネット」と考えています。私たちと細かくてもつながっているか否かで、精神的な余裕がまったく違います。
出典:『この会社ムリと思いながら辞められないあなたへ』井上智介 著/WAVE出版(p107)
吉田: 未経験者にとっては、いざ休職を自分のこととして考えると、漠然とした不安を感じて身構えてしまうと思うんです。
休職後にどのような生活をしているのかなんて、なかなか想像できませんから……。