「#あな生き」の著者であり、メンタル本大賞の選考委員を務めていただいている、平光源さん(精神科医)のインタビューを8日連続でお届けします!
あなたが死にたいのは、死ぬほど頑張って生きているから 平光源 著 サンマーク出版 2021年4月発売 |
【PART6】平光源さんインタビュー
ライフワーク
― 光源さんは精神科医のお仕事のほかに、メンタルヘルスを支える活動をされていますね。
いのちの電話の相談員育成に携わったり、民間の団体に講師として招かれて、「相手の話をどうやって聞いてあげればよいか」といったテーマで講演したりしています。
傾聴すべきなのに、相手に意見しちゃったり…… ということが皆さん、どうしてもおありのようなんです。
他には、産業医の方が集まる場でもアドバイスをしたりしています。
― 精力的に活動していらっしゃるのですね!
具合が悪くなって病院に来られた患者さんを助けることって、井戸に落ちてしまった人を引き上げるようなものなんですよ。
一度落ちてしまったら、引き上げるのはすごく大変。
だから、落ちる前に蓋をするみたいなことをした方が、絶対にみんなが幸せになれるし、僕らもその方が楽なので。
自分の苦手な分野も含めて、お話をいただいたらなるべく積極的に引き受けたいと思って活動しています。
医療現場における「構造」的な問題①
― 少し話はそれますが、光源さんはメンタル本についてどう思われますか?
「落ちる前に蓋をする」的な意味合いで言えば、心療内科やクリニックにかかる前、あるいはかかった後であっても、メンタル本を読んでおけば、より楽になったり、治療がスムーズになったりすると思うのですが……
医者の立場にある人がもっと、メンタル本を読むことを患者さんに提案してもいいと思うんですけどね。
恐れているんですかね。
自分は”処方マシーン”のように薬を出しているだけだから、自分が行っていることよりも良い内容がメンタル本に書かれていたら…… と。
― 大学の医学部には、あまり心理学やカウンセリングに関する講義がないとお聞きしたことがあります。
病気の診断や分類、一般的な薬物療法、傾聴を中心とした精神療法については学ぶのですが、カウンセリングについては全くといっていいほど学んでいないと思います。
学ばないまま実践となってしまうと、不安を感じている患者には〇〇系の抗不安薬で、やる気が出なくて不安も強かったら〇〇を処方するみたいな…… “処方マシーン”になりかねませんね。
恐れているというよりも、単純に知らないんだと思います。
カウンセリングのことも、メンタル本のことも。
― すべてのお医者さんがそうだと誤解してはいけませんが、”処方マシーン”のようなお医者さんに出会ってしまうと、助けを求めている患者さんは不幸ですね。
残念ながら、医療現場にカウンセリングはなじみにくいのが実状なんです。
言ってみれば、これは「構造」の問題でとても根が深いのです。
PART7 につづく
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