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【PART3】著者インタビュー|川本義巳さま(公認心理師&メンタルコーチ)

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『1日3分でうつをやめる。』(扶桑社)の著者であり、メンタル本大賞の選考委員を務めていただいている、川本義巳さん(公認心理師&メンタルコーチ)のインタビューを<4日連続>でお届けします!

1日3分でうつをやめる。
川本義巳 著
扶桑社
2019年10月発売

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【PART3】アドラー心理学との出会い

― 昨今、「自己肯定感」が話題に上がることが多いのですが、川本さんは「自己肯定感」についてどのようにお考えですか?

僕は、なんでもかんでも自己肯定感を高める必要はないと考えています。先ほどお話しした通り、僕自身がネガティブ人間ですし、ネガティブ思考自体は悪いことではありません。問題なのは、ネガティブ思考が持続してしまうこと。何事もネガティブに考えるクセがついてしまうことです。

― なんでもかんでもポジティブに考える必要はないんですね。

先ほど雑談の話で触れましたが、たとえば何か美味しいものを食べたとき、「美味しい」というポジティブな感情があるはずなのに、それを全てナシにして全否定してしまうような考え方はしない方がいいと思います。

― 「こんなにダメ人間なんだから、美味しいと思っちゃいけない。自分にはそんな資格はない」とか……。どん底にいるときは、過剰に自分を否定してしまいがちな気がします。

この状態から抜け出すには、小さなポジティブ体験を積み重ねることが大切だと思います。無理にポジティブになろうとするよりは、少しずつよくしていく感覚を持つことが大切だと思います。

― 先ほどの「うかつにも、プリンを食べて美味しいと思ってしまった」というような些細なことでもいいんですね(笑)

(笑)自己肯定感の話に戻すと、僕は自己肯定感をポジティブに捉えすぎる必要はないと考えています。自己否定さえしなければいいんじゃないかと。

「自分はこれでいいんだよね。うまくいってても、いかなくても」
「うまくいかなかったけど、チャレンジしている自分はえらいよね」
「痛い目にあったり、間違ったりもするけど、あの時の判断は間違っていないよね」
「たとえ間違ったとしても、その間違いに気づけているよね」と。

― 確かにそうですね。

知人のカウンセラーが言うには、「何かやってみてうまくいかないことにぶつかって、工夫して乗り越えて初めて、自己肯定感が生まれる」と。僕はこの主張にとても共感しています。何もやらずに、まず最初に自己肯定感を高めるって、難しいような気がしています。

― 「生きているだけでいい」というフレーズはメンタル本でよく見かけますが、なかなかそう受け止めることができないときもあるかもしれません。

「今できること」をやればいいんだと思います。クライアントさんにはよく「体が動かないなら今やるべきことは何?」とたずねます。休むことしかできない状態だったら、休んでいいんです。それが「今できること」なんですから。

アドラー心理学における「幸福三原則」

― 川本さんの動画の中で、とても印象深いものがありました。「#113【アドラー幸福三原則】幸せに生きるには順番が大事です!」を見て、自己肯定感の新しいヒントを見つけたような気がしました。

― 川本さんとアドラー心理学との出会い、「幸福の三原則」について教えていただけますか。

『嫌われる勇気』(岸見一郎、古賀史健 著/ダイヤモンド社)でブームになったアドラー心理学ですが、僕は十数年前から触れています。

僕のコーチングの師匠である、平本あきおさんは米国アドラー大学院修士号を取得していますし、平本さんはアドラー心理学を初めて日本に紹介した、精神科医の野田俊作先生に師事していました。僕も直接、野田先生からアドラー心理学を学びました。

アドラー心理学の中核は「共同体感覚」=仲間感だと言われています。
平本さんの著書では、野田先生が定義した「共同体感覚」の3つの要素について、次のように説明されています。

アドラー心理学×幸福学でつかむ! 幸せに生きる方法
平本あきお・前野隆司 著
ワニブックス
2021年7月発売

共同体感覚を構成する3つの要素

【自己受容】
自分を受け入れること。自己承認とは似ているようで、まったく違う。
自己承認は、自分の良いところを見つけること。
自己受容は、自分の良いところも、ダメな欠点も含めてOKを出せること。(中略)

【他者信頼】
まわりの人を信頼できること。(中略)

【貢献感】
まわりの人の役に立てているという感覚。(中略)

この3つが高ければ高いほど、共同体感覚が満たされ、人は幸せを感じるというのが、後期アドラーの立場です。

逆に言えば、心の病やさまざまなトラブルは、この3つが低いことによって起きています。ですから、この3つを高めれば、多くの問題が解決できると考えられるのです。

出典:『アドラー心理学×幸福学でつかむ! 幸せに生きる方法』平本あきお・前野隆司 著、ワニブックス(p34-35)

― 動画でも触れていた「幸福三原則」とは、この「共同体感覚を構成する3つの要素」のことをおっしゃっているんですね。

僕はこの3つの順番がすごく重要だと思っているんです。

まず「自己受容」しましょう。ありのままの自分を受けいることができれば、他人のことも受け入れられるようになるので、「他者信頼」できるようになる。そうなって初めて「貢献」できるようになるんですよ、と。こうおっしゃっているのを聞いたことがあります。

― 川本さんは別のアプローチをされているんですね。

僕が野田先生から教わった順番は、これとは全く逆なんです。まず周りの誰にでもいいから「貢献」しなさい。貢献すると、周りの人から「信頼」してもらえる。信頼されると、自分のことが好きになる。この時に初めて「自己受容」ができる、という考え方なんです。

― この動画を見たときに、目から鱗が落ちた気がしました!

僕も野田先生から教わる前は「自己受容」が先で教わったんですが、自分がそうできるかというとなかなか難しい。できる時とできない時があって、できないとなったら打つ手がなくなってしまうんです。だから、野田先生から教わった順番は「なるほど!」と思いました。

誰かの役に立てば、信頼してもらえる、ありがとうと言ってもらえる。そういう自分はいいなと思える……。この流れが自然だなと。だから「自分が困った時は人の役に立とう」という考えになりました。

― 確かに「自己受容」でつまづくと先に進めない感じは何となく想像できます。

貢献するということは、自己犠牲と思われがちなんですが、この社会で僕たちが一人では生きていけないことを考えると、「誰かのために役に立とう」というスタンスはごく自然なことなんです。

― 平本さんの『アドラー心理学×幸福学でつかむ! 幸せに生きる方法』を読んで、アドラー心理学を俯瞰できるようになった気がしますし、川本さんのメッセージ、真意が理解できたような気がします。とてもいい本ですね!

PART4 につづく
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