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【PART7】著者インタビュー(平光源さま/精神科医)

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「#あな生き」の著者であり、メンタル本大賞の選考委員を務めていただいている、平光源さん(精神科医)のインタビューを8日連続でお届けします!

あなたが死にたいのは、死ぬほど頑張って生きているから
平光源 著
サンマーク出版
2021年4月発売

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【PART7】平光源さんインタビュー

医療現場における「構造」的な問題②

― 医療現場における「構造」の問題とは何ですか?

ここでまた、たとえ話をさせていただいてもいいですか。

病院を家族に例えて、医者がお父さん、看護師がお母さん、入院患者さんが子どもだとします。

子どもは体が弱くて手がかかります。
風邪をひいたり、熱を出したり……。

お母さんは、呼吸が苦しそうな子どもの背中をさすってあげたり、消化がよくて栄養のある食事をせっせと作ったりして、朝から晩まで一生懸命子どもの世話をしています。

そこにほとんど家に帰ってこないお父さんが帰ってきます。

お母さん=看護師は、子ども=入院患者の対応で忙しいのに、お父さん=医者は外来の診察に行ったきり、病棟にろくに戻ってこない。

朝ぶらっと顔を出して回診すると、看護師に「これ、やっとけ!」「あれ、やっとけ!」と言うだけで、またすぐにいなくなってしまう。

再び夕方に戻ってきた医者に、看護師が「いろいろ大変だったのよ!熱出しちゃって」と訴えても、医者はお構いなし。
「ロキソニンでも飲ませとけ!」と言い放ち、またぷらっといなくなってしまう。

話を聞いてもらえない看護師さんは、どんどん不満がたまって、患者さんに医者のことを愚痴ったりして、患者さんを不安にさせたりします(笑)。

― この話とカウンセリングはどういう関係があるのですか?

精神疾患の話に移しますね。

あるとき、この家族のもとに若くてきれいな女性が現れます。
この女性を病棟に来たカウンセリングを行う臨床心理士だとします。

お父さん=精神科医は、お母さん=看護師とはほとんど会話をしないくせに、若い女性=臨床心理士とは妙に仲良く話をしています。
しかも、聞いたこともないような専門用語ばかり使って……。

「普段は私の話なんかちっとも聞いてくれないくせに!」

しかも、若い女性からのアドバイスを真剣に聞いてる。
愛着障害、マインドフルネス、ストレスコントロール……???

「何なの、あの女!専門家気取りで調子に乗って!夫と楽しそうに私の分からない話ばっかりして!」

こうなりますよね、お母さんの立場だったら(笑)

結果的に、臨床心理士さんも、看護師さんもお互いに性格も悪くないし、一生懸命真面目に仕事をしているのに、どうしても不仲になってしまう構造、そして医療従事者の「カウンセリングなんて意味なし」という誤解が生まれてしまう構造がここにあります。

― 面白いたとえ話ですね!

この話は昔、僕の恩師が教えてくれた「看護師と臨床心理士は絶対仲良くなれない」というたとえ話で少々飛躍し過ぎているのですが……。

ただ、カウンセリングが医療現場に馴染みにくい部分は確かにあるんです。

― 医療現場ではカウンセリングは異質ってことですか?

もちろん、すべての病院やクリニックがこう、というわけでは決してありません。

もう少しストレートに別の話をすれば、カウンセラーからすると「薬ばっかり出してバカじゃないの!」と医者のことを思っているかも知れませんし、

逆に、薬のおかげで患者が楽になっているのを日頃から目にしている医者からすると、カウンセラーのことを「ちょっと勉強したぐらいで何を偉そうに言ってるんだ!」と不快に思うかも知れません。

これって、個々の医者やカウンセラーの問題ではなく、医療現場における「構造」の問題だと思うのです。
大学で学ぶカリキュラムの中にそもそも、心理学やカウンセリングが入っていないんですから。

― でも、それが「構造」の問題だとして、苦しんでいる患者の側からするとまったく関係のない話ですよね。

そういう意味では、患者さんには本を読んだりして、病気や治療の知識を補っていただきたいなと思いますし、医者の立場ではどうにもならない「構造」の部分をわかりやすく、患者さんに伝えていければと考えています。

― その「構造」的な問題のしわ寄せが、苦しんでいる患者にいってしまうとしたら、とても残念で由々しきことですね。

(参考)
メンタル本大賞ノミネート作品『もしかして、適応障害?』(森下克也 著/CCCメディアハウス)の中でも、適応障害の治療における「構造」的な問題が指摘されています。

適応障害を発症する要因として、外部環境のストレスとともに、それをどう感じるか、どう対処するかという患者さん自身の内面の問題があります。

カウンセリングは、この葛藤対処能力を高めてくれ、再発予防という点から重要なのですが、そもそもカウンセリングすら行っていない医療機関が多いのです。

カウンセリングは保険診療の対象ではない、専門家の数が少ないなど、現代医療の構造的な問題もありますが、そのしわ寄せは確実に患者さんにいくのです。

出典:『もしかして、適応障害?』(森下克也 著/CCCメディアハウス)

※下記はメンタル本大賞実行委員会の解釈による図解です。

PART8 につづく
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