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【書評】『うつ病のぼくが始めた行商って仕事の話』(評者:寺田真理子/日本読書療法学会会長)

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2022選考委員MVP賞を受賞。日本読書療法学会を設立して、読書セラピーの研究と実践を続けてきた寺田真理子さまより書評をお届けします!

「メンタル本大賞®2023」エントリー作品

『うつ病のぼくが始めた行商って仕事の話』ちゃんちき堂のてつ 著(文芸社) うつ病のぼくが始めた行商って仕事の話
ちゃんちき堂のてつ 著
文芸社
2022年9月発売

書評

読む前は、少し不安に感じていました。

躁うつ病を患う方が、うつ病と誤診されることがよくあります。

躁うつ病の場合、躁状態の時に多額の買い物をしたり、突飛な思いつきを次々に行動に移したりします。

もしかしたら、著者も躁状態で無謀なことを始めてしまったのでは……?
そして、それを独善的に押しつける内容なのでは……?

そんなふうに心配になったのです。

実際に読んでみると、想像した内容とはまったく違っていました。

著者は決して熱に浮かされたように起業したのではなく、熟慮を重ねていました。

どうすれば自分の価値観を守って生きていけるのか。
どうすれば同じ価値観の方たちにリーチできるのか。
そして、どうすればうつ病を抱えた今の自分が生計を立てていけるのか。

たどり着いた答えは、行商でシフォンケーキを売るという「小商い」でした。

週に数時間しか働けない時から続けてきたこの「小商い」という形であれば、うつ病をはじめとした、今の社会にはそのインフラが整備されていないために社会参加しづらい属性の人にとって、そのハードルを下げる可能性になるのではないかと思ってマス。

出典:『うつ病のぼくが始めた行商って仕事の話』ちゃんちき堂のてつ 著/文芸社(16ページ)

うつ病があっても社会参加を可能にできないだろうか……。
自分が確立してきた方法で、同じように働ける人がいるんじゃないか……。

本書は、そんな高い視座からの提言だったのです。

うつ病を患ってしまう理由には、人が人として大切にされない資本主義社会での働き方が性に合わないこともあるでしょう。

私の周りにもうつ病で退職する人がいましたが、復職はなかなか難しいものでした。
私を含め、うつ病をきっかけに働き方を大きく変えるケースは多いのですが、自分に合った働き方を見つけることも、やはり難しいのです。

そんな中で、小商いという著者の働き方はひとつのモデルを提供してくれるのではないでしょうか。

寺田真理子さま(メンタル本大賞® 選考委員)提供画像『うつ病のぼくが始めた行商って仕事の話』(ちゃんちき堂のてつ 著/文芸社)

著者は、思考力やマーケティングセンスを備えた方です。

本書ではその思考プロセスや、仕事に復帰していくうえでのうつ病の症状との折り合いのつけ方を細やかに説明してくれています。
著者に倣って自分なりの小商いの道筋をつけることもできるでしょう。

文字の大きさなどは、うつ病が重度の時に読むにはハードルが高いかもしれません。
けれども、うつ病経験者ならではの話が冒頭から語られるので、自分事として捉えられるはずです。

回復への糸口や今後の生活への希望を切実に求めている方なら、読み進められるのではないかと思います。

評者プロフィール


メンタル本大賞2022 選考委員MVP賞
寺田真理子(てらだ・まりこ) 

長崎県出身。幼少時より南米諸国に滞在し、ゲリラによる日本人学校脅迫や自宅の狙撃を経験。東京大学法学部卒業。多数の外資系企業での通訳を経て、現在は講演・執筆・翻訳活動。読書によってうつから回復した経験を体系化して日本読書療法学会を設立し、国際的に活動中。また、うつの体験を通して共感した認知症について、パーソンセンタードケアの普及に力を入れている。著書、訳書多数。日本メンタルヘルス協会公認心理カウンセラー。

心と体がラクになる読書セラピー
寺田真理子 著
ディスカヴァー・トゥエンティワン
2021年4月発売

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