2022 優秀賞受賞、2021 選考委員MVP賞に輝いた平光源さま(精神科医)より書評をお届けします!
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かくれ繊細さんの「やりたいこと」の見つけ方 時田ひさ子 著 あさ出版 2022年5月発売 |

書評
今回は、時田ひさ子先生の『かくれ繊細さんの「やりたいこと」の見つけ方』(あさ出版)
について書評を書かせていただきます。
まずこの「かくれ繊細さん」について、本書では次のように書かれています。
「かくれ繊細さん」とは、この「HSP」の中でも、共感能力が高く繊細で傷つきやすい側面(HSP)を、外向性、社交性、積極性、好奇心旺盛さという別の側面(HSS:High Sensation Seeking)によって表面化しないようカバーしている人たちです。
出典:『かくれ繊細さんの「やりたいこと」の見つけ方』時田ひさ子 著/あさ出版(4ページ)
確かに私が精神科でカウンセリングを行っていても一定の割合でこういう特性をもった方に出会います。
この特性を持った方は、当然医師の気持ちを読んでしまうので、「医師が気持ちよくカウンセリングが終えられるように」演技して(本心を偽って)カウンセリングを終える能力が高いことが多いです。
結果として、本人の問題解決が進まず、それを申し訳なくおもって、どんどん症状が悪化してしまう方を何例も見てきました。
「そういう存在が私だけではないんだ」と少しでも多くの方が知ってくれたら、きっとその方々の喜びと救いになるのではと思いました。
また、筆者が「かくれ繊細さん」なだけあって、とてもアドバイスが実践的です。
私も中学の頃過敏性腸症候群になったことがあるので、我ながらその治療には自信があります。
なぜなら、それがどんなにつらいが痛いほどわかり、自分の経験を通して回復への方向性や近道を実体験しているからです。
詳しくはぜひ本書を読んでいただきたいのですが、筆者がかくれ繊細さん専門心理カウンセラーとしてのべ1万5千時間のクライアントさんとの対話の中で、ともに苦しみともに喜びあったことが伝わってくるようなあったかくて役に立つアドバイスがいっぱい詰まっていました。
さらに、私が一番感動したのは次の言葉です。
アーロン博士や心理学者カール・ユングのメッセージを参考に導き出すと、かくれ繊細さんの天職とは(中略)
深く考えることによって、魂を満たすということだ。
出典:『かくれ繊細さんの「やりたいこと」の見つけ方』時田ひさ子 著/あさ出版(228-229ページ)
かくれ繊細さんは、相手に否定され傷ついた経験があるので、どうしても本心を隠し、自分を否定しているうちに自分の本心がわからなくなり、相手に合わせることが生きることになってしまいます。
そんなことが続くと、「自分」という木の根っこは枯れ果て、魂が死んでしまう。
逆に魂に至る道が見つかれば、本来の素晴らしい人としての輝きを取り戻すことができる。
そんなSNS全盛の生き辛い現代人全てに伝えたい筆者のメッセージのような気がしました。
時田先生、素晴らしい本をありがとうございました。
評者プロフィール
2022 優秀賞・2021 選考委員MVP賞
平光源(たいら・こうげん)
東北地方でクリニックを開業している開業医。
高校時代、自分の不登校によって医学部受験に失敗。
3年浪人してうつになり、ある本がきっかけでうつから回復した経験をふまえて、約20年精神科医として心のケアに当たる。
支援学校学校医、老健施設往診医、いのちの電話相談医、傾聴の会顧問など、その活動は多岐にわたる。
精神保健指定医、精神科専門医、日本医師会認定産業医。

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